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廻る私 2

 コーヒーカップの中に私と泉田先生の二人きり。

 2週間前なら夢にまで見たこのシチュエーション、楽しむだけ楽しみたいけど…

「よし、回すぞ」

動き出したコーヒーカップの中で泉田先生はがしっとハンドルを握った。ハンドル握る手がたくましくてかっこいいな。私もそっとハンドルに手をかける。

 が、次の瞬間私はハンドルをわしづかみに握り直した。

 早っっ!

 泉田先生がとたんにすごい勢いでハンドルを操作し始めたのだ。

 ぎゃあああああ!目が回るっ!

 目が回る目が回る目が回る!!そして吐いちゃいそう私!

「泉田先生!ダメです!私吐きそうです!もちょっとゆっくりにしてください!」

「ふん?」そう聞き返しながら泉田先生の手は止まらない。

「泉田先生っ!!」仕方ないので怒鳴るように言うと、やっと泉田先生は手を緩めてくれた。

 「なんじゃりっちゃん、気持ち悪くなったんか?ごめんごめん、わし、いつもメグとこれくらい回すけん、りっちゃんも大丈夫か思ぉて」

悪かったな!そんなに頻繁に遊園地来てんのか、あんたら。



 一つ目の乗り物で吐きそうになるなんてどういう事だ?なぜに泉田先生はあそこまでハンドルを回す。回しながら大笑いしてたし。私は全然楽しめなかった。絶叫系が苦手とか言っておきながら、あんな速さでコーヒーカップ回す人そういないと思うけど。

 泉田先生が私にベンチで休むように言ってから近くの自販機にお茶を買いに行ってくれた。ベンチでしばらく休んでいるとやがてマキちゃんとハルちゃんも戻って来た。



 「リツ…」

暗い顔で私を見降ろすハルちゃんだ。無言でゆっくりと私の背中をさすってくれる。

「イズミィ、もちょっと考えてあげなよ?」マキちゃんが非難する。「落ちるのや高いのは自分も無理なくせに。速いのも苦手なくせにおかしいよね」

「いやぁほんまに。自分で漕ぐ分はいくらでもはようできるんじゃわし。ほんまわりかったなぁりっちゃん。わし、あれくらい大丈夫か思ぉて」

「いえ、大丈夫です…私もあんまり久しぶりだったもんで」

「りっちゃんがな、キャーキャー言うんではじめは喜んどる思ぉて。せいでも途中で『ダメぇ!もっとゆっくりぃ!』ちゅうもんで、慌てて漕ぐのを止めたんじゃけど」

泉田先生は私の声色をまねたつもりだろうが、そんなちょっとエロいような声出してないから!



 気持ち悪い所を押して、「私、そんな声出してません」というと「そがん事なかったで?」と泉田先生が否定する。

 もう!そんな事どうだっていいんだよ!

 が、マキちゃんが言った。「カズミも夕べ電話の後言ってたよ。リッチィの声、目の前で喋ってる時とはまた違ってなんかイイって。耳に来る感じって変態みたいに言ってた。もっと早くちゃんと会っとけば良かったって」

「へ?」とハルちゃん。

「ねぇリッチィ、カズミが言ってたようにハルカ先生に好きだって言ってみたの?」

 あ、マキちゃん爆弾投げた。



 「どういう事ですか牧先生」ハルちゃんが静かに聞く。

「リッチィ、カズミの事は全然真剣に受け止めようとしないのに、かと言ってリッチィがものすごくまだハルカ先生を好きだと思えないのは、やっぱりハルカ先生の事が信じられないからだよね?って事でそこをカズミがつっついて、ハルカ先生はその気のないリッチィを振り向かせたかったわけだけど、それが急に『好き』とか言ってあからさまに好意を示したら、ハルカ先生興味を無くすだろうって。でもリッチィはそんな事言うキャラじゃないから、そんな事そそのかしてもダメだって私言っといたんだけど」

 フフッとわざとらしく笑って見せるマキちゃんだ。絶対ダメとか言ってないな。マキちゃんはブチ込むだけブチ込んで、飲み物を買いに行こうかなと言うので私はもちろん行かせない。

 が行かせないのは失敗だった。



 「夕べあいつと電話したの?」ハルちゃんが私に静かに聞く。「オレに電話して来た、前?後?」

「…前。したんじゃなくてかかってきた…」

「番号交換してたの?」

「してない。マキちゃんの…」

「牧先生!いくら弟でもリツの番号勝手に教えたりしたら…」

「違う違う」とマキちゃんが否定した。「私の電話からかけたから、リッチィは私だと思って出たんだよ」

「ちょっともう~~。牧先生ほんと怖いわ。いったいどうしたいんですか?本気でオレより弟の方がリツに合ってるとでも思ってんですか。それともただ普通に嫌がらせですか?」

「私たまにさぁ」マキちゃんが答える。でもハルちゃんの問いに対する答えじゃない。「私が男だとしてリッチィにせまるとしたらどうなるんだろうって思うんだけど…」

へ?

「私なんとなくハルカ先生みたいな感じになりそうなんだよね。はっきりしないリッチィに、そいでイズミィなんかを好きだとか言ってるリッチィに、無理矢理行き場を失くさせて自分の方に取り囲むみたいな」

「オレはそんな事してません」

「してるよ」

マキちゃんとハルちゃんがじっと見つめ合う。


 「泉田先生、」ハルちゃんが言った。「オレ、リツと一緒に休んどきますから、牧先生をどっかに連れてって下さい。じゃないとオレどなり散らしそう。二人でいくらでもコーヒーカップ乗ってきてください」

いいよ私乗らないって、というマキちゃんをハルちゃんが思い切り睨んで「行って来て下さい!」と怒鳴るように言う。

「楠木…」と言いかける泉田先生の事もハルちゃんは睨む。

「牧先生ほんとどういうつもりなんですか!今だってオレがここにいるでしょ?リツと付き合ってんのはオレなの!」

「私も心配なんだよ」マキちゃんがハルちゃんを真っ直ぐに見返して言った。

「もうそれはさんざん聞きました」

「ハルカ先生モテモテだからね~~。私本当にリッチィが好きだから。この世で一番大切な友達なんだよ。てか私がちゃんと友達だって言える女の子リッチィだけなんだもん。リッチィにせつない思いさせるような男は許せないんだよね」

「させてません。牧先生にそこまで心配される筋合い、オレにはありませんから」



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