夜の訪問 1
風呂あがりに着た、ソフトブラ付きの紫のキャミソールとジャージ生地のグレーのショートパンツ姿のままで慌てる。超部屋着だ。早く着替えてハルちゃんが上がり込む前に下に行かなきゃ。
けれどそのまま階段を上がってくる足音にさらに慌てる。
「ちょっ…開けないで!!」
慌ててドアノブを掴もうとするがその前にドアが開いた。
「はい残念開けました~~~」
そう言って入って来たハルちゃんだったが私の姿に立ち止まった。
「ちょっと待ってって言ったじゃん。着替えて下に行くから先に降りてて!」
「嫌だね。お母さんに部屋にどうぞって言われたもん」
私の脇をすり抜け、ずいっと中まで入って、当たり前のようにベッドに腰かけたハルちゃんが私をじっと見るので、腕で体の前を隠すようにしてしまう。
「ごめん…見ないでくれる?」
「…あぁ!ごめん、つい」
「着替えるからちょっとだけ部屋の外出て」
ハルちゃんは私の要望を無視して今度はぐるっと部屋を見回した。立ちすくむ私だ。
「この部屋はあんま覚えてないんだよな…むかしはウサギの絵の付いたカーテンだったよね?薄い黄色の」
そうだったかな…いやそんな事より、と「着替えさせてくれないかな」と私はもう一度言うと、ハルちゃんの目がまた私に戻った。
「そんなふうに隠すとちょっとヤらしい感じがする」
仕方ないので急いでタンスから長袖のTシャツを出してキャミソールの上からババッと着た。
ちっ、とハルちゃんが舌打ちして今度は私の太ももを見ている。
「…見ないで」
「わかった見ない。あ~疲れた~~」ハルちゃんはそう言いながらベッドにあおむけになって寝転ぶ。
「ちょっと止めてよ。もうすぐお父さん帰ってくるし」
「いや~~お母さんが、お父さん出張だから泊まっちゃえばいいよ、って言ってくれた」
バカだな母さん!
何しに来たんだ?
ミノリ君と明日出かけるって言ったからだとは思うけど、だからってこんな夜に家まで来なくていいと思うけど。もう10時半だ。母さんも母さんだ。娘を何だと思ってる!
「いいよ、じゃあ泊まっても」
私が出来るだけムッとした感じで言うと、ハルちゃんがバッ、と上体を起こした。そして私をじっと見つめるので私は目を反らしそうになるが頑張って睨むように見つめ返す。
「どういうつもりで言ってんの?」
ハルちゃんが立ち上がりながらそう言うのでやっぱり後ずさりしてしまう。
「まぁいいや」と言ってハルちゃんはまたベッドに腰かけた。
「わかった、じゃあ泊まる。あ~着替え持ってきたら良かったな、まさかこんな嬉しい展開になるとはね~~」
「ごめん、やっぱウソ。悪いんだけどもう遅いから…」
「いや、泊まるわ。決定~~」
「じゃあ私下に行くから!」
「じゃあオレも下に行く」
見つめ合う私たちだ。
「ごめん。けんか腰になって」私は素直に謝ってみる。「言ったら逆に帰ってくれるかと思って。ほんとごめん、もう遅いしせっかく来てくれたのに悪いんだけど…」
ハハハ、とハルちゃんは本気で面白そうに笑ってゆっくりと立ち上がった。「言わなきゃいいのに、そんな張ったり。バカだなリツ」
「ごめん…」何で私はこんなに謝ってんだろう…
「じゃあ、明日ミノリと出かけるの止める?」
止めるって言ったら帰るのか?「…でも約束したし…」
「そんなの断ればいいだけの話」
ハルちゃんがガチャっとドアを開けた。なんだ素直に帰ってくれるんだ…と思ったら階段の下に向けて叫んだ。
「お母さ~~~ん、やっぱお言葉に甘えて泊まります~~」
「ちょっ…!!」
私が止める間もなく母さんがすごい勢いで階段を駆け上がって来た。
母さん、元気だな…。
「泊まる事にしたの?」母さんがキラキラした目をして聞く。
「はい」と答えるハルちゃん。「本当にお言葉に甘えていいんでしょうか?」
「いいわけないって!」と言う私を二人は無視して話を進める。
「リツのベッドは二人じゃ狭いでしょ?お布団持ってきてあげるから」と母さん。
何言い出してんだ母さん。
「お構いなく。狭くても大丈夫です」答えるハルちゃん。
「バカじゃないの、母さん」と言った私を二人はまた無視する。
「冗談ですお母さん」母さんにニッコリと笑うハルちゃん。「僕たちまだチュウもしてるかしてないかの間柄なのでまだ一緒に寝るのは良くないですよね。しかもお父さんが居ない時にそれやったら僕、これから先お父さんの顔をまともに見られません」
「まぁ!!」感嘆する母さん。「偉いのね~。今はすぐに外泊したり同棲したりする子たち多いのに。ハルちゃん偉いね~~」
偉くはねぇわ!




