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進展 2


 ベッドから起き出して取りあえず朝食を食べようと階段をおり始めた時にドアチャイムが鳴った。

 ピタッと足を止めてしまう。

 が、チャイムは続けて鳴る。

 ハルちゃんが最初に訪ねて来た時を思い出すなぁ…ていうかこれ、絶対ハルちゃんじゃないかな…チャイムはしつこく鳴り続けるし、他には考えられない。

 薄いふわふわの、ニット上下の部屋着のまま玄関のドアは開けずに「はい」と返事をすると、挨拶もなしに「リツ!」と言ったのはやっぱりハルちゃんだった。



 「開けて」

「ごめん、私まだ着替えてもいないんだけど。今目が覚めたばっかで。何?」

「いいから!」

強めの口調で言われて、私もハルちゃんならもういいか、と思ってドアを開けてしまう。

 ハルちゃんは私の姿を確認するとスルッと玄関に入って来てドアを閉めてしまった。

「リツ!なんで電話出ないの?それで何でそんなかっこなの?」

「今言ったじゃん。起きたばっかだって」

「そんなかっこで開けたらダメだよね?オレじゃなかったらどうすんの?宅配の人とか来ても開けてんの?オレが最初来た時はえらい警戒してたくせに」

自分が開けてって言ったのに。「…ハルちゃんだったから開けたけど」

「ならいいけど。何で電話出ないの、夕べからずっと。オレ、帰りついてから電話したらつながらないってどういう事?」

「電源切れてたのに気付かなかった」

「そんな事ないでしょ?普通夕べみたいな感じで帰ったら、オレからの電話待つでしょ?お母さんは?」

「もう仕事に行った」

「あがってもいい?」

「今日仕事だよね?ハルちゃんも」

「いいから、上がってもいいかつってんの!」

「なんでそんなに怒ってんの?」

「電話通じないからって言ってんじゃん!ほんとにもうっ!」

私の横を通り抜け勝手に居間に入ってしまった。



 私の家なのに、「座って」とハルちゃんに促されるので、取りあえずソファにかける。

「リツはどういうつもりでオレを受け入れようとしてんの?」

そう言いながら、ぽすん、とハルちゃんも私の斜め向かいに腰を下ろした。

「いや、わかるよ?」とハルちゃんが言う。「泉田先生に振られたばっかでさ、もうオレでいいって思ってはいるんだろうけど気持ちが付いて来ない、みたいな感じなんでしょ?」

でもそれ、母さんにも気持ち悪いって言われたし、自分でもそう思ってるんだけど。

「それでもさ、夕べみたいな夜はオレが帰ってから電話があるとか、オレがちゃんと帰りついたかちょっとメールしてみようとか、思わないわけ?」

本気で思い付かなかった…というか、スマホの電源切れてんのにも気付かなかった。

「ごめん」と一応謝ってみる。「…いっぱいいっぱいで」



「何?」怒った声でハルちゃんが言う。「はっきり喋って、オレいらいらしてるから」

「ハルちゃんが胸まで触ってくるから!もう、いっぱいいっぱいになったの!そういうのがホラ…久しぶりだったし」

「ヤだな、その言い方…オレだっていっぱいいっぱいだったっつうの!どんだけ触るとこ今まで妄想してたと思ってんの?高校の時なんか手のひら集中させて、むかし遊んでた頃にはマジでオレと同じぺちゃんこだったリツのおっぱいを頭の中で立体的に想像して…」

「ハルちゃん!」想像上の私の立体的なおっぱいの話を止めさせる。

でもそれならなおさら夕べ触ってがっくり来たんじゃないのかな。来てないの?むかし遊んでた頃からあんまり成長してないから。



 「なんかいろいろ急過ぎる」と私は思ってる事を言う事にする。「ハルちゃんにはついこの間会ったばっかりなのに、会ってからいろんな事が急過ぎる。告白なんかする事ないと思ってた泉田先生には告白してしまったし、泉田先生はマキちゃん好きだったけど、マキちゃんには私の方が好きって言われるし、塾長の家にお呼ばれして無理からに見せられた写真のキヨミさんに、塾長の家で本当に会っちゃうし、振られたばっかりだからって念押ししたのにハルちゃんはおっぱいまで触ってくるし、私はそれを嫌がりもしないし…」

ハルちゃんは途中から優しい顔になって、いちいち、うんうん、とうなづきながら聞いている。

「私夕べは夢にも見たもん。片方のおっぱいハルちゃんが触ってて…」

「何?」

「もう片方泉田先生に触られる夢見た」

「まじで!うわ、イヤだな」

「でもほんとに!私大人だからおっぱいちょっとくらい触られたって本当はどうもないの!だからもう言わない。いっぱいいっぱいとかじゃないから。全然。泉田先生とマキちゃんの事だってショックだったけど嬉しい気もちゃんとする。ハルちゃんの事、最初会った時には相当うさんくさいと思ってたけど、今はそこまで思わないし…」

「今は正直どう思ってんの?」

「…ハルちゃんご飯食べた?」

「食べてないけど。今の時点で本当のとこどう思ってんのかちょっと1回聞かせて」

「…うまく言えないけど…」

「そういう前置きはいいから。リツってそういう喋り多いよね?それで肝心な事は言わない…」

「嬉しいと思ってる。また一緒にいれて」

「…」

ハルちゃんが何も言わずにただ黙って見ているので、どうしようか迷いながら付け加える。

「たぶんハルちゃんの事、こんなこと言いながらもちゃんと好きだとは思うんだけど、泉田先生の事があったばっかりだから、泉田先生の事結構本気ですごく好きだったから。ハルちゃんが泉田先生に私をドライブに誘わせた事とか本当に嫌な感じがしたし。それでもハルちゃんとまたこうやって会えて、それで好きだって言ってもらえるのはすごく嬉しいと、ちゃんと思ってるよ」

「ごめん」

「ごめん?なんの事を謝ってんの?本当は何にも悪くないと思ってんでしょ?」

「いや、自分本位で」

「…」

「ごめん」

「ご飯食べるの食べないのどっち?」

「食べる」



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