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さわりたい 2


 家についてハルちゃんがドアチャイムを鳴らした。

「ちょっ…ハルちゃん私鍵持ってるから」

止めたのに、ハルちゃんはもう一度ドアチャイムを鳴らしたので母さんが出て来てしまった。

「帰りました、お母さん」とハルちゃんが当たり前のように言う。「遅くなってすみません」

「はいお帰り~~。?…ハルちゃん今日も泊まるの?」母さんがこそこそ声で続ける。「今日はお父さんいるよ?」

言うと思った。

「いえ、僕はお父さんいらっしゃってもいいですけど」

それも言うと思った。

 「お母さん、今度の月曜はドライブ行ってきます」

「あそう、ありがとう。どうするハルちゃん、ちょっと上がって行く?」

「ちょっと上がったら泊まってしまそうなんで」

ハハハハハ、と母さんとハルちゃんが声をそろえて笑った。

 全然面白くない。それに声大きいって!



 「あの、送ってくれてありがとう」と私はうまく口を挟んでみる。

「お母さん」ハルちゃんが私には答えずに真面目な顔で母さんに言った。「こうやって僕をすぐ帰そうとするし、ちゃんと付き合ってる感じがしません」

「あ、やっぱり付き合う事になったの?この子何にも言わないから」それから私に向かって言う。「あんた泉田先生の事はもう吹っ切れたの?」

本当に玄関先では止めて欲しい。

 「吹っ切れましたよ」とハルちゃんが答える。「今夜泉田先生とリツの友達の牧先生と4人でオレんちで飯食ったんです」

「ハルちゃんもういいから…」

「泉田先生が好きなのはその牧先生なんですけど、まだ付き合ってもいないのに、泉田先生が牧先生にリツの目の前でプロポーズしてましたから。さすがにもう吹っ切れたと信じたいとこです」

「あらあらあらあら」と母さんは恐ろしいほどわざとらしく驚いてみせ、私をまじまじと見た。「牧先生ってマキちゃんの事?あんたが好きだった泉田先生があんたの友達を好きだったなんて。え?しかもそれ知らなかったの?可哀そうに~~。漫画みたいな展開!」

 どんだけ嬉しいんだ母さん。明らかに顔が笑ってるんだけど。


「良かったね~リツ。そんなあんたでもハルちゃん、良いって言ってくれてんだから。ありがとうハルちゃん」

「ダメです、お母さん。お母さんがいくら言ってくれてもリツが…」

「あ~」と母さんが私たち二人を見ながら言う。「じゃあ、1回ドア締めるから。私今ね、録画した番組見てるとこだからもう先中入るわ」

そう言って母さんはドアを閉め、玄関の外に締めだされる私とハルちゃん。

「ちょっ…母さん!」

「外で騒がないでよ?」と母さんがドアの中から言う。「お父さんも起きちゃうし。リツ、ちゃんとハルちゃん納得させて帰らせてあげてよ?めんどくさいから」



 母さんがまた余計な事をした。

「あいかわらずすげぇ、リツの母さん。面白いけど…めんどくさいって言われたオレ」

「全然面白くない。じゃあ、おやすみ」玄関のドアに手をかける私だ。

「リツ、せっかくだからこっち向いてみ?」

「おやすみ」

「いいから!」

ぐいっと肩を掴んでハルちゃんと向きあわさせられる。

「ハルちゃん…」

「しっ!」ハルちゃんが口に人差し指を当てた。「また『ハルちゃん…』とかちょっと力無く呼んでみたりしてさ。ほんとにもう…ちょっとこっち」

 ハルちゃんに手を取られて一昨日の夜の花壇の前に行く。



 チュウされる!と思う。

「今日はほんとに曇ってるよね」ハルちゃんが私の手を取ったまま空を見て言う。

「明日雨降るのかな」

「…うん。どうかな…」

「手に力入ってるね」とハルちゃんが笑う。「チュウされる!って思ってるでしょ」

されると思ってるよ。するって言ったもん帰りがけ。

 でも私は落ち着いている振りをして「大丈夫」と答える。

「大丈夫って何。嫌だな~~」

「ハルちゃん、『付き合うとか言わなくても仲良くしていつの間にか付き合ってるなって感じになるのがいい』って言ったくせに、母さんにまで付き合ってるとか言うし」

「さっきは否定しなかった」

「あんな時母さんに何話しても同じだから。後でゆっくり話す」

「オレのいないとこで?リツが何話したか、後でお母さんに聞こうかな」

 後は無言で手を引かれ促されて花壇の縁に腰かける。

 一昨日と同じだ。

 そわそわする。

「ダメだ、すげぇそわそわする」とハルちゃんが言うのでビクッとする。

「リツは?」と聞かれるので、さらにそわそわが酷くなる。

「…全然大丈夫」

「も~~」

「…なに?」

「声がちょっと強がってる感じでググっと来た」

そう言ってハルちゃんは笑うが私はハルちゃんを見つめて首を振る。「違う。強がってない」



 「じゃあ5分」とハルちゃんが言う。「5分したら帰る」

「…うん。帰り大変だよ歩くの」

「あ~うん、まぁね。でも送りたかったからしょうがない。今日は一緒に御飯も食べれたし。月曜はドライブ行けるし」

「…ハルちゃん、本当にハルちゃんはこのまま私と…付き合うっていうか、仲良くしていってくれる気でいるの?」

「なんか変な聞き方だね」

「15年ぶりに会いに来て、思ってるのと違った!みたいな感じに正直なったでしょ?今日だって私の事バカとか、かったりぃとか言ってたじゃん」

「言ったねぇ。でもリツは結構思ってたまんま、っていうかむかしと変わんなかった」

むかしからバカって思ってたって事?なんかムカっ!

 「恥ずかしいけど…」

ハルちゃんが口ごもるので先を促すと「バカとか言えるのもすげぇ嬉しい。ごめん」と言ってニッコリと笑った。



 「まずさ、ありえないと思うんだよね」と私は話す事にする。「前にも言ったけど、15年ぶりに会って、ずっと好きでいてもらえてるとか。私がすんっごい!特別な可愛い子だったら別かもしれないけど」

「リツは特別だよ。そう言ったでしょ?オレの中ではすげぇ特別」

「すぐそういう事言うし」

「途中で会いに来てくれてたら違ってたかもよ?今みたいな気持なんかすぐに消えてたよ」

 私の手を掴んだハルちゃんの指が私の指の間に入り込む。

「なんか…ほんとに否定的だよねリツは。オレもリツの事言えないけど。ずっと会いたかったけど」そう言ってハルちゃんの顔が近付く。「会うのはすごく怖かったよ。オレも前言ったけど。会ったら、『あ~リツだ、良かったぁ~~』ってほんとに心から思ったんだって。リツが変わってて、『あ~隣の子ねぇ』くらいの反応だったらもう本当せつないし、逆にすごい受け入れられたら、それはまたそれであり得ないとオレが思っただろうし。リツがリツで良かった」

ものすごく顔が近付いて来て私が少し後ろに避けてしまうと、ふふっと笑ってハルちゃんが言った。

「大丈夫?チュウしても騒がない?」

うわ~~と思う。

「うわ~~って顔しないでよ、面白いけど。じゃあ…代わりにおっぱい触ってもいい?」




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