嫌じゃない 2
唇がまた離れた時に目を開け、言いかける。「ごめんハルちゃ…」
が 、ハルちゃんの片手が私の後頭部に廻ってがっしりと掴み、そして今度は強い口調で言われた。
「ほんと騒がないで。リツから言い出したんだから。はい、カップ貸して」
ハルちゃんが私の手からカップを奪うように受け取ると、そっと少しだけ膝を折って花壇の縁にまたそれを置いた。
「ハルちゃんあの…」
「しっ」
ゆっくりとまた唇が重なった。
が、そのハルちゃんの唇は私の唇を端から優しくゆっくりと、やっと重なるか重ならないかっていうくらいの感覚でなぞる。右から左へ、左から右へ、ゆっくり、何度も。
「ハル…」
もう1回呼んだ瞬間にハルちゃんの舌が入ってきた。
「んぅふっ」びっくりしてくぐもった声を上げると、もっとしっかり唇を合わされる。
ハルちゃんの歯と私の歯が当たる。「ん…」
ものすごく近いハルちゃんの目が私だけを見ているから、ぎゅっと瞼を閉じる。見なきゃ良かった。もうわけがわからなくなる。もう目が開けられない。
ハルちゃんの唇の角度が変わる。その舌は私の頬の裏まで柔らかく伸びて、私の口の中をゆっくりと、愛おしそうに柔らかく、優しく丁寧に角度を変えながら撫でていく。
どうしよう!!
そして今度は舌も。縮こまっている私の舌をハルちゃんの柔らかい舌が優しく優しくゆっくりと撫でる。
すごく…優しいけどすごくいやらしい感じ…
…ぞわぞわする。体中がぞわぞわする。目なんか絶対開けられない。
「…ん…ぁ、」
声を漏らしてしまったらハルちゃんの舌が急に乱暴になった。
「んんっ!」
さっきはあんなに優しかったのに…
…しかも抱き締められてくっついたハルちゃんの下半身が私に当たってるんだけど…
これってハルちゃん…!
ハルちゃんのが当たっている私の下半身をどうにか離そうとすると、やっとハルちゃんは唇を離してクスっと笑った。
「ごめん気にしないで。しょうがないから」
そんな事言われても…
「お母さんに約束したから。まぁチュウはしちゃったけどそれは仕方ないし、後はどうにか今夜は我慢する。残念だよね」
言いながらまた私の唇に今度は「チュッ」とはっきりしたわざとらしい音を立ててキスをした。
…さっきの、チュウなんて可愛いやつじゃないよね。ちゃんとしたキスだった。元カレにだってあんな風なのされたこと…
「これってもうすごい忍耐力で…リツ?今何考えてんの?」
聞かれて首を振る。「…何も。…ねぇハルちゃん…」
「何考えてる?」もう一度聞きながら、また私が答えられないように唇を合わす。
「リツ…」
唇を離したハルちゃんが私の後頭部をまだつかんだまま、私を至近距離で見つめる。恥ずかしいから下を向きたいがそうはさせてもらえない。だから瞳だけ動かして視線をずらした。
ハルちゃんがため息を付くように言った。「リツ、すごく綺麗だよ」
私の、たぶん濡れている唇を、ハルちゃんが親指でやさしく拭った。
「今夜来て良かった」ハルちゃんはまだ私を抱き締めたままだ。
ゆっくりと私の背中を撫でている。
「ミノリに感謝だな。でも明日のは断ってよ?月曜のドライブも、もう二人で行く?」
…え?それは…
それは私がハルちゃんとこうなってる事を泉田先生に話すって事だよね? 私泉田先生に告ったばっかりなのに?
昨日の今日じゃん!!
それはものすごく私が節操無い感じに思われないか?思われるよね?
思われるっていうか、実際昨日泉田先生に告って、しかも本人の前で告れた事にうれし泣きまでしたくせに、あんなキスされて嫌がりもしないんだから節操なんて無いの確実なんだけど、…どうしよう。泉田先生にそんな風に思われるなんて…
そんな風な人間だけどそんな風に思われたくない。
どうしよう。節操はないのに羞恥心は人一倍ってどれだけダメで嫌なヤツなんだ私。
…どうしよう!
どうしようもなくみっともない!




