帰り道 3
ミノリ君が私のメールの事を話した時、泉田先生はどんな反応を示したんだろう。たぶん…何にも反応ないんだろうな。…聞きたいな。でも聞けない。けど聞いてしまう。遠まわしにだ。
「ミノリ君が私とメールしてたって言ったのハルちゃんと奥田先生にだけ?」
「いや、女の先生たちにも」
最悪…!
「それからもちろん泉田先生にも」ハルちゃんがちょっと笑いながら私を見て来る。バカにされてる感じがする。
「…あ~~リツぅ!やっぱ反応示すねぇ」ハルちゃんはさらに私をバカにしたように言った。「でもごめん。泉田先生にも、は嘘。泉田先生はね、残念ながらミノリがそれ含めたカエルの話始めた時にトイレに行きました」
「…」
「泉田先生は両生類とかハ虫類とか苦手だから。あれ?知らなかったのリツ」
「知ってた!」
そうか、そうだった。前それを聞いて可愛いなって思ったのだ。触ったり見たりするのだけがダメなのかと思っていたけど…そうか話とかもダメなのか。
「…カーディガンやっぱり返す」
私が言うとハルちゃんは驚いた顔をした。
「なんで、着といてって言ったじゃん」
この人はきっといろんな人にこういう事し慣れてるんだろうな。それでいろんな人にこういう事を言い慣れてるんだろうな。思わせぶりな事を言ったり、したり。連絡先だって迷惑な程女の人から聞かれるのに15年ぶりに会った私にまでこうやって絡んできて、私のささやかなチャンスさえも…なんか今のミノリ君のメールの話のくだりを聞いたらまただんだん腹が立って来た。ハルちゃんにもミノリ君にも。余計な事をしないで欲しい。
「本当にここで大丈夫だよ」
「リツもしつこいな!」
カーディガンを脱ごうとするのに腕を掴まれ止められた。
「いいって言ったじゃん!」怒った声でハルちゃんが言う。「着といてよ。どうしたの?さっき1回納得したじゃん。着といて欲しい。ちゃんと送らせてよ心配だから」
それでもハルちゃんの手を払いながら言った。
「いやだ」
「…」
ハルちゃんが私の行こうとする前を塞ぐ。
「そんな言い方されたら、こう…ぎゅうって腕に閉じ込めたくなる」
「…」ふぅうわっ!
こういう事をさらに簡単にガンガン言っていく感じ?それとも酔っ払ってんの?
「そんなちょっとスネるみたいに言われたら可愛いよ」
私はすごい勢いで首を振る。そんな気持ちでは言ってないから。
「ハルちゃん絶対酔っ払ってるね。言ってる事がすごい気持ち悪いよ」
「うん」ハルちゃんは笑っている。「ごめん」
素直な返事に力が抜けたが、ハルちゃんは続けた。
「でも酔っ払ってないよ。着といてよ。送らせて、お願い。じゃないと、一緒に帰れなかったオレは心配なあまり、1回帰った振りしてリツの後をつけるよ?」
「気持ち悪っっ!」
「まぁね」
そう言ったハルちゃんは嬉しそうだ。重ねがさね気持ち悪い。
「仕方ないよ心配なんだから。それで家まで帰るのを見届ける。そんな事されるより一緒に仲良く帰った方がいいと思わない?」
私はハルちゃんの顔を見つめてしまう。
この人は実際のところ、どのくらいの本気で、どのくらいのからかい加減で言ってるんだろう。本当に酔っ払ってないの?
ハルちゃんも今度は真面目そうな顔で私をじっと見返してきた。見つめ合って私の方から目を反らしてしまう。
「ほら、早く帰ろ」ハルちゃんはそう言うとニッコリと微笑んだ。
結局私たちはまた歩き出す。私の家のある方へ。
歩きながらも、なんか納得いかない気がする。全体を通して気持ち悪い感じなのに言い含められてしまった感じだ。
「泉田先生にちゃんと先に帰るって言ってきたの?」
そう聞くとハルちゃんは首を振った。
「探してるかもよ?」私は飲み会での楽しそうな女先生たちの明るい笑顔を思い出しながら言った。「女の先生たちハルちゃんがいないとがっがりきて帰ってるかもね」
「さあ、たぶんトイレに行ってたミノリが捕まってそうだよね」
ミノリ君の困っている姿が浮かぶ。私のその気持ちを察知したのかハルちゃんは冷たく言った。
「あいつなら大丈夫だって。あいつ結構したたかなんだって。リツの事にしたって…
あんま言いたくないんだけど、ミノリはオレの事を嫌ってるから。だからリツにちょっかい出してきてんの!メールだってオレはやめといた方がいいって言ったでしょ?ちゃんと」
「でも私に送ってくれてるメールはカエルの写メ付きだよ?カエルを私に見せたいんだと思うな。すごく可愛い感じなんだよ?」
「可愛くない。超自慢してたってあいつ。リツからこんな可愛い返信来たって言って」
「え?私の返信見せてたの?」メールしてるってだけじゃなく?「ヤダな!」
「『カエルの写真見せて車みたいだとか潜水艇みたいだとかって感想くれる可愛い人はなかなかいない』って」
「マジで!超恥ずかしい!最悪ミノリ君バカじゃないの」
「しかもエリカ先生たちが、じゃあ私たちにも連絡先教えて、って言ってきたんだけど、『はいまた今度~』って答えてた」
「最悪!!」




