第3話 野盗と村人と未来のシェルター(1)
伊勢宗瑞率いる、侍の一団は、
刀、槍、弓、そして矢も、
さらには、食料や、ありったけの金銀財宝などを持って、
新天地である関東を、目指していた。
その旅の一団の中に、現代からこの時代に転生してきた、
いやこの時代からみたら遠い未来の時代から、転生してきた、
西陣経康も、また同行していた。
どうせ、他に行くあてもないし、ここはついていくしかないなと、思ってはいたが。
京の都から一歩外に出ると、そこには手つかずの自然の森や、原野が広がる。
街道さえ、まだまともに整備されてはいなかったような、道なき道を行く。
「いかがでしょう。伊勢様。これから先は、北条早雲と名乗っては?」
「北条早雲?」
西陣経康は突然、そのようなことを言った。しかし、いきなりそんなことを言ったところで、受け入れてもらえるはずもない、と思ってはいたのだが…。
「そうか。北条早雲か。よかろう。これよりそれがしは、北条早雲と名乗ることにする!皆の者、よいな!」
なんと、あっさり受け入れてくれたのだった。
こうして、正式に北条早雲と名乗ることが、決まったのだった。
しかし、それからしばらく山道を歩くと、何者かの気配がする。
「はっはっは!はははははは!」
高笑いが聞こえる。いったい何者なんだ、こいつらは…?
「何者なんだ…?」
西陣は訪ねる。早雲は答える。
「ああ、あれは野盗の群れだ。
もともとはどこかの家中に仕官していた者たちだったのだが、何かしらの理由で家を追われ、行くあてをなくした者たちが、盗人稼業などに身をやつした、なれの果てだ…。」
すると、たちまちその野盗の群れに、取り囲まれてしまう。
「へっへへへ…。見たところ、どこかの家中の者たちと見た。
お宝、金目の物は、置いていきな!
さもないと、お前たちの命はないぜ。」
野盗の群れは、かなりの人数のようだ。
「応仁の乱で権力者の権威が失墜し、今や弱肉強食の戦国乱世。
まったく、良い時代になったものだぜ。
俺たちのような、今までは社会のクズだったようや人間にとってはな。」
「そうそう、誰でもチャンスをつかみとれる。
…ようやく俺たちにも、チャンスが巡ってきたぜ。やっちまえ!」
こうして野盗との戦闘が始まる。
しかし、北条早雲は、やはり強かった。
ズバッ!ザシュッ!バシュッ!
カキン!キン!ズバッ!ズガッ!ブシャッ!
北条早雲は容赦なく野盗たちを斬っていく。
対する野盗たちも、死ぬことを恐れないのか、果敢に応戦。
そんな中、西陣経康は、よりにもよって、野盗のカシラの前に…。
当然、野盗のカシラの目にとまる。
「へっへへへ…。どうやらヤマが当たったな…。
まあ、そんな怖い顔すんなよ。俺だって鬼じゃねえんだ…。」
西陣経康は刀を構える。
「その首もらったー!」
野盗のカシラは斬りかかってくる!
「西陣!」
北条早雲も思わず叫ぶ。
次の瞬間!
ズバアッ!
ブシャアッ!
西陣経康の刀が、野盗のカシラの体を斬り裂き、そして斬り裂かれたカシラの体からは、大量の鮮血が吹き出す…!
「そ…、そんなばかな…。こんなやつに…!」
ドシャッ…!
野盗のカシラはそのまま倒れ、絶命する。
残った野盗の者どもは、カシラを失い、もはや戦意も失い、ただ逃げ惑うのみ。
結局、残りの者たちは、そのまま逃げていった。
「おお、お主、思ったよりも強いな。」
「いえ、それほどでも…。」
北条早雲が西陣経康をねぎらう。
そして、さらに歩いていくと、村があった。
「おお!村だ!今日はこの村で、休んでいこう!」
山奥の森の中にある村だ。この村から、山を下っていくと、大きな町にたどり着くという。
そして、村人たちは、こころよく、一行を出迎えてくれた。
「さあさあ、何もない村だけど、ゆっくり休んでいって下さいな。」