表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/131

可愛らしい人 1


「こんにちは」残されたキヨミさんが、残された私にもう一度言ってくれた。

写真以上に可愛らしい笑顔にどぎまぎしてしまう。

「こんにちは」と私ももう一度言うが、やっぱり私の声はぎこちない。

 この人か…この人がハルちゃんと実際に付き合ってた人…

 そんな私を見つめ、キヨミさんはフフっと笑った。

「最初からよく見たら、私もリョウちゃんより早くりっちゃんだってわかったのに」

「…」

 どういう事?


 「庭でこんな事してたから、私、ミノリ君の新しい彼女かと思った」

そう言ってまたフフッと笑う。

 そうじゃなくて、どうして私をりっちゃんだって知ってんの?

「いつかは会えると思ってたんだけど、こんなに早く会えると思わなかった」とキヨミさんが言う。

 そんな事言われても私は何て答えたらいいか全然わかんないけど…

 ああっっ!ダメだ!私、歯にホームセンターで食べたたこ焼きの青ノリ付いてるかも!

 最悪…



 「水、どうするの?入るの?」とキヨミさんがまじめに聞く。

「…ビイ…あの、ミノリ君が世話してる牛ガエルを遊ばせるために貯めてて」

「そうなの!おもしろそう!」

「ビイ、見た事あるんですか?」何聞いてんだろう私。

「あるよ。リョウちゃんが写真見せてくれた」



 …話続かない…

 早く。早く出て来てよミノリ君!

「夕べ…」とキヨミさんが言うのでドキリ!とする。

な、何?チラッとキヨミさんを見ると、ニッコリと私に笑う。

 私はもしかしたら歯に青ノリが付いているかもと思うとぞんざいに口を開けられない。


「ごめん、急に来て」とキヨミさんが言った。

「…いえ、私こそお邪魔してて、あの、もう帰るのでどうぞキヨミさんも中に行ってください」

 キヨミさんがぱあっと笑顔になった。

 …ほんと綺麗だな。

「私の名前知ってる!て事はハルカが私の事話したんだね?」

いや、ハルちゃんから聞いたわけじゃなかった。塾長とミノリ君に写真を見せられて…そうかハルちゃんの事は『ハルカ』って呼んでるんだね?

 じゃあハルちゃんもキヨミって呼んでるのかな…

『キヨミぃ~~?』『何ぃ?ハルカぁ』みたいな感じか?


 ハルカか…私はどうやったって呼べないな。ハルちゃんはハルちゃんだ。

 キヨミさんはハルちゃんより年上なのかな…もしかして私よりも年上?可愛らしいけれど落ち着いた感じがする。

「私もりっちゃんの事はたくさん聞かされたよ」とキヨミさんが言う。「ハルカが付き合いを無しにしたいって言い出した時。むかしのアルバムを私に見せてくれたんだよ。ちっちゃいりっちゃんとハルカが写ってるやつ」

 マジで!!!



 何でそんな事をする何でそんな事をする何でそんな事をする…

 キヨミさんが続ける。

 …なんかもう、何もしゃべらないで欲しい。うまく受け答え出来ないし。

そんな私の心とは裏腹にキヨミさんはやっぱり続ける。

「ハルカはちっちゃい時の写真、ほとんど捨ててるんだよ。でもね、りっちゃんと写ってんのはちゃんと取ってあった。今とは違う女の子みたいな顔をしたハルカが、りっちゃんの隣で笑ってる顔、ムッとしてる顔、何か食べて口の周りを汚してる写真…りっちゃんはそんなハルカの横でただ普通にしてんの」

まるで自分のむかし話のようにふふっと可愛らしくキヨミさんが笑って話す。

 普通?喜怒哀楽にかけてるって事?もしかしてキヨミさん、私は普通すぎる自分に比べて、みたいな嫌味で言ってるのかな。それにしては笑顔が可愛いけど…


「わざとらしく笑うわけでもなく」とキヨミさんが言う。「ハルカに笑いかけたり、からもうとするわけでもなく、自分だけよく写ろうと思ってポーズ付けたりするわけでもなく」

 私小さい時もそんな感じだったっけ?

ハルちゃんがうちを訪ねて来てから、いっぺんむかしのアルバムを押し入れから出して見てみようと思っていたのだけれど、一番奥にしまってあるから、つい面倒でそのままにしていたのだ。今日帰ったら押し入れの奥から引っ張り出してみてみよう。

「なんかそんな写真見せられて」とキヨミさんが続けるのでドキリとする。

「ハルカがこの子の事がどうしても忘れられないって言うから、そっかぁ~と思ったんだよ」



 そこへミノリ君とリョウさんが戻ってきた。

「りっちゃ~~~ん」ミノリ君が凄い笑顔を向ける。「まさかさ、今日キヨミちゃん訪ねて来るとは思わなかったね~~~」

装ってんのか元々なのか、この子の天真爛漫な感じはイラっと来る。

「どう?」とさらにミノリ君が聞く。「写真見た時とどっちがショック?」

「え?」とキヨミさんがムッとする。「どうしてショック?」

あなたがとても魅力的だからですよ、と心の中で答えるが口には出さない。

「何で?」キヨミさんが私に向かって聞く。「何かハルカから変な事聞いたの?りっちゃんの事は嬉しそうに私にいろいろ喋って来たくせに、私の悪いとこりっちゃんに話してたら許さん」

 私の事をいろいろ?元カノに?

 いろいろって何!



 フフッとまたキヨミさんが笑った。「りっちゃんは奥田って人に誘われてて、でもその奥田さんを紹介した泉田さんの事を好きなんでしょう?」

 !!私のそんな事を自分の元カノに話してんのか!バカじゃないのあいつ!

 …ていうか、それじゃつい最近ハルちゃんとキヨミさんは話をしたって事だよね?

 …なんかちょっと…嫌だな…

 『あなたに関係ないじゃないですか』と言いそうになるのを我慢する。可愛く笑いながら、どうして私のそういう事を話すんだろう。

 いや!ダメだ、ここでキヨミさんに嫌な事を言ったり、したりしたら。だって悪いのはそんな事を元カノに教えるハルちゃんだ。


 キヨミさんが続けた。「でも私も泉田先生の事聞いてたらすごく良さそうな人に思えたから、そりゃよっぽど頑張んないとハルカとはブランク空き過ぎてて、りっちゃんの気持ちはハルカには向かないんじゃない?って言ってたんだけど」

 言ってたんだけど…?へ?もしかして夕べの事を知ってんの!?

 え、何で知ってんの!?いつ教えたの!?

 が、キヨミさんはニッコリと笑って聞いた。「そこらへん、どう?ごめんね、初対面の私が。でも好きな人がいるのに15年ぶりに訪ねてきた幼馴染に言い寄られて困るとか、桜井先生と奥さんがネットに上げてる小説みたいで、私めちゃくちゃいろんな事聞き出したい」

 桜井先生て塾長の事だよね?塾長の小説読んでんのか!

 しかも元カノの発言とはとうてい思えない…

 それは何?余裕があるって事?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ