たいしたことじゃない 2
湯船に浸かりうだうだと考える。
どうしたんだろう…さんざん言って手を繋いで、ノリでチュウまでしちゃったけど、やっちゃったら失敗だったって速攻気付いたのか。あの後は手を繋がなかったし。…私がそうとう酒臭かったとか…
いやぁ…なんだろう…何?わけがわからん。
やっぱり15年ぶりに会ってテンション高まって、やたら私を好きだ好きだって言ってたけど、急に我に返ったんだろうな。
とりあえず私は悪くないよね?どうしてだろう。私は全く悪くないと思うのに、なんとなく私が悪いように自分で思ってしまうのは。
…いや、もうチュウの事は忘れよう。何もしてないってやった本人が言ってるんだから。ほんの一瞬だったしすごく気持ち悪かったわけでもないから、何もしてないって言い張るんだったら私もそれに合わせて上げよう。どっちも酔っ払ってたし。
あのくらいのチュウなんてどうって事ない。
…あれ?もしかして私がされたと思ってるだけ?ただ顔が近付いただけだったとか…いや違う。ほんの一瞬だけだったけど唇に感触がしっかり残っている。
それに、と思う。ハルちゃんはやっぱりこういう事を簡単にすぐしちゃえる人だったんだな。
…そう思うとそれを許した自分がすごく腹立だしい気もしてきた。やっぱり手なんて繋がなきゃ良かった。
そしてさらにその後の、あの橋の上での5分間が全くさっぱりよくわからない。
私を家に帰す前に1拍置いて落ち着かせるためかな。私が焦ったり騒いだりしないように、母さんにチクったりしないように?
まぁもういいや、考えない。
酔いも残っていて、風呂から出て髪を乾かすのが面倒だなぁと思いながらだらだらとドライヤーで髪を乾かしているとメールが来た。
ミノリ君だ。今日も写メ付き。題名はウインク。
今日のカエルのビイはウインクをしていた。片目の上に小さな藻の端がついて片目をつぶっているように見えるのだ。
そして、「兄ちゃんと帰ったでしょう?
もうチュウとかされた?
嫌だな僕だけおいてけぼりされた~~
絶対りっちゃんチュウされてるな!
兄ちゃんなら絶対してる
りっちゃんて泉田先生好きなんじゃないの?」と書いてあった。
うざっっ!
泉田先生の事を話したのはきっと塾長だ。塾長最低。孫にならなんでも教えるのか。
ミノリ君のメールもウザい。ミノリ君は私の返信みんなに見せてたっていうし、もうミノリ君には返信しない。
むかしのハルちゃんに似てて可愛いと思っていたのに、もうミノリ君なんて全く可愛くない。
続けてすぐメールが来た。しつこいなミノリ君、と思ったらマキちゃんだ。マキちゃんがメールくれるのなんて久しぶり。
開けて確認すると、「チュウしたんだって?」と書いてあった。
何で知ってんの!!
もちろん「何で知ってるの?」と即座に返信する。
もしかして帰る振りしてマキちゃん、私たちの後つけてたんじゃ…塾長に動画撮るの頼まれたって言ってたし。
マキちゃんからすぐに返信が来た。「さっきハルカせんせぇからメール来た」
マジで!メアド交換してるんだ!マキちゃんメール嫌いなくせに。
ていうか!なかった事にしようって言ったチュウの事をなぜマキちゃんに教える。
意味がわからん意味がわからん意味がわからん意味がわからん…
すぐにマキちゃんに電話する。マキちゃん出てくれるかな。マキちゃんはしょっちゅう着信を無視するから。
あ、出た。私が何も言わない前にマキちゃんが聞いてくる。
「やっぱしたんだ?」
「…何でハルちゃんとメアド交換してんの?」
あいつ、連絡先聞かれるのが嫌でスマホ持ち歩かないようにしてるって言ってたくせに。
「向こうがくれって言ったんだよ。リッチィ情報得るために」
「マキちゃん、私を売らないでよ」
「私からはまだ何も言ってないよ。今日初めて向こうから来た。その後電話も来た」
「他に何か言ってた?」
「秘密なんだけどなぁ~~」
「マキちゃん怒るよ私。ちゃんと教えて」




