異世界召喚が多すぎて女神様がぶちギレました

作者：湯立向日/ガタガタ震えて立ち向かう

　ある日、日本の神様のまとめ役である天照大神は思いました。

　――日本人異世界に拉致られ過ぎじゃね？

　まあそれも仕方がないのかもしれません。

　何せ日本人の大半は真面目で従順でお人好しです。奴隷根性高過ぎなのに他国の支配を神回避してきたある意味奇跡の国です。

　もう頼み事をするなら日本人に言えばもーまんたいなのです。そりゃ異世界人が呼び出したくなるのも仕方ありません。

「でも最近は酷すぎるわ」

　以前は一人やせいぜい数人の異世界召喚でしたが、最近は学校の一クラス丸ごとやランダムに数百人召喚とごっそりやられる事が増えました。

　このまま召喚を重ねられると日本人が地味に減ってしまいます。

　黄泉の管理者である伊耶那美様も「うちにくる死者が減るやないかゴルァ！？」と仮にも主神である天照様に怒鳴りこんできました。

　何この母親恐いとちょっと泣いたのは内緒です。

「向こうも困ってるし召喚を止めるのは可哀想だし……」

　関係無い日本人を巻き込んでる時点でまったく可哀想ではないのですが、天照様は日本の主神だけありお人好しでした。

　きっと弟のツクヨミ様が聞いたら鼻で笑うでしょう。彼は斜に構えた俺カッコいいな中二病なのです。

「何か良い手は……！」

　悩む天照様。その時彼女の脳裏に別居中の両親のとあるエピソードが過りました。

　――毎日千人呪い殺されるなら、毎日千五百人生まれるようにすれば良いじゃない。

　うわー超ゴーマーン！

　多神教の神様は世界基準で大体駄神か外道です。

「そうだわ！　一人日本人が召喚されたら一人異世界人を召喚し返せば良いのよ！」

　うわー、超ゴーマ（略

　悩みすぎて愉快な結論に至った天照様。

　その姿はさながら仕事に疲れた中間管理職のようでした。

・

「日本人が異世界に召喚されたら異世界人を日本に召喚するね☆」

　――なんでやねん。

　突如日本上空に現れた八咫烏から伝えられた天照様のお言葉に、日本国民総つっこみでした。

　しかしそんな事を言われても、メッセンジャーでしかない八咫烏はクールに去ります。

　資格が無い者が見ると気が触れるような気がしたけど、別にそんなことはありませんでした。

　――どうすんだオイ。

　いきなりの難題に国会は紛糾しました。

　何せ異世界から人がくるのです。地球代表として失礼が無いようもてなさねばなりません。

　拉致られたから拉致ってきた相手をもてなそうとする辺り、日本人は頭に至るまでお人好しでした。

　これがアメリカだったら異世界人が来た瞬間に訴えられて裁判が始まっています。

「こ、ここは？　貴殿方は一体！？」

　そんな国会議事堂にいきなり女性が現れました。

　白いドレスを着た上に水色髪という地球ではあり得ない色な、どう見ても異世界人でした。

　どうやら天照様は文字通り日本の中心に異世界人を召喚したようです。

　しかも説明無しで丸投げしたらしく少女と言って良い歳の女性は大混乱です。

「ぎ、議長！？」

　そしてこっちも大混乱な議員たち。とりあえず一番冷静そうな長老格の議長に指示を仰ぎます。

「……外務大臣安達くん」

『えー！？』

　丸投げでした。

「あー、よろしいかなお嬢さん」

「は、はい……」

「ああ、驚かせてしまい申し訳ない。おい、誰かこの方に椅子を！」

　しかし丸投げされた外務大臣な安達くん、紳士的な笑みを浮かべて見事な対応です。

　普段はヤクザ顔負けなべらんめえ口調なのに、今は優しげなおじ様にしか見えません。

　流石はつけ入る隙ありまくりな日本の外交を取り仕切ってる腹黒です。

「……というわけでして」

「……」

「お嬢さん？」

　安達くんから事情説明を聞いた少女は何故か青ざめました。

「いや、我が国の問題に巻き込んでしまい申し訳……」

「申し訳ありませんでした！！」

『えー！？』

　安達くんが謝罪をしようとしたら、逆に少女に凄い勢いで頭を下げられました。

　それもそのはず。なんと少女の母国こそが異世界召喚をやらかした張本人だったのです。

「私たちの国には古くから異世界から王太子の花嫁を召喚する習慣があります。もう二百年以上も前に廃れたものだったのですが、最近神官長におさまった者が手柄欲しさに強引に推進して……」

　どうやら今回の召喚はバトルものではなく宮廷ものだったようです。

　危険度は少し下がりましたが、大奥のような女のバトルが繰り広げられる可能性もあります。

　召喚された女性の手腕に期待したいところです。

「私やお父様がちゃんと止めていれば……」

「父君が？　お嬢さん。貴女はもしや……」

「あ、申し遅れました。私はガルティア国第一王女シーナと申します」

　――な、なんだってー！？

　何て人を召喚しちゃってんだオイ。

　議員たちは阿呆面を並べながら天照様につっこみました。

※千五百人生まれるようにというのは、イザナミの呪いを受けない新しい人間を生み出すという意味で作中のような意味ではありません。

　この後シーナ王女がつり橋効果で安達くんに惚れたり、次々異世界人が召喚返しされたりしますが、書くかどうかは分かりません。