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塾長との面談 3

「私も中野さんの事は信頼しているよ。まぁまぁ可愛らしいと思うし」

「…」まぁまぁ…?

「まぁハルカはね~…なまじっか外見がいわゆるイケメンさんだから、変な執着心を出してきても、ただ想いが強くて逆にカッコいい、みたいなね、感じに取れるでしょ?取れない?普通の女の子だったら怖がるよりも喜んじゃうんじゃないかと思うんだけど」

 私もそう思うけど。いや!でも私は普通だって!喜ぶ女の子や好きになってしまう女の子が多いかもしれないけど、それでも私はちゃんと普通に気持ち悪いと思ったし。


「女子の皆さんはそういうのが好きでしょ?…あれ?中野さんはそうでもないのかな?ネットの恋愛小説とか見るとそんなの多いでしょう?」

ネットの恋愛小説?

 塾長、ネットの恋愛小説とか見てるの?

 塾長は続ける。「もうすぐにでもネタにできるね。何の取り柄もなく、恋人もいないパッとしない私の所へ、幼馴染が、しかも超イケメンに成長した男の子が突然訪ねてくる…」

「パッとしないって…」

「あぁ、ごめんごめん!」

塾長が慌てて謝るので私も慌てる。「あ、いえすみません」

 ハハハ、と塾長はすぐに笑った。「本当はちゃんと思ってるよ。さっきも言ったけど、中野さんの事まぁまぁ可愛いと思ってるって」

何かイラっとする。


 が、塾長はさらに続けた。

「ネット小説の話だけど、S彼とかね、俺様、とかね」

塾長の口から出てくる言葉に素直に驚く。「ケダモノとかね、禁断とかね、ほのぼのじれじれとかね」

塾長?

「…あの…そういうネット小説、読んだりとか?」

恐る恐る尋ねると「いや、」と塾長が答えるので、そりゃそうだよね、とうなずきかけたら、

「書いてるんだよ」と塾長は言った。



「へ?」

「書いてんの、ネットで。『ビイビイ』って言うハンドルネームなんだけど」

ビイビイ?

「今度検索して見てみてよ。なんかこっちが思うような普通の感想をもらえないんだよね。中野さんが読んで感想言ってくれたらいいんだけど。まぁそれでも実際感想を面と向かって言われたらちょっと恥ずかしいんけどね。どう?読んだりする?」

「…いえ、あんまり…」

「そう?」


 塾長がケイタイ小説書いてるって事?S彼とか?俺様とか出てくるやつ?

どんな種類の冗談なのかよくわからない…

「…それ本当なんですか?」

「うん。秘密にしといて」

マジで!


「それってハルちゃん…じゃなくてハルカ君は知ってるんですか?え?ていうかこの塾の人たち…」

「誰も知らんよ!そんな事誰にも教えられんて」

そうか…そんな事を私にゲロってきたか。重い。そんな秘密重いな。

「ハルカも一応は知らんはずなんだけど、やっぱり知ってるかな…いろいろ制作のために学校の事とか女の子の事とか聞いたりしてたからね…パソコンも一緒に使ったりしてたし、ハルカに電話をかけてきてくれてた女の子たちの事もいろいろ勝手に考えて話作ったりとかね…ミノリもそんな感じで、やっぱり知ってると思うね。どっちともぶっちゃけた話はした事ないんだけど」



 いろいろ衝撃が大きい。「…どんなの書いてるんですか?」

聞きたくないような聞きたいような、やっぱり止めといた方がいいよね、って思えるような質問が、つい口をついて出た。

「まぁいろいろだよ。まぁ自慢するけど結構アクセス数多いからね。この塾開く前からやってるから」

マジで!!

「でもホラ、ハルカはSじゃないし、俺様でもないから」

「…」

自分の孫をSかSじゃないか判断した上でそれを職場の従業員に言うのか?

「ちょっとほら、執着が強いだけで」なおも塾長は続ける。「でもね、執着が強いS系のイケメンとかもう滅茶苦茶需要があるんだよ、恋愛小説ではね」

私は居心地が大変悪い。自分の書いているケイタイ小説の事を孫の話と絡めるのもどうなんだろう…しかも雇用主が。

 早くここから出て行きたい。


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