宴もたけなわ 2
「弟君遅いねぇ」とマキちゃんがハルちゃんに言う。「席取っといてって連絡来たらしいのに」
「連絡?」ハルちゃんが私を睨む。
「私のそばに席取っといてって、夕べメール来た。今ハルちゃん座ってるとこ、ミィ君のために取ってたのに」
ちっ、とハルちゃんが大きく舌打ちをした。
「メールして来ても相手にすんなって言ったよね?」
「そんな事できないよ。それに自分の弟でしょ?じゃあハルちゃんがちゃんと席取っといて上げたら?」
「そんなの来てから勝手に空いてるとこに座りゃあいいじゃん。ていうか、わかんないかな…オレへの嫌がらせでリツのそばに座ろうとしてんだって」
「なんで自分のお兄ちゃんに嫌がらせするの?やっぱ仲悪いの?」
「仲は悪くない…。ただいろいろあって、アイツが今、オレの事を嫌ってるだけ」
それ仲悪いって事じゃないの?
「それにそんな格好してきて…オレ言ったよね?ちゃんと」ハルちゃんが私の太ももをじっと見ながら履き捨てるように言った。「もう。本当にあんま呑まないようにしといて」
…そんな格好って言いやがった!
酷いな。華やかさには欠けるけれど、ちゃんと鏡を見て来たし、まぁまぁちゃんと似合ってたと思ったのに。
私もじっと自分の太ももを見る。
近くに座る事も出来なかったのに、泉田先生にちょっとでも「おおっ!」と思われてようと頑張った夕べの私が可哀そうになってくる。恥ずかしい。
ハルちゃんの凝視から隠すために太ももの上に手を置く。
「酔わないよ。私呑んでもそんなに酔わないから大丈夫」
「そうなんですか?」と言ったのは奥田先生だった。
ハルちゃんの向こうからよいしょっと言う感じで顔を出して言った。「じゃあ今度泉田もさそって一緒に呑みに行きましょうよ」
泉田先生と?マジで!行きたい!…けど、奥田先生も一緒か…う~ん…
それでもいいやと思ってしまう。結構酷い人間だな私。しかも言い出してくれている奥田先生無しで泉田先生と二人がいいと思っている。
そしてハルちゃんがまさに私の心を読み切った事をわざと口に出した。「あ~でもリツはきっと泉田先生と二人っきりがいいのかな」
超殴りたい。
「え、中野先生…」奥田先生が力のない声を出す。「もしかしてやっぱり中野先生は泉田のこと…」
マキちゃんが私たち3人を面白そうに見ながら芋焼酎をゴクリ、と飲んでから言った。「ねぇねぇ、ちょっと動画取っていい?」
「はぁ?」大きな声を上げてしまった。
「いやちょっと頼まれたから」
「え?どういう事?え?誰に?」
「塾長」
バカか塾長!
ちっ、とハルちゃんが舌打ちをし、奥田先生は、なんで?という顔をしている。「マキちゃんマジで冗談止めて」
「冗談じゃないよ。バイト代出すって言われたし」
私を売るって事か?
「牧先生~~」ハルちゃんが言う。「塾長から他に何か言われてません?」
ううん、と首を振ったマキちゃんの顔は思い切り笑っている。
「あの、牧先生も一緒に今度行きましょう」奥田先生が話を元に戻した。
奥田先生が一緒でもいいから泉田先生と飲みにいきたいなぁ。
が、「イズミィとじゃなぁ」とマキちゃんが言い出した。
マキちゃんは絶対面白がってる。
「あ~いいですね~オレも行きたいな~ダメかな~~」
ハルちゃんが私にでもなく、マキちゃんにでもなく、奥田先生にでもなく言う。そして誰も返事をしない。
お手洗いにでも行って取りあえず一拍置いてみようか…
でも私がお手洗いに行った後、面白さだけを追求しようとするマキちゃんがハルちゃんと奥田先生に余計な事を喋ったらマズい。
泉田先生を囲んでいる、本当はハルちゃん目当ての女先生たちが確実にこちらの動向をうかがっているような気がする。ハルちゃんが向こうに帰って泉田先生がこっちに来てくれたらいいのに。
泉田先生何呑んでるんだろう。低めの太いグラスで濃いめの茶色い…ウィスキーかな。カッコいい。
躊躇していたらハルちゃんがまた私の梅酒ソーダを取り上げて飲みながら言った。
「そんなの、手で押さえたりしたら余計エロい感じがする」
「へ?」と驚いて自分の手で押さえた太ももを見る。
さっきハルちゃんに見られてからずっと手を置いていたのだ。
エロい?やっぱ私も短いの履いたらエロいのか!嬉しい…けど、嬉しくないかも!きっと向こうでもエリカ先生たちに言っていたに違いない。
しかも誰にもそんな事言われない私に対してのリップサービスか?
許せんな!




