表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
128/131

どういうつもり 1

 結局ハルちゃんの提案どおりにマキちゃんと泉田先生が二人で遊具に向かうと、ハルちゃんが私の横に腰を下ろした。

 「大丈夫?」と聞いてくれる。

「…ありがとう」

「それで?どういうつもり?」ため息をつくようにハルちゃんが聞く。

「…どういうつもり…もないような…」言いにくい。本当はありありだったから。

「なんであの弟と喋ったりすんの?あんな弟と喋ってそれでそそのかされてオレにあんな電話かけて来たって事?オレがどんな反応示すだろうって」

「…」

「ひどいね」



 「ごめん、でも…」

「オレはバカだな…オレはもう…普通にすげぇまっとうな気持ちで喜んでたのにな…そういう人の心をもてあそぶような事できるんだね~~ビックリだわオレ。しかもポッとでのあんなやつの言う事真に受けてそそのかされてそんな事言うって。オレの事信じられないって言うけど、リツこそ信じらんねぇ」

「でも…ハルちゃん、実際気が抜けた感じになったじゃん。朝も、車の中でも、ずっと喋らなかったし。…それに泉田先生と私がコーヒーカップ乗りに行くときだって無反応だったし」

ハルちゃんが私の顔を覗き込む。「どんな反応をオレに期待してるの?」

「…」

「オレの事どう試したいの?」呆れた声で聞かれる。

「試したいとかじゃないんだけど…」試したかったよね。

「そんな言い方ばっかりだね!はっきりしない。リツらしいっちゃあリツらしいけど今はイライラする」

「ごめん」



 「そうやって、こういう時ばっかり素直に謝るとことかもね」

はぁぁ~~とため息をついてハルちゃんはベンチの背をもたれて空を見上げた。

「…ごめんハルちゃん」

「ちょっとそのお茶ちょうだい」

言われて少し躊躇するが泉田先生に買ってもらったお茶のボトルを渡す。

 ハルちゃんはその3分の1くらい残っていたお茶をごくごくと飲み切ってしまい、そしてまたベンチに持たれて空を見た。



 私はどうしたらいいか、どう答えたらいいか考える。

 私はどう試したかったのか。

 そそのかされて言ったのは本当だけど、好きなのが嘘ではない。私から興味を失くすかどうか試したかったのだ。

 「リツ」ゆっくりと私の方を向いてハルちゃんが聞いた。「オレはリツに好きだって言われて安心したよ。夕べ、嬉しいって言うよりどっちかっつったらほっとした。今度はずっと一緒に居られると思って。オレの事、どう試したかったのかちゃんと話して」

 向こうに着かず離れずで次の順番を待っている泉田先生とマキちゃんが見えた。

「リツ!」と強めに呼ばれてびくっとする。「ちゃんとオレを見て」



 ちゃんと見てと言われたが見れない。心持ち下を向いてしまう。

 まだ怒った声のハルちゃんが聞く。「じゃあ夕べ、オレの事好きだっつったのは嘘なわけ?」

「…嘘じゃない」ハルちゃんの方は見ないまま答える。

「…」黙って私を見つめるハルちゃん。「あ、そう。嘘じゃないけど、そんなに本気でもなかったって事?」

「…そんな事ない」

「でも言ったらオレがリツの事好きじゃなくなると思って言ったんだよね?」

うん、とうなずく。

「そこおかしいよね?普通好きな相手に好きだって言われたら普通にうれしくなってほっとするとこでしょ?」

うん、とまたうなずく。

「でもリツはオレが本気でリツの事を好きなんじゃないかもって、いまだに疑ってて言ったんだよね?」

「本気じゃないっていうより」と私はやっと口に出す。「一時的な盛り上がりで言ってるだろうから、盛り下がるのも早いんじゃないかもって思って。どうせ盛り下がるなら早い方がいいかなって」

「腹立つなぁ。リツが単独でそう思って言ったんなら逆に可愛い気もしてきたような気さえするんだけど、あいつにも言われた後っていうのが許せねぇな。なんか…他の男にそそのかされてバカにされるオレ、みたいな構図」



「ハルちゃん…」

呼ぶとハルちゃんが私の手を握って来た。

 今は私より大きくごつくなったハルちゃんの手だ。


 「夕べ言ったのはね」と私はちゃんと話す事に決めた。

ふん?と握った手に軽くきゅっと力を入れて、優しくハルちゃんが促してくれる。

「ハルちゃんが私の事どうも思わなくなるかもって思いながらも、あんな電話かけたのは、ハルちゃんがまたいなくなったら嫌だなってすごく思ってるから…だと思う」

「うん」やっとにっこり笑うハルちゃん。「それは好きとは違うの?」

「違う事は…ないと思う。私…恥ずかしいけど高山先生の事も気になったし」

「じゃあ今もう1回言ってみ?」

「え?」

「『え?』じゃないって。電話で言ったみたいに今もう1回…そんな『へ?何?』みたいな顔してもダメだからね。オレだって今こうやってリツに言うの恥ずかしいんだよ。オレはほんと!結構全部恥ずかしいって思いながら頑張ってやってたからね。あんなチュウしたのだって、おっぱい触ったのだって、恥ずかしかったけどインパクト重視だから。そりゃやりたくてやってんだけどさ、ほら!『好き』ってもう1回言ったら、リツのした事半分くらい許してあげる」

「…今ここで?」

「今ここで。なぜなら今ここでオレが傷付いてたから」

「ごめん」

「ごめんはもういい。じゃあ今言えない理由を言ってみて」

「…恥ずかしいから?」

「夕べは恥ずかしくなかったの?」

「恥ずかしかったよ!だからすぐ切ったでしょ?」

「…ふうん。オレのどこが好きかもすぐ言えなかったくせに?」

「ごめん」

あ~もう!と言ってハルちゃんがまたベンチの背もたれに身をもたせる。また沈黙だ。

 気まずい。

 私も、吐いちゃってもいいから、もうコーヒーカップチームに入りたい。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ