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揺れ過ぎる私 2

 月の周りの深い、それでも光のある澄んだ紺色の空がとても綺麗だ。満月じゃないけど、今日晴れてて良かったかも。

 なんだか、この世界にハルちゃんと二人っきりしかいないような気がしてきて、余計ハルちゃんを意識してしまう。くっついて座っているわけじゃないのに、ハルちゃんの体温を必要以上に感じる。…乙女だな私。

 ダメだ。ソワソワするばっかりだ。ハルちゃんがずっと黙り込んでいるからだ。こんなはずじゃなかったのに。ハルちゃんの目を覚まさせて家に帰すつもりだったのに。

 ダメだ。ソワソワし続けるし、イライラしてきた。


 「ハルちゃん!」負けて呼んでしまった。「ねぇハルちゃんてば!」

 肘でハルちゃんの肩を小突くと、「…ふん?」と、かったるそうにやっと腑抜けな返事が返ってきた。

 あんなにテンション高かったくせに。

 やっぱり時間がたつごとに我にかえっていったんだな。まぁ仕方ないっちゃあ仕方ない。

 私だけ、この世界に二人きり…みたいな事まで考えてバカみたい。

「ほら!」とハルちゃんのシャツの袖をつんつんと引っ張り促す。「中入ろう。ていうか、着替えて帰りなよ。やっぱり違ったんでしょ?私と隣にいたって…」

「今ぼうっと月見てたら、この世にオレとリツしかいないような気がしてきた」

「…」

「なんかすげぇ恥ずかしい。こんな臭いセリフ」

「…」

「今度オレが住んでた県北の町に一緒に行こ。オレが住んでた街の方から車で少し行くと、鏡が原ってじいちゃんが病院やってたとこがあって、そこの近くにすごい広い草はらがあるんだけど、そこにリツを連れて行きたい」


 ダメだ。

 私、ハルちゃんの事を好きだと思う。今もう、生まれて一番心がぐらんと揺れた。

 あんなに疑って怪しんで、言う事信じられないって言ってたくせに。



 私は焦って言う。「ハルちゃん明日仕事だよね。どうする?着替えて帰る?」

「…オレの事やっぱ泊めたくない?」ハルちゃんが力無く笑う。「今のオレの話聞いてた?そこの草はらにリツと寝転んで空眺めたいな」

 私はドキドキしまくってもう空も見られなくった。



「リツ」

「…何?」

「もういろんな事どうでもいいや」

…何?どういう…

「リツだって今はそんなにオレの事嫌じゃないでしょ?だってこうしてここにいてくれてるもんねぇ?オレがリツに近付くのを受け入れてくれてるのがわかる。オレの事をちゃんと見てくれようとしてんのをちゃんとオレは感じられてる。違うの?オレが感じてるのはオレが良いように思ってるだけ?」

「…」そんな事ない。でもどうしよう。返事ができない。

なんで返事ができないんだろう。

 

 はぁ~~、とハルちゃんが大きくため息を付くのでビクッとする。

 はっきり返事をしない私が責められている感じ…

「でも!!…ぁ、やべぇ声大きくなったゴメン。オレはそんな事よりずっとチュウすんの我慢してるんだけど」

「へ?」思っている以上に急激に狼狽してしまう。「…いやぁ…それは」

「『いやぁ…それは』、じゃないよね?バカじゃないのリツ。訪ねて来たら泊まれっていうし、布団しいてあるそばで思わせぶりな事言うし、しかもこんなとこで二人きりになろうって自分から誘っといて今さら」

 そうだけど!

 …そうかな…そうか…そうだよね…よくよく考えなくてもほんと、私は思わせぶりで気持ち悪い。そうだよね…そうそう、私が悪い…

「いろいろ考えたんだよね」ハルちゃんが続ける。「最初のチュウ、どんな感じで行こうかなって。最初のチュウで全部が決まるような気がするんだよね。いろんな妄想したけどでも、オレが考えてたあらゆるシチュエーションより今するのがいちばん点数高いような気がする」



「…それよりも…」と、それでも往生際の悪い私はこの期に及んで焦って話をはぐらかしたい。

「どうなの?ハルちゃんは本当の本当は、どんなイメージ湧いたの?私が隣にいて…」

「もういいんだってそんなこと」とハルちゃんが吐き捨てるように言う。「ほんとどうでもいい」

どうでもいい!!

「泉田先生にもはっきり振られたじゃん。もうオレでいいんじゃないかと思うけど。オレでいいって思ってきてるでしょ?」

 図星だ。恥ずかしい。


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