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いっしょに帰ろう 3

 「私も動物園がいいな」と言ってみる。

「あれ?でもドライブ行きたくなさそうな事も言ってたよね?」

「うん」

じっと見つめられる。

「…ぶっちゃけもう泉田先生とドライブ出来る機会なんてないから行く事にした。マキちゃんと一緒のとこ見るの、かなりビミョーな気持ちだけどね。いいの行く」

「そう?じゃあお弁当作って来たりする?」

「ん~~」と唸る。

 私の作ったおにぎり、泉田先生に食べて欲しいなぁ。「うめぇよ、りっちゃん」とか言われて。「泉田先生、ご飯粒ついてます。取ってもいいですか?」とか言って。マキちゃんいるから言えないよね。「わし、メグに取ってもらうけぇ」とか言われたら…まぁまず今日の泉田先生の告白聞いてて、自分の握ったおにぎり食べさせる勇気は私にはないし、そんな事出来たところでむなし過ぎる。

「今さぁ」とハルちゃんが私の顔を覗き込む。「泉田先生だけに、リツの作った弁当食べさせるとこ想像してない?」

「してない。無理だよね4人分作るのは私無理」

「そっか、じゃあ今度二人でどっか行く時に作ろうか、一緒に」



 二人でどこか行く時に、二人で作ったお弁当を持っていく…

 完全に恋人同士の会話のようだ。

「じゃあオレは、今自転車押しながら何を妄想してたでしょう?」

自転車押しつつ妄想してんの?…気持ち悪…私もしてたけど、人がやってんの聞いたらちょっと、って思うな。

 怪訝な顔をした私に、ニコッと笑ったハルちゃんが言う。「ヒント、この間のチュウのこと以外で」

「わかんない」

「答えんの早いな。ちょっとは考えなよ」

「わかんないもん」



「オレとリツが中学とか高校一緒だったと仮定して、一緒に帰るとこ妄想してた」

あ、そう…でも、「学校一緒だとしても学年違うじゃん」

「いいんだよ!それはそれで。リツが先に行った高校にオレも入るでしょ?まぁその前にも受験勉強見てもらったりして、そこはまぁ実際中学の時に、もうものすげぇ妄想したからそれは置いといて、で、リツと同じ高校に入ったオレは2年のリツの教室に行くわけ。というのも、リツが1年の時、家まで同級生の男子に送られて来たのを中学生のオレがたまたま見たからなんけど…」

「ハルちゃん?…」

「リツを探して2年の教室までドキドキしながら行って、そしたらリツを送ってきたやつがリツの隣の席にいて、オレはうわ~~~~ってなって自分の教室帰って、そいでリツが終わるまでずっと待ってて、」

「ハルちゃん…」

「リツは一人で校舎から出て来てオレに気付いて、でもリツの後ろからその同級生の男が走って来て、『一緒に帰ろ』って言うんだけど、オレがリツの手を掴んで『オレと帰って』って言ってリツはちょっとそいつの方を見るんだけど、結局そいつに『ごめんね、隣の子なんだ』って言ってオレの方に来るの。そいで今みたいに二人で並んで帰って…」

「…」

「リツが『だめだよ?学年も違うし。そんなにいつまでも私のとこばっかり来てちゃ』って言って、そんなリツの腕を掴んで『うるさい、あんなやつとと一緒に帰ったりすんなよ』ってオレが言って、…その…恥ずかしいけどいきなりチュウしたりして二人の関係は幼馴染から恋人に変わっていくっていう…」

 妄想長いわ。

 そして少女漫画臭い。

 それまでただの年下の男の子だった幼馴染が、高校に入ったとたん、自分の事を意識してくれて、同級生の男子の前から「こいつはむかしからオレのもんなんだよ!」って言う少女漫画のノリ。

 …なんかもう塾長が書いてアップしてそうな気がしてきた…



「どうこれ」とハルちゃんが聞く。

どうって言われてもなぁ…

「うん…それは女子が考えるヤツだよ」と私は答える。

「リツは?」とハルちゃんが聞く。「…聞くの怖いな…リツはオレが隣からいなくなった後どれくらいオレの事…やっぱ聞くの止める。怖すぎる」

「そのハルちゃんの妄想だけど、ずっと隣にいたら結構私の事嫌いになったと思うよ?高校になったらちょっとはましになったけど、中学の頃とか私、毎朝寝ぐせ付けたまま学校行ってたし、ご飯メチャクチャ食べてたし、数学苦手だったから受験勉強なんて隣に住んでても何にも教えられなかったと思うよ?逆にハルちゃん超モテで私とか相手できないくらい忙しかったと思う」

高校で私の教室に私を探しに来た時点で2年の女子の大半に目を付けられたかもしれないよね。めんどくさそう~~。


 

 …私はハルちゃんの事をどれくらい考えてたかな…

 ハルちゃんは私の中ではずっと、私の後をついてくる可愛い男の子だった。

 中学生の頃までの私は、友達の家に行ってその子の弟を見たり、あるいは学校で『うちの弟がこんなで』みたいな話を聞くと、決まってハルちゃんを思い出した。

 その度にどうしているんだろうと思い出した。

 小さい頃の女の子みたいなハルちゃんの顔を思い出そうとするが、今隣にいるハルちゃんの姿が邪魔してあまり良く思い出せない。

「ハルちゃん可愛かったよね~~ほんと、女の子みたいだった」

「そうかな」

「ミノリ君も可愛かったけど」

「…」

「今のミノリ君、あの頃のハルちゃんに似てるよね?」

「…」



「リツの家近付いて来たから自転車止めてみようかな」

「何で?」

「何でだと思う?」へへっと笑ってハルちゃんが言う。

「…止めなくていいと思う」

ハハ、とハルちゃんが笑う。「言うと思った。でも!家着く前に1回チュウするよね?」

「…何で?」

「何でもどうでも、するでしょう普通。送って帰ってんだから」ハルちゃんが笑いながら言う。「あ~~家着くな~~。どうする?」

「それ冗談で言ってる?」

「いや」とあっさり答えるハルちゃん。「茶化してはいるけど冗談では言ってない」

 そっか…


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