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つかれる

 霊媒体質、特に、霊を惹きつけ憑かれ易い人というのは、少なからず存在する。何をもって霊を惹きつけるのか、霊は何をもって憑く人を決めるのか。もっとも、霊の種類によってその理由は異なるのであろうが。


 私の身の回りにも、そういう体質の人が居る。私が大学一年生のときに知り合った、一つ上の先輩である。

 一人は石川(いしかわ)といい、全体的に中性的で優しそうな雰囲気を持った先輩である。

 もう一人は山田(やまだ)といい、石川先輩とは対照的に、どこかどっしりとした、頼りになりそうな先輩である。

 この二人の先輩は仲が良かった。常にというほどではないにしろ、比較的よく行動をともにしていた。


 例えば石川先輩の場合。

 石川先輩自身は霊的な能力はほとんど無いらしく、今まで何かしらを見たり聞いたりしたという実体験はほぼ無いようではあった。しかし、自身が憑かれ易い、という体質は比較的理解していた。

 病院や、雰囲気の悪い場所に行った後は、家に入る前に必ず塩を自身に振りかけて、心の中で念じてから家に入るようにしているのだという。過去に何度かそれを怠ったがために、金縛り等にあったことがあるらしい。

 また、石川先輩の母親は、多少霊的能力があるらしく、力の弱い霊なら祓ったりする力もあるとのことだった。

 以前、私と出会う前の話だが、大学の長期休みを利用して実家に帰ったとき、石川先輩の顔を見た母親は、開口一番に「あんた、三匹くらい憑いてるわよ」と言ったそうだ。その霊は皆動物霊(うち一匹は猫の霊)だったらしく、母親が祓ってくれたのだそうだ。

「どうも、俺に憑けば助けてくれるんじゃないかと思って憑くらしいんだよね。俺にはそんな力ないのに。勘弁して欲しいよ」

 そう言う石川先輩に対して、「猫に憑かれるとか羨ましい、贅沢言っちゃあ罰当たりますよ。あ、罰当たりだから憑かれてるのか」と皮肉を言ったら、口論になった。

 石川先輩も私と同様、猫が大好きで、よく自分たちの実家の猫自慢をしては衝突していた。


 例えば山田先輩の場合。

 山田先輩は、憑かれ易いという自覚すら無かった。霊感があるという訳ではないため、とにかく自身では霊に憑かれていることに気づかず、他人に指摘されて初めて知るということが多かったという。

 山田先輩は基本的に大学の登下校や外出は自分の車を使うのだが、ある日、彼が山の上の大学から車で帰宅している途中、彼と同学年の女子学生とすれ違ったらしい。

 翌日、大学構内でその女子学生が山田先輩に問いかけた。

「ねえ山田、あんた、昨日帰りに助手席に乗せてた女の人、誰?」

「え? いや……、誰も乗せてないけど」

 その日は、山田先輩は一人で帰宅していた。そのとき山田先輩には、交際している女性は居なかったし、頻繁に助手席に乗せるような特定の人もいなかった。

「ふ~ん、そう。女の人乗ってたよ。そんな悪い人じゃないっぽいけど、一応気をつけた方がいいかも」

 その後、ほとんど間を置かずして、同じ質問を複数人から何回もぶつけられたらしい。ここまで重なると、さすがに信じずにはいられなかったと山田先輩は言っていた。もっとも、だからといって特別何か対処をした訳でもないらしいが。

 それからしばらくした後、再び、最初に山田先輩に指摘した女子学生が山田先輩にこう言ったらしい。

「あ、山田、この間の女の人だけど、助手席から後部座席に移ってたよ」

 その話を山田先輩から聞いたとき、思わず私は「お客様じゃないですか!」とツッコミを入れ、山田先輩と二人で笑ったのを覚えている。


     ◇ ◇ ◇


 ちなみに、幸いにも私は、特に憑かれやすいという訳ではないらしい。いや、それが幸いなのかどうかは、憑かれたことの無い私には計ることができない。

 大学三年生の夏休み直前に研究室配属され、そこで知り合った、霊感の強い二歳年上の大学院生の佐々木(ささき)聖海(きよみ)先輩は、守護霊が私のことを守ってくれているのだと言った。もし、それが本当ならば、感謝しなければならない。

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