宴もたけなわ 3
マキちゃんだけはずっと嬉しそうだ。
マキちゃんの前でそんな事言わないで欲しい。もちろん奥田先生の前でも。
「オレが置きたいな」とハルちゃんが言った。
「…何?」
「そこに手ぇ、オレが置きたい」
「バカじゃないの!」何こいつ!部屋中のがやがや声を割るくらいの声を出してしまって、慌てて手で押さえたが遅い。
マキちゃんがケラケラと笑った。
バカじゃないの!ハルちゃんを睨みつける。が、ハルちゃんよりも、少し哀しそうにしている奥田先生の事の方に目がいってしまった。そんな事、人が聞いてるところで言って欲しくない。しかも泉田先生が薦めてくれてる奥田先生の前とか最悪。
「変な事言わないでよ!」私はことさらはっきりと言った。「ハルちゃんの方こそ酔ってんじゃないの?私、大丈夫だから。 私酔わないし、なんだったらマキちゃんの事だってちゃんと送って帰れるからって、泉田先生に言っといて」
もう絶対こんな服、飲み会では着て来ない。
「ずうっとハルちゃん、て呼ばれてるの?」マキちゃんがからかうように言った。
「呼んでないよ!」
私が即答するとマキちゃんはまたケラケラと笑い、今度は奥田先生に言った。
「ホラホラ奥田先生~~、もっと頑張んないと~。ポッと出の押しの強い幼馴染にリッチィ持ってかれちゃうよ?」
口ごもって下を向く奥田先生だ。
「ポッと出なんかじゃないですよ」と否定するハルちゃん。
「マキちゃん…もう~…ハルちゃんも、あっち帰んないとみんな待ってるよ」
「ほんとはさ、リツが向こうに行きたいんでしょう?」ハルちゃんが横から私を覗き込むようにして言う。「だからそんな服着てきたんでしょう?」
言われてドキリとしたが、泉田先生に目をやった私はちっ、と舌打ちして、手もとの揚げだし豆腐にぐさっと箸をさした。泉田先生がエリカ先生のビールを間違えたふりをして飲んだのだ。なんて姑息なまねをするんだ泉田先生。がっくりだな。そんな事私にして欲しい。
私はドリンクのお代わりをする。今度はキウイサワーだ。うすいなキウイサワー。もっと濃いのを呑んで酔っ払いたい。
「お二人っていつから…お知合いなんですか?」奥田先生が私とハルちゃんに聞く。
「生まれる前からですよ」とハルちゃんが奥田先生を見もしないでしれっと答えたので、私はキウイサワーを気管に入れそうになった。
もちろん私は答えなおす。「小学校の低学年の時3年くらい隣に住んでたんです。それだけで、1週間くらい前に再会したばっかりです」
「あぁなんだ、そんなちっちゃい時に。じゃあ結構ブランクあるんですね」
にっこりと笑う奥田先生の目が笑っていなくて怖い。言われたハルちゃんは無視している。奥田先生も向こうに行けばいいのにと思う。そばに来るなら泉田先生を連れて来てくれよ。
「お風呂とか一緒に入った事、ある?」
マキちゃんに聞かれて、私はまたキウイサワーを気管に入れそうになった。
マキちゃんの目がキラキラしている。マキちゃんは悪い子だ。見た目は全然酔っていないように見えるけど、たちの悪い酔い方をしている。
「マキちゃん…止めてもう」
「あるんだ~~きゃあ~~。奥田先生どうする?」
「ないよ!」面倒くさいが強く否定した。
バカだなマキちゃん。
「でも昼寝した事はあるよね?一緒に」ハルちゃんが言った。
「…」
あるけど。
なぜ今それをわざわざ口に出す。睨んだがハルちゃんは面白そうに続けた。
「一緒に庭に用意してもらったビニルプールに入ってさ、その後リツがさ、まるでオレの事ぬいぐるみみたいにだっこしながら…」
ガッ!、と私はハルちゃんのわき腹に肘を入れ、ハルちゃんが「うっ…」とうめいた。そしてわき腹を手のひらでさすりながら続けた。いやな笑顔を浮かべている。
「昼寝も何回も一緒にしたけどさ、チュウもしたよね?」
ホラ!嫌な事言った!
「してないって!!」また部屋中に聞こえるくらいの大声を出してしまい、自分の声に慌ててしまう。「何言ってんのもう~」
「したした」
「してないって!!バカじゃないの?」
「したの、オレだよね」と急に別の声が割り込んできて、見るとそれはミノリ君だった。




