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でも現実は 1

 金曜はハルちゃんを見かける事がなかった。たぶん休みだったんだろう。確かめてはいないけど。

 私は塾長の小説を垣間見たばっかりに変な夢を見たので、一日中隙があるとその夢の内容が、頭の中をグルグルと回りかけた。

 


 その夢はこんな夢だった。

 場所は塾長設定の王国ではなく現代で、しかも塾の設定なのだけれど、ハルちゃんは王様で塾の皆に命令をして、皆は忠実に言う事をきいている。ハルちゃんが私と結婚すると言い出して、私は断るのだがエリカ先生たちに捕まってハルちゃんの所へ連れて行かれる。

 私を連れて行く間にも、エリカ先生に「私の方が選ばれるはずなのに、おかしい!」と罵倒され、言う事をきかないと泉田先生はクビだとハルちゃんに脅される。私は何とか泉田先生を探そうと、エリカ先生たちの手を振りほどいて塾のビル中を走り回る。階段を何回も降りたり上がったり…。そこへミノリ君が現れて「どうしたの?」と聞いてくれたので、泉田先生を見なかったかと聞いたら、ミノリ君はこう答えた。

「泉田先生ならさっき、じいちゃんが黒い牛ガエルに変えて水槽に入れてたけど?」

 え?え?え?え?…

 とにかくじゃあ、塾長に会わなきゃと思って4階の塾長室に行くとそこにはハルちゃんがいて、腕をぐいっと掴まれた。ところで終わり。



 泉田先生がカエルに変えられてしまった!

 しかも1回も出てきてくれはしなかったし。夢にさえ顔を出してもくれないってちょっと酷い。



 土曜にはまた泉田先生と一緒の所を見かけた。見かけると人間の出来ていない私はどうしても、ハルちゃんを非難の目で見てしまう。まんまと仲良くなりやがって、みたいな目で見てしまう。一瞬だけ。泉田先生にブスだと思われたくないから、すぐに自分を取り繕う。ニッコリ笑って挨拶する。…挨拶だけだけど。

 でもハルちゃんはどういうわけかそんな私に向かって嬉しそうに笑うのだ。嫌な性格をしている。

 泉田先生だけじゃない。女先生たちと話をしているハルちゃんを何度か見かけた。話をしているというか捕まっているようにも見えたけど。泉田先生が好きなエリカ先生に二の腕を掴まれている所ところも見た。「見た目より結構がっしりしてるじゃな~い」とちょっとエロめの声で言われながら腕をムニ、ムニ、っと揉まれていた。



 そしてその合間にも私は泉田先生に奥田先生をもう一度薦められた。私が一人の時にわざわざ声をかけてくれたのだ。

「なぁなぁ、りっちゃんなぁ?」と言って1階の非常口の手前で話しかけてくれた泉田先生にドキリとする。私の夢の中では、塾長にカエルに変えられた泉田先生だ。

「りっちゃんはやっぱり楠木みたいな男が好きなんかのぅ?」

「え?いえ!」

耳打ちをするように近い距離で話をしてくれてドキドキしてしまう。

「せぇでも楠木はりっちゃんの事を偉い好いとる感じじゃなぁ」

「…」

「わしとおる時にもりっちゃんの話ばっかりしとる」

「どんな話ですか!?」

やっぱり変な事喋ってんじゃないかな。

 

 急に勢い込んで私が前のめりに聞いたのでの泉田先生が少し引いた。

が、ちゃんと答えてくれる。「小せぇ頃、自分が寂しかった時にいつも黙ってそばにいてくれたぁ言うて、そいでいつでもりっちゃんの事を思ったら偉い心強ぇかった言うて、…でもなぁりっちゃん、こがんな事をわしが言うたぁいうんは言わんで欲しいんじゃんけぇど、そいでわしもこがんな事そうそう言いとうはねぇんじゃけぇどな…」

そう言って泉田先生が私を見つめてくる。

 私を見つめてくる。

 私を見つめてくる。

 3回繰り返したが、それもそのはず。こんなに泉田先生に見つめられたのは始めてだった。私も恥ずかしながら泉田先生を見つめ返して先を促した。


「奥田の事なんじゃけど」

奥田?「…」

「奥田はなぁ、りっちゃんの幼馴染ほど見た目はええ男じゃねぇかもしれん、いや、わしはえぇ男じゃあ思うとるで?でもな、りっちゃん、そりゃあもうがっくり来とったみてぇよ?楠木が来てからな」

「…」

「な?」私が返事をしないので泉田先生が返事を促して来る。

「はい」

「奥田もな、りっちゃんを思う気持ちは同じくれぇ強ぇんじゃと思うんじゃわしは。楠木もええヤツだとは思うんじゃけどな、あがんな感じの男には他にも女がぎょうさん寄ってくるけぇ。な?もうほっといても女が次から次に寄ってくるけぇ。今はりっちゃんりっちゃん言っとっても、他にもきれぇで優しくてちょっとエロい感じの女が寄って来たらやっぱり目移りもしよう?りっちゃんがな、かわいそうな目に遭ったらわし嫌じゃけんな、わしはな、わしがこんな事言うのもほんま、どうかなぁと自分でも思うんじゃけんど…奥田にな、しといた方がな、わしはええなぁと思うで?」



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