揺れる私 2
「もう夜でアレなんだけど」私は提案をする。「アイス食べてみる?」
ハルちゃんが、ふん?という顔をする。
「一緒にアイス食べてみて、実際の私が隣にいたらどんな気持ちになるか確認してみたらいいんじゃないの?すごいバカな事言ってんなって自分でも思ってるんだけど」
そして私もどんな気持ちになるのか確認したい。
「いや?…かな」
「もう1回言って」
「だから一緒に外でアイス食べてみて…」
「そこじゃなくて、『いや?』ってとこ」
「そんな上目遣いでブった感じでは言ってない。バカじゃないの?」
ケラケラとハルちゃんが笑う。
「しっ、笑い声大きい!母さんにバレるじゃん」
「今から外で?」
「そう、ダメ?」
「今のもう1回…」
「うるさい。行くの行かないの?」
「行くよもちろん行く。リツ本気?」
「やってみたらやっぱ何ともなかった~~って思うよきっと」
「リツ本気?」
「何でオレこんな事してるんだろ?って感じになると思う。…でも止めとく?夜だもんね。遅いし、まだ外はちょっと肌寒いかも」
「リツ…本気?」
「しつこいな!」大きめの声を出してしまい慌てて口を押さえる。「もう!私が大きい声出しちゃったじゃん」
ハルちゃんがまたケラケラ笑うので私は仕方なくあばら骨をグーで打って黙らせる。
「痛いって!」
「いいから聞いて。…私、嬉しかったよ。ハルちゃんが訪ねて来てくれたのも、今私の事を好きだって言ってくれてるのも嬉しいってちゃんと思ってるよ。…でもよ?我に返るなら早い方がいいと思うんだよね。…あ~でも夜だからね、青空ちっともないし。じゃあ、ごめんやっぱ止めよう。今度天気のいい昼間に試そうか?」
「いや!やろう!それ絶対今夜やりたい今すぐ」異常に食いつくハルちゃんだ。「アイスあるの?」
うなずきながら思う。この子、我に帰って、あんな告白した後でも何事もなかったように帰るんじゃないかなって。まぁそれもそれで私は受け止めてあげるよ。
なんかちょっと、っていうかだいぶ心が揺れたから寂しい気もするけど。
あんな告白されたら誰だってかなり心が揺れる。もちろん私も。
泉田先生にもふられた後だし余計に。
「1個ね1個」私の心とは裏腹にはしゃぐハルちゃん。「それを半分こだよ」
マジで子供か。テンション高いな。
「しっ」と私は口に指を当てハルちゃんを静かにさせる。「外に出るんだから静かにしてよ?」
本当にむかしに戻ったみたいだ。
私たちは台所へ一緒に行き冷蔵庫を開けアイスを選ぶ。ハルちゃんがさらに嬉しそうだ。
「なんかこういうの、むかしもあったような気がする。ねぇ?」
私もそう思ったよ。でも…
「いいから黙って!こんな夜に大人になって外でアイス食べてるなんてバレたら母さん騒ぐから」
私がキャラメル味のカップアイスを選び、ハルちゃんがマシュマロ入りのチョコ味のカップアイスを選んだ。
「1個だって!」とハルちゃんが笑いながら言う。「じゃ~んけ~ん…」
「どんどんテンション高くなってない?外出たら騒がないでよ?黙ってアイス食べてちょっとぼうっとして終わりだからね。その後やっぱり私の言うとおりただの思い込みだったらそのまま帰ればいいから」
「ほんと冷たいねぇ。…でもリツさ、も1回確認するけど本気なんだよね?オレがさっきみたいな事したらってちょっと心配したりしないの?夜に外で二人きりだよ。やっぱオレを受け入れてくれてきてるから?もう何されてもいい的な」
「外だと逆に出来ないでしょ?私が大声出したらハルちゃん通報されるからね」
「わかった。じゃ~んけ~ん」
ぽん!と一緒に出した手は私がグーでハルちゃんがパー。ハルちゃんのマシュマロ入りチョコ味に決まりだ。
私は上からパーカーを羽織り、ハルちゃんも着て来た自分のパーカーを着て二人でサンダルを履いて外に出る。ハルちゃんは父さんのサンダルだ。夕方まで曇っていたのに、今は月が出ている。
飲み会の帰りには半分だった月がぷくっと膨らんだ感じだ。後4,5日くらいで満月かな。今夜が満月だったら良かったのに。
「満月だったらもっと良かったのにね」とハルちゃんが言ったのでびっくりする。
私も今…、という言葉をどうにか呑みこんで「うん」と返事をした。
「どうしようワクワク感半端ねぇ」とハルちゃんが言うがアイスを食べ終わった後にどんな風な反応がくるのか私は気にかかる。一挙に気持ちが冷めても、ハルちゃんはそんな事ないようにふるまいそうだ。そして私はそれをたぶん見破る事ができるから、どっちにしろ寂しい気持ちになりそうで嫌だ。逆に私が余計にハルちゃんの事を好きになってたりなんかしたら…
なんか乙女くさい…
本当に嫌だな!私はかなりハルちゃんを受け入れて来てる。




