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仲良くなりたい 2

 そんな目で見たって本当にしょうがないんだから。

 毎週休みが同じでも、一緒にどこか行きません?なんて一生かかっても自分からは泉田先生を誘えそうにないんだから。いいじゃん、こっそり休みを合わせるくらい。

「先生も休みなんですね」ハルちゃんが泉田先生に聞いている。

うんうん、とうなずく泉田先生をしり目にハルちゃんは「ふう~~ん」とうなずきながら私を見つめた。

「オレも木曜を休みにって申請したんだけど却下されたんだよね。塾長に。…リツさぁ、何か言った?塾長に」

私は無言で首を振る。

「じゃあさ、夕べ帰る時にミノリに渡されてたの、何?」

「…」



 ミノリ君に渡されたのはケイタイ番号とメアドとLINEのIDが書いてあるメモだった。『登録しといてね!』と書いてくれていた。それから『牛ガエルのビイの写真送ってあげる』って。

 カエルのビイ?カエルに名前付けてるの?言っていたカエルの事だよね?牛ガエルは見てみたかった。それに、「りっちゃんを助けたい」って言ってくれていた事も気になって夕べ寝る前にメールを送ったら、すぐに写メ付きのメールが送られてきたのだ。

「りっちゃんLINEやろ?」

「ごめんLINEやってないの私」

「なんで?」


 説明するのは面倒くさい。私も誘われてLINEをしていた時期もあったのだけれど、元カレとの意思の疎通とか、元カレとの相性のなさとか、元カレと元カレの今カノの出会い方とか、元カレと元カレの今カノと私の共通の知人たちの私に対する同情とか、そもそも私をLINEに誘ってきたのが元カレの今カノだったとか、そんな面倒くさいいろいろな経験を経て、すっぱりと止めてしまったのだ。

 それをミノリ君に教えるのは別にいいのだけれど、メールで説明するのは面倒だし、わざわざ電話までかけて説明したくない。

 哀しく思われたら嫌だから人には言わないようにしているが、今はメールも頻繁にやり取りする相手がいない。大学の頃親しくしていた友達も彼氏が出来てからあまり相手をしてくれなくなったし、今一番親しくしてくれているマキちゃんはメールもよっぽどの事がないとしてこないし、塾内でメアドを知っているのも今のところ4人だけ。実は奥田先生にも「良かったら」と言って番号をもらったけれど、登録もしていないし、もちろんかけた事もない。

 私が欲しいのは泉田先生の番号だ。それを奥田先生に言えない私はとても良くない。



 塾でも生徒たちがスマホをいじるのを見て、今中高生じゃなくて良かったと私はいつも心から思う。もともと親しく出来る友達も少ないのに、こんなにコミュニケーション能力がなかったら確実にハブられてしまっていただろう。恐ろしい。

「いろいろ面倒くさいから」とミノリ君にメールを返した。

「ふ~ん。これ新種のカエル。ビイっていうんだよ。

真黒い新種の牛ガエル。背中の黄色い斑点がBって字に並んでるからビイ。」

と言う返事と一緒にまた写メ付きだ。


 1枚目も2枚目も黒い牛ガエルのビイ。1枚目が上から撮った写真。脇に十円玉が置いてあって大きさがわかる。ドッジボールくらいの大きさだ。デカいな。なるほど、Bの文字の形に黄色いイボみたいなのが見える。ちょっと、というかかなり気持ち悪い。

 2枚目は真横か撮った写真。なんだか黒いずんぐりした車みたいだ。ちょっとカッコいいかもしれない。


「2枚目の写真はなんか黒いずんぐりした車みたいだね。

 ちょっと面白くて可愛い。

 ビイを見せてくれてありがとう。おやすみ。」

ミノリ君から、「もう寝るの?ちょっと電話する?」

んん~~…。私も、私を助けたい、って言っていたのが具体的にどういう事か聞きたかったけれど…やっぱり電話はしなかった。だってその後話が続かなそうだから。また塾で会うし。それに大学生がただのノリで言ってくれてるだけかもしれないから。

「ごめん、すごく眠たいからまた塾でね。

 ありがとう。ビイをしばらく待ちうけにするから。

 おやすみ。」

「りっちゃん大好きだよ。おやすみ。」

大好きだよ?なんか…可愛いな。なんだかすごく小さな子と話しているみたいに感じた。ただただ小さかった頃のミノリ君を思い出しながら。



「なに?」ともう一度ハルちゃんが聞いた。「メモ渡されてたじゃん」

なんとなくハルちゃんには言いたくない。でも隠す理由もない。

「連絡先教えてくれただけ」

「それで?」

「…」

「連絡したの?」

「…したよ。メールした」

「どうしてかな、オレにはすげぇ用心深いのにね?」

「…」

「何であいつの事は警戒しないの?」

「警戒って…そんな自分の弟に…」

「何言われたの?」

「カエルの写メくれた」

「それだけ?」

「…それだけ」



 そう言えば最後に「大好きだよ」ってメールに書いてあったけど、ハルちゃんに好きだと言われた時のような、この人何言ってんの信じられない的な感じはしなかった。メールだったからかもしれないけど、久しぶりに会った親戚の小さい子が私の事をちゃんと覚えていてくれて懐いてくれた、みたいな可愛らしい感じだった。


 はぁ~~とハルちゃんはわざとらしくため息をついて見せた。

「あいつがリツに何かうまい事を言ってきても、それはオレに対する嫌がらせだから。真に受けないでよ?」

何それ?ミノリ君に「大好きだよ」って言われたのを、私が告白されたとでも取ると思ってるのか?

「そんな事思わないし、ミノリ君はそんな事言わないよ。何?兄弟仲悪いの?」

意地悪に言ってみたが、ハルちゃんは笑った。「いろいろあるんだよ」

どうでもいい!と思う私だ。



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