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いっしょに帰ろう 2


 「オレは歩いて送りたいな」とハルちゃんが言う。「ゆっくり一緒に歩きたい。リツは嫌だ?しんどい?」

「うちまで歩いて送ってくれたら、ハルちゃんの帰りがしんどいよ。私、塾に置いてある自転車で帰れる。まだそんなに遅くないし」

「あっ、じゃあ自転車はオレが押してあげる。リツはゆっくり歩いてよ」

「やっぱやだよ。結構時間かかるって」仕方がない。「車でお願いします」

「車は良くないと思うよ?」

「え?でも自分で車か歩くかどっちがいいか聞いてくれたよね?」

「でも車は良くないよ。すぐ着いちゃうし。密室だから」

「じゃあ私自転車で一人で帰れる」

「車の中でリツにしようと思ってたいろんな事を試してみたくなるよね」

「自転車で帰れるって」

「もういいよ」

何がだよ?



 結局やまぶき塾のビルまで戻り、自転車を取って帰る。言っていた通りハルちゃんが私から鍵を受け取り自転車を押してくれる。

 ハルちゃんに告白した4人て、高山先生とあと誰なんだろう…結構気になるな…

 私は塾の女先生たちの顔を思い浮かべる。

「リツ」と呼ばれる。「何考えてんの?」

「え~と、特に何も」

「泉田先生たちの事?」

「違う。今は違う」

「オレはね、人の運命だからまぁ勝手な事言うだけなんだけど、もしこれからあの二人は離れる事があったとしても、きっとまた出会うんだろうなって思うな」

「ずいぶんロマンティックな事言うんだね」

「言うの恥ずかしいけど…オレとリツもそうなんだよ」

思い切りハルちゃんの方を向き見つめてしまう。

「ちょっ…。まじまじと見ないでよ。恥ずかしいけどって言ったじゃん!あ~~もう恥ずかしい」



 私たちは歩く。飲み会の帰りのように。

 あのときみたいに抱き締められたりチュウはされない。だってハルちゃんは私の自転車を押してくれているから。

「今夜は空、曇ってるね」ハルちゃんが少し上を見上げながら私に言う。

「うん」

 飲み会の帰りは綺麗な星空だった。月も綺麗で。そしておとといの、チュウした夜の月はもっと綺麗だった。

 ふふっとハルちゃんが急に笑うので気持ち悪いがドキッとする。

「今オレたち絶対同じ事考えてたね」

ねぇ?と言う感じでハルちゃんが私の顔を覗き込む。

「おとといのチュウの事考えてたよね?」

考えてたよ!そりゃ考えるよ。

「考えてた?」返事をしない私にもう一度聞く。「考えてたでしょ?絶対考えてたよね?」

笑顔でしつこいのでつい答えてしまう。

「考えてた!」

考えてたよ、そりゃ考えるよ。


 「こんな雲がかかってる夜、一人で帰ったら寂しいけどさ」ハルちゃんがにこやかに言う。「二人だと嬉しいな」

「ドライブってやっぱ行くんだよね?」私は聞いてみる。

「行きたくないの?」

「だって状況が違う。そもそもハルちゃんの話を聞いた泉田先生が、私に気を使ってくれてドライブ行こうって言ってくれたのに。泉田先生とマキちゃんがあんな感じで、それで4人で行くわけでしょう?」

「まぁね~~。ダブルデートだね~~」

「…私の立場微妙なんだけど」

「泉田先生に告白したから?」

「…そう」

「オレも告白されたいな、リツに」

「ハルちゃん、そんな事ばっかり言ってるけど、ハルちゃん私に酷い事してるなって気にはならないの?私をだましたようなもんだと思うけど」

「泉田先生が牧先生好きなの知ってて黙ってて、しかもその泉田先生にドライブ誘わせたから?」

私は黙ってうなずく。

「そりゃリツが気付かないのが悪いよ。泉田先生の事ずっと見てたんでしょ?それとなく気付いてもいいんじゃないの?しかもリツと親しい牧先生との事なのに」

「泉田先生が好きそうなタイプと違ったんだもんマキちゃん。マキちゃんは私が泉田先生好きな事知ってからそれとなく応援してくれてたし」

「オレは~~リツ怒ると思うけど、はっきり、きっぱり、片が付いて良かったよね。今夜の事であきらめついたでしょ?どうせリツの思いはいつまでたっても届かないんだから」

「ひど…」

「オレでいいじゃん。泉田先生と牧先生より仲良くしようよ」

「…ハルちゃん、高山先生以外誰に告られたの?」

「おっ!?気になるの?」

「…だって言ってきただけでも4人もいるんでしょ?言わないで想ってるだけの人もいるに違いないから、そうたいして人数多くない職場ですごいなと思って」

「せまいとこだからじゃないの?目新しい感じがしたんじゃない?ミノリだって誘われてたよ。まだ学生なのに」

 


 しばらく黙って歩く。

 金曜の夜、駅から商店街を抜けるまでは結構人通りも多かったが、住宅街に入ると急に人通りはなくなった。

 飲み会の帰りと違う通りを通ってみたいとハルちゃんが言うので通ってみることにする。

 自転車を押してくれるハルちゃんの横で、私はつらつらと、どうでもいいような、どうでもよくない事を考える。

 …マキちゃんと泉田先生が結婚、なんて事になったら、私はその結婚式に出るんだよね?

 いやその前に月曜日のドライブはどういった席順になるんだろう。

 ハルちゃんが運転するとして横に泉田先生、後ろに私とマキちゃん。でもハルちゃんが「牧先生と泉田先生一緒にどうぞ」って二人を後部座席にするかもしれない。あり得る。あり得るっていうか絶対そうするんだろうな。


 「ドライブ、どこに行くのかな」と聞いてみる。

「まだ泉田先生とちゃんと話しこんでないけど、動物園行きたいって行ってたな」

 泉田先生と動物園かぁ。

 マキちゃんが泉田先生は小動物大好きなんだって言っていた。『ふれあい広場』とかでウサギや子ヤギと戯れる泉田先生が見れるかも。可愛いだろうなぁ…

 …やっぱドライブ行こう!


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