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 翌日。仕事に行った私に女の先生たちがよそよそしい…感じがすごくする!

 あ~…これはハルちゃんがまた何か言ってるな、と思う。

 また、っていうか…泊まった~~とか言いふらしたりはしない。よね?ましてチュウした事を他人に言いふらすなんてまさか…


 階段でエリカ先生とすれ違う。

 いや、実際にはすれ違えなかった。すれ違うな、と思って会釈しようと思ったら階上から私と目が合った見た瞬間に、「もうっ!」とエリカ先生が私を強くなじりはじめたのだ。

 「結局ハルカ先生とすぐ付き合う事になったじゃない。もうがっかり!ほんとがっかり!マジがっかり!!あんなカッコいい人もう入ってこないわここ。はやばや告って失敗した子がいたからやっぱ中野先生いるからねって思ってたけど、それでもよ?ほぼ何かのきっかけもつかむ前に、こんな短期間でくっつくってどういう事?本当に中野さんたち15年ぶりに会ったの?おかしんじゃない?そんなブランクあって…やっぱ中野さん最初からハルカ先生の事好きだったんでしょう?結局私たち外で彼氏見つけるっつってもね、見つかんないのよなかなか。合コン行ったってね、合コンに来るような男にろくなのはいないのよ、今んとこ私が当たった中じゃあね!」

「…」

「ったく!」

「あの、でも本当にまだ付き合ったりは…」

「付き合ってるじゃん!家に泊めたりキスしたりしてるって付き合ってるって事じゃないの?」

「え…」

「中野さん、付き合ってもいない人とそんな事すんの?きゃ~~こわ~~い」

あ~~~~…泊まったりチュウした事まで喋るのかあいつ。

「ちっ、もう!!」とエリカ先生の声が怖い。しかも舌打ちされた。「そんなに赤くなってもう~~~~~!」



 他のハルちゃんを気に入っていそうな女の先生たちは誰も、エリカ先生ほどはっきり言う人はいなかったけれど、目がちょっと怖かった。そして女子中学生、女子高校生も。

 ある子たちには「あるんだ~~そういう話~~信じらんなぁ~~い。幼馴染ってだけでそんなに特別って感じマジ信じらんなぁ~~い。乙ゲーみたぁ~~い。中野先生ってさ、モテ系ってわけでもないし、男の人に受けそうな感じでもないのにぃ~~羨ましいな~~、ちょっとハルカ先生趣味変わってる~~。てか、やっぱ本当の本当は嘘なんじゃない?」というような事をねちねち、しかもすごく冷たい口調で言われた。

 中には喜んでくれる子も…「先生みたいにものすごい美人じゃなくてもね~おめでとう、先生」

 いや…ものすごい美人じゃないけど、ある程度は可愛いっつの!!



 なんだこれ…ハルちゃんが塾の放送でも使ってみんなに喋ったのか?泊まった事もチュウした事も塾の人、先生生徒全員が知ってんのか。

 私がなじろうと勢い込んでいたマキちゃんにももちろん突っ込まれる。

 「早かったね~~」マキちゃんが笑う。「まぁ押し切られて確実に付き合うようになるんだろうなって思ってたけど、それにしても早かったね」

 うるさい!私が泉田先生との事を突っ込むつもりだったのに。

「マキちゃん!何でみんな知ってるの?ハルちゃんがうちに泊まった事。ハルちゃんがみんなに言いふらしてんの?」

 絶対許さない。夕べは何食わぬ顔でうちに来てご飯まで食べてったくせに。

 牧ちゃんがまた笑って教えてくれる。「塾長が一番口の軽い先生に話して、そっからあっという間に昨日一日で塾全体に」

「マジで…」

「マジマジ」

ひど…

「それで、その話を確認する女の先生たちにハルカ先生は『そうですよ~』って」

 塾長…私にはハルちゃんが塾長の孫だって言う事黙っとけって言ったくせに。



 「マキちゃん、そんな事より!私聞いたんだからね。泉田先生とマキちゃんが幼馴染で、泉田先生はずっとマキちゃんの事が好きだったって。私に黙っとくなんてひどい」

「ずっとじゃないよ。あいつは結構私の知ってる他の女の子にも、いろいろあたってくだけてたけど、私と一緒にいるのが運命なんじゃないかって勝手に思い込んでるだけ。バッカみたい」

「…なんでそんな言い方するの?泉田先生にそんな羨ましい事言われて…バカみたいってひどい!」

「いやもう話すとほんと長くなるし面倒くさいから」

 それもひどい。私これでも友達なんじゃないの?しかも私が泉田先生好きなの知ってたくせに。ちょっとくらい面倒くさくてもそこはちゃんと話してくれないと。

「どういうわけか、リッチィにとってはイズミィはカッコ良く見えてるのかもしれないけど、ていうか私はそれも全然よくわかんないけど、私は結構ヘタレたとこばっか見せられてるし、だいたい最初会った頃あいつ顔も女の子みたいで、私たち島に住んでたんだけど、島のやんちゃな男の子にちょっかい出されてビービー泣いてる事多かったし」

「え…」

「いっつも私に泣きついてきて超面倒くさかった。今はまぁまぁガタいもいいし、見た目も男っぽいけど、小動物大好きだし、お酒もほとんど飲めないし、甘いもん大好きだし」

「え…」

「飲み会の時だって茶色い液体飲んでたでしょ?あれウイスキーって注文して中身はウーロン茶入れてもらってるからね」

そうなんだ…いいな…そんなマキちゃんしか知らない事があるなんて、しかもそれを私に言いやがって。


「それで…マキちゃんは全然泉田先生の事好きじゃないの?」

あれ?マキちゃんがちょっとうろたえている。

「好きじゃないわけじゃないよ」マキちゃんが言った。「だってちっちゃい時から知ってるし。ヘタレてるけどいいやつだし」

 そうか、と思う。

『好きじゃないわけじゃない』、んだ。

「好きじゃないわけじゃないけど」とマキちゃんがもう一度言った。「イズミィと例えばチュウするとことか考えただけで笑えてくるんだけど」



 そして会いたいと毎日思っていてもなかなかすれ違えもしなかった泉田先生が、わざわざ小学生担当の控室の私の所まで来てくれて言った。

「りっちゃんな、わしな、わし…気にしとらんよ。わしの事好きじゃあ、言うてくれとんのも嬉しかったし、その後すぐ楠木がやっぱり付き合う事になりそうですぅ言うて、わしんとこ嬉しそうに来たけどもなぁ。わしはわしであれは嬉しかったし。でもりっちゃん…わしなんかに振られたぐれぇで、やけになって楠木と付き合ういうわけじゃあ、ないんじゃろう?ほんまに楠木の事好きなんよな?奥田にはな、わしの方からよく話といたけん。それでもなりっちゃん、わしはりっちゃんが無理せんで、幸せになってくれたらなと思いよる」

 …かっこいいな…泉田先生カッコいい…やっぱり好きだなって思うけど、もうダメだ、ハルちゃんと私が付き合ってると思ってる。ここでやっぱりまだ付き合ってるわけじゃないなんて言って、泉田先生に『なんて女なんだ』と思われてすごく嫌われたら嫌だ。エリカ先生には言っちゃったけど。

 それにマキちゃんだって泉田先生の事を嫌いなわけじゃないって言ってたから…

 奥田先生ともすれ違って挨拶はしたが、奥田先生は一瞬私に何か言いたそうにして、それでも何も言わずに会釈だけしてくれてそのまますぐ通り過ぎてくれた。

 奥田先生は奥田先生で良い人なのだ。元カレに似ているからどうしても付き合ってみるとか考えられなかったし、泉田先生に嫌われたくないばかりにずっとはっきり断らずに悪い事をした。こんな私を好きだと言ってくれていたのに。



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