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帰り道 1

 ざわついた狭い居酒屋から解放されてほっとする。そのままマキちゃんとたまに仕事の帰りに寄るラーメン屋に向かった。

 マキちゃんの良いところは、ちょっとお茶でも、とか言わないところだ。私とマキちゃんが仕事帰りに立ち寄ると言えば、ラーメン屋かうどん屋。ほんのたまに呑みに行く時もおしゃれなカクテルとかが出る所じゃなくて、焼き鳥とかもつ鍋がメインの居酒屋だ。

 女友達だと「ちょっとお茶だけ」の「ちょっと」は全然ちょっとじゃなくて、甘いものを食べてお茶飲みながら結構な時間どうでもいいような話を続ける事も多い。電話だってそうだ。どうでもよくない話ももちろんするが、どうでもよくない話の周りの、どうでもよ過ぎる話が長過ぎたりするのが私はどうしても苦手だ。だから適当に遊んでくれる女の子の友達は少ない。


 マキちゃんと並んで歩きながら気になっている事を聞く。

「何で泉田先生はマキちゃんの事あんなに心配するの?」

「あ~~…前イズミィの前で吐いた事があるからね」

「呑みに行った事あるの?塾の新年会とか?」

「うんまぁ。イズミィの服にゲロかけちゃった」そう言ってゲラゲラ笑う。

「マキちゃん最低!」

そんな事されて心配してくれるなんて、どんだけ男前なんだろう泉田先生。カッコいいな。私も吐くぐらい呑んだら心配してもらえるのかな…



 マキちゃんと今の飲み会のどの料理がおいしかったかを再検証しながらラーメン屋に向かっていると、突然、ガッ、と肩を掴まれた。

「ぎゃっ」と声を上げて振り向くとハルちゃんだった。

「びっくりした!もういきなり肩掴まないでよ」

 そう言いながらもやっぱりカーディガン借りたままは良くなかったなと思う。しかも我が物顔で羽織って帰るとか、やっぱりマズかった。

「ごめんごめん。ちょっと肌寒かったから勝手に着ちゃってた。明後日返そうかと思ってたんだけど、ほんとごめん」言いながらマキちゃんにバッグを無言で渡して持ってもらい、カーディガンを脱ごうとすると、「着といて!」と強い調子で止められた。

 そして上から下まで確認するようにじっと見られた。

「ちょ…何で?返すよ。ハルちゃんもちょっと寒いんじゃない?」

「いや、可愛いから着といて」

またそんな事を言う…



「リッチィが心配で追いかけてきたの?」マキちゃんがにやっと笑いながらハルちゃんに聞いた。「私、先に帰ろうか?」

「マキちゃん!何言ってんの?」と私は止めるが、ハルちゃんは何食わぬ顔で挨拶のように確認する。

「一人で大丈夫ですか?牧先生」

「大丈夫大丈夫。まだ時間早いし、うち近いから」

「やだ、マキちゃん帰らないでよ。私と約束したのに」

「ハルカせんせぇ?今度おごってよ?カーディガン着せたのだって私だからね」

「ありがとうございます牧先生」

マキちゃんは笑って手を振って見せる。

「ダメだってマキちゃん!」私は何とかマキちゃんを止めたい。「私、泉田先生に頼まれたのに」

「大丈夫だって。弟に迎えに来てもらうし。ラーメンはまたね」

それからマキちゃんはハルちゃんに向かって言った。

「ハルカせんせぇ、無理矢理は止めて上げてね?リッチィも大声出すだろうし」

ハハ、とハルちゃんが笑った。「本当にありがとうございます牧先生。気を付けて」

「ちゃんと事後報告してよ」

「もうマキちゃん、お願い」

手を振るマキちゃんに手を振り返しながらハルちゃんが言った。「塾長にチクらなかったら教えますよ」

「わかった~おやすみ~~。ちなみにねぇハルカせんせぇ?うちの弟もリッチィ気に入ってるからね」

「待って!マキちゃん!やだ…」

マキちゃんを呼ぶがマキちゃんはもう10メートルも先で小走りしている。

「酔っ払ってんのに!転ぶってマキちゃんっ!!」

 信じられない。マキちゃんは1回も振り返ってくれなかった。



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