第5話 この時代に出会った恋の相手
そして、ようやく山を下り、大きな町にたどり着いた。
どうやらここは、内陸部の盆地になっているようだ。
北条早雲率いる侍衆とともに、西陣経康は歩き、そしてようやくこの町にたどり着いた。
「やっほー!町だ!大きな町だぞ!
さーてと、そうなれば、まずは今晩の宿を探すことに…。」
宿を探し回るうちに、ある話を聞いた。
「応仁の乱以降、幕府も将軍も、守護大名も、みんな権威が失墜した。
そもそも、政治家とか、権力者とかは、信用してないのさ。」
「今の世は力こそ全て。身分が下でも力のある者が、上の者を倒してのしあがっていく、下剋上の時代。暴力が支配するんだよ。」
そんななか、やっと宿を見つけた西陣経康。
「ようやく宿を見つけました!今夜はここに泊まりましょう!」
そうして見つけた宿には、実は西陣経康のタイプの、実にかわいい宿屋の娘がいたからだ。
「いらっしゃいませ。」
西陣経康は北条早雲たちを連れて、宿屋に入る。
「もしかして、あの娘が、お目当てなのか?」
「いえいえ…。私はこの宿が、お屋方様が宿泊するのには、最も適していると思いまして…。」
北条早雲は西陣経康に聞いてみるが、西陣経康はわざとはぐらかす。
天下の北条早雲をはぐらかすとは…。神をも恐れぬ所業。
そして、宿屋にて、情報を聞き出す。実にさまざまな情報が聞き出せた。
「このあたりの地は、美濃の稲葉山という土地なんだ。」
美濃の稲葉山…?どこかで聞いたことがある。
たしか、斉藤道三という、美濃の大名にまで登り詰めた人物が、治めていた地域が、稲葉山というのでは…。
「言っとくけどこのあたりじゃ、あんたらの活躍する術はないよ。
まあ、この先の、駿河というところに行けば、あそこは、今川氏が治める地だからね。」
「今川氏…!今川氏も、たしかどこかで、聞いたことがあるぞ…!」
その駿河の今川氏というのは、あの今川義元の、今川氏か…。
しかしこの時代はまだ、応仁の乱から戦国時代の初期に入る時代。
義元の時代はそのずっと後の時代だ。
まあ、食事も済ませて、そろそろ眠くなってきたし、今夜はひとまず、寝るとするか。
ふあーあ。
こうして深夜。一同は、眠りに入る。
あくる日の朝、またまた出立。しかし駿河の今川と聞いたとたんに、急ぎ足になるとは、もしかして、今川と北条は、何かよほど深いつながりがあるのか?
そして出立する。次の目的地は、尾張だという。
なお、西陣経康がこの時に知り合った、美濃の宿屋の娘、お小夜は、後に西陣経康の妻として、迎え入れられることになるのだが、それはもう少し先の話だった…。