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ぐだぐだ感 1

「ちっ」とハルちゃんが舌打ちした。「お前来ないんじゃなかったの?」

「いや~頑張って研究室早く出たね~、頑張った。りっちゃん!僕頑張ったよ、早くりっちゃんとこ来ようと思って」

「あ~…はい」返答に困る。「お疲れ様」

「ねぇ、りっちゃん。僕、席取っといてって言ったのに」

「あ~~」と私は少し言いにくい感じで言う。「私の横、取っといたんだけど、今ちょっとハルちゃんが…」

「お前どっか空いてるとこに行って座れ」ハルちゃんが冷たい声で言う。

「兄ちゃんこそ、そこどいてくんない?せっかくりっちゃんが僕のために取っててくれたのに」

ハルちゃんは無言だ。そしてどかない。

「大人げないよね~」とミノリ君が言う。「ねぇりっちゃん?」

 う~~ん…



「仕方ないな、牧先生?ちょっとそこ入れて下さい」

ミノリ君が言うと、あ、いいよいいよ~と言ったマキちゃんは、私の前にミノリ君が座れるように横にずれた。

 ハルちゃんがマキちゃんを睨むがマキちゃんは笑ってまた聞いた。

「ねぇやっぱ動画取っちゃダメ?送信したらすぐ消すからさ」

「ダメに決まってるって!」私はまた大声を出してしまった。「もう!マキちゃんちょっと黙ってて」

「ねぇりっちゃん、今度は写メじゃなくて本物のビイ見に来ない?」ミノリ君が言う。

 見たいけど…

「今どこで飼ってるの?」

「今は卵生まれてるから大学の研究室だけど、こんど家に連れて帰るから。今はじいちゃんとこに居候してるんだけどさ、構わないから見においでよ」

 塾長と塾長の奥さんのいる家にか?…塾長の奥さんも遊びに来いって言ってくれてたって塾長言ってたけど、そんなの行けるわけない。



「行かない」と答えたのは私ではなくハルちゃんだった。

 奥田先生はもう黙ったままだ。

「ビイって毒持ってないの?」私は話を変えるために聞く。

黒いカエルの背中に黄色いブツブツがあるなんて、いかにも毒があります、っていう感じの色合いだけど。

「ないない」ミノリ君が笑いながら答えてくれる。

「じゃあ食べれる?」マキちゃんが聞いた。

「食べられるとは思うけど、新種だから食べるのはちょっと。まだいろいろ調べなきゃ」

「カエルの話なんかいいよ」とハルちゃんが冷たい声で言った。「お前リツに何かしてくんの止めて」

「何かって何?何にもしてないじゃん。ねぇりっちゃん?」

「…」


「あんまり兄弟似てないですね」奥田先生がやっと口を挟んできてくれる。

「そうかな、似てるよ」とマキちゃんが言う。

 ミノリ君がただマキちゃんと奥田先生にニッコリと笑った。可愛いな。本当にむかしのハルちゃんに似てる。それを私は口に出して言った。

「むかしのお兄ちゃんにそっくりなんだよね、ミノリ君」

「そう?」そう言いながら当たり前のようにミノリ君は私のキウイサワーの残りを呑み干した。「今の兄ちゃんとむかしの兄ちゃんとどっちが好き?」

「お前どっか別のテーブル行けって」ハルちゃんがまた吐き捨てるように言う。

「お前、空気悪くしてんのわかんないの?ほんとガキだよな」

言われたミノリ君が私を見つめてくる。ハルちゃんもそこまで言わなくていいのにと思うが口に出さない。もっと面倒くさい事になりそうだからだ。そんな風に私が気を使ったにも関わらずミノリ君は言った。

「さっきの話だけど、チュウしたの僕とだよね?りっちゃん」

 この子はマキちゃんと一緒なのだ。私とハルちゃんをからかいたいんだろう。

 私はミノリ君に怒った顔をして見せて黙ったまま首を振った。もうその話はいいよ。誰ともチュウなんてしてないよ。

 が、ミノリ君は止めない。

「僕が猫と遊んでたら、『可愛い可愛い、ニャンちゃんもミィ君も可愛いぃ~』って言って頭撫でてくれてりっちゃんからチュウしてきたよね」



「お前…」と言いかけるハルちゃんの低い声に被せて私が否定した。

「全然覚えてないよ。むかしの話はいいから、何か自分で飲み物頼みなよ」

「ほんとにされたから。僕の初チュウだったのに」

しつこいな。「あ~~じゃあ、ごめん。私は覚えてないけど」

「お前さ、」とハルちゃんが怒った声で言う。「リツに話す時だけ、自分の事を僕って言うの止めろ。超気持ち悪い」

「ひどいな~りっちゃん。覚えてないとか」ミノリ君はハルちゃんを無視して嬉しそうに私に言う。「小さかったけどばっちり記憶に残ってるよ。柔らかい唇の感覚とかも意外と残ってるね。っていうか忘れられないっていうか。その時兄ちゃんいなかったもんね?りっちゃん」


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