表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/131

おあいこ 1

 「りっちゃん?」ミノリ君に横から覗き込まれる。「僕、レポートでさ、なんかうまくまとまんないとこあるんだよね。ちょっと見てくれないかな。ねぇばあちゃん、ちょっとりっちゃんに見てもらってもいいよね?」

 ちょうどそこで電話が鳴りだし、奥さんは部屋から出て行った。

「行こ、ほら」ミノリ君が私を促す。

塾長も部屋を出て行ってしまった。

「…私、見てもわかんないかも」

「いいんだって」そしてミノリ君は小さい声で言った。「なんかちょっとショック受けてない?りっちゃん。パソコンに入ってるビイの写真も見せてあげる」


 結局ミノリ君の部屋に連いて行く事になる。リビングに一人残されるのは嫌だったし。

 そうか、ショックを受けているのか私。ダサいな。

 私は泉田先生の事が好きなはずなのに。なんであのハルちゃんと彼女の写真でショックを受けているんだろう。

 たぶん私は余計わけがわからなくなっているのだ。そして余計信じられなくなっているのだ、ハルちゃんの事が。ハルちゃんの彼女が抜群に可愛かったから。



 先に階段を上がるミノリ君が「気にする事ないよ、あんな写真」と言ってくれる。

 私だって気にしたくない。彼氏でもない人の、しかも今カノでもない元カノとの写真なんか。

 部屋のドアを開けて私を中に入るように促しながら、さらにミノリ君が言う。

「確かにあの子はものすごく可愛い子だったけど、いや、ほんとに。りっちゃんはりっちゃんで可愛いよ。持ってるものはみんな違うけど、僕はりっちゃん好き」

ドアを閉めながらニッコリ笑ってくれるけど、もうわかったからいいよ、と思う。


 部屋は6畳くらいの板張りで、少し服がベッドの上に散らかっているくらいで割と整っていた。窓際の部屋の隅に置かれた机の前の壁に、ビイの引き延ばした写真が貼ってある。

「りっちゃんは?」とミノリ君がノートパソコンを開きながら聞く。「僕の事どう思う?ハイ、ここ座って」

促されてミノリ君の机の椅子に掛ける。

「聞いてる?僕の質問。僕の事はどう思う?」

「え…と、ちっちゃい時から可愛いと思ってたよ?」

ハハハ、とミノリ君は笑った。「つまんねぇ答え!」

そしてさらに聞かれる。「ちっちゃい時なんて関係ないよ。今のオレの事言ってんの」

「私やっぱり下に…」


「むかしりっちゃんに抱っこされるの好きだったな。座ってこう後ろからりっちゃんがひざに乗せてくれて。ちょっと今、オレがやってみようか?」

僕って言っていたミノリ君がオレって言い出してる。

 私は少し笑顔を作りながら首を振ったが、顔が引きつるっているのが自分でもわかる。

「可愛い可愛いって言ってるけど、よく見てよ。兄ちゃんより背も高いし、力だってオレの方があると思うんだよね」

 真後ろに立ったミノリ君が、肩越しに覗き込むようにして私に顔を近付けたので、あわてて立ち上がりかけたが、両肩を押さえられてまた椅子に掛けさせられた。

「りっちゃん知らないと思うんだけど、オレがりっちゃんに抱っこされてんの見た兄ちゃんに、家に帰ってからつねられた事がある」

「え!」

「オレが兄ちゃんと一緒にりっちゃんちに行こうとすると来るなって言われてたし、りっちゃんに頬ずりされてるのも見られて後でビンタされた事もあった」

「ウソでしょう?」

「ほんとほんと。だからチュウされた事はずっと黙ってたよ」



 ハルちゃんがミノリ君にそんな意地悪な事を…信じられないけど…

 ミノリ君が私を座らせた椅子のすぐ横に立ち、パソコンの画面を操作しながら言った。

「オレと付き合っちゃう?」

「へ!?」

「あ、レポート出す前にビイの写真まとめて見せてあげる」

「あ、うん」

「兄ちゃんがりっちゃんの事好きで、そいでりっちゃんに会いに行って、りっちゃんがすぐ兄ちゃんの事好きになったらすげぇ嫌だと思ったんだよね。兄ちゃんばっかそんな何もかもうまくいくなんて冗談じゃないから絶対邪魔しようと思って。でもりっちゃんがビイの写メ見た感想くれたの見たら、オレもりっちゃんの事好きかも~~て気になってきたんだよ、だんだん。だから」

ミノリ君は右手でマウスの操作をしながら、左手をそっと私の肩に乗せた。

「私!私やっぱりレポートとかわかんないかも。ごめん。塾長のとこに戻る」

「いや、お願い見て見て。オレ本当に文章書く能力ないんだよ。いつもすげぇ時間がかかるから」

 ミノリ君の左手が私の肩から外れたので一瞬ほっとしたが、その手はすぐにパソコンの脇に置かれ、私は後ろから軽く抱かれているような感じになった。

「ちょっ…」言いかけた時に部屋のドアが乱暴に開けられた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ