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いっしょに帰ろう 1


 結局マキちゃんは泉田先生の車で帰る事になった。

しかも、塾にもっと近い駅前の契約駐車場に停めてある泉田先生の車の所まで、いっしょに歩いた上でだ。

 マキちゃんが自分の弟に連絡を入れようとしていたのを、横から泉田先生がマキちゃんのスマホを取り上げ、「今日くれぇわしの言う事を聞け」と言って、むんずとマキちゃんの手を掴んで立ち上がらせたのだ。

 そんな事目の前でされたらもう何も言えない。

 …まぁ元々、それについて何かを言う権利なんて私にはないけど。


 

 じゃあ私の事も一緒に送れと、マキちゃんが泉田先生に言ったがもちろんハルちゃんに止められる。私だってそんな邪魔はしたくない。

 しかも月曜のドライブはそのまま決行だ。

 ハルちゃんには行きたくないと言っていたが、マキちゃんと泉田先生の前では言えなかった。駄々をこねているみたいで、実際駄々をこねているわけなんだろうし、私には駄々をこねたいだけの理由も十分にあると思ったが、きっと泉田先生はマキちゃんと行きたいだろうし、私が行かなきゃマキちゃんは行かないだろうし。


 もっと早く泉田先生とマキちゃんの事知っていれば…泉田先生結構マキちゃんの事気にかけてたのに…私は全然気付かなかった。マキちゃんは応援してくれてたし。

 …て言う事はマキちゃんは私と泉田先生が付き合うようになっても良かったと思ってたって事だよね?けどハルちゃんにも協力したりしてた…その上私の事が一番好きとか、どんな感覚で言ってんだろう…マキちゃんらしいっちゃあマキちゃんらしいけど。

 ちゃんと聞きただしたい。



 けれど、マキちゃんは泉田先生と帰っていったのだ。

 帰りにハルちゃんにだけ少しゴニョゴニョなにか喋っていたけれど、「はいわかりました」とハルちゃんが答えると、マキちゃんはニッコリと笑って、泉田先生に腕を引かれる。私の目の前で。



 『わしの言う事を聞け』、だって。

 …言われたいよねそんな事。

 もういいや、とも思う。泉田先生の気持ちはよくわかったし。告る前みたいに、家に帰ってから妄想するだけで我慢しよう。泉田先生はどうやったってマキちゃんを送りたいだろうし…

 「リツ!」ハルちゃんが私のぽわん、としている意識を戻すかのように呼ぶ。「今、自分が言われたかのように妄想したよね?」

「したよ。したらいけないの?いいじゃん妄想するくらい」

「開き直った!」とハルちゃんが大きな声を出す。でも笑っている。

そりゃ開き直るよ。みんなのいろんな気持ちを聞き過ぎた。

「けどオレが『オレの言う事を聞け』って言ったら嫌なんでしょう?」

「キャラが違う」

「うわ~~じゃあオレのキャラってどんな?」

「わかんない」

 ハルちゃんにはずっと私が「ちゃんとついてきなさい」ってお姉ちゃん面して言ってたもんね、ハルちゃんに『オレの言う事を聞け』なんて言われても、何言ってんのふざけないでよって感じ。



 …もしあんな風に、15年ぶりに突然現れたんじゃなかったら。ずっと近くにいて、だんだん二人一緒に大人になっていったら。

 私たちはどんな関係になったんだろう。

 途中で何回かハルちゃんは自分の前の家を見に来てたって言っていた。その時に私にちゃんと会いに来てくれていたら私たちは…

 逆に今みたいな興味を私には持ってくれなかったんじゃないかなと思う。



 駅の近くまで4人で歩き、マキちゃんと泉田先生をまだ少しにがにがしい顔で見送る私だ。

「オレはお似合いだと思うけどね」ハルちゃんが2人の後ろ姿を見ながら言う。

 私もそう思う。

 それでも私は自分と泉田先生が二人で並んでる図を想像する。

 …やっぱり合わないんだろうな。

 そしてハルちゃんと並んでいる自分を想像する。

 …似合うとは言いにくい。ハルちゃんは私と並んでる図を象像した事あるのかな。

 あ、キヨミさんと並ぶハルちゃん想像しちゃった…

 似合うな!似合うわ…雑誌に出て来そうなカップル。

 あ!しまった…元カレと並んでいる自分を想像してしまった。

 うわ~~~



 「どうする?」とハルちゃんが聞く。「車で送る?歩きたい?…早くお互いの家に泊まれるようになりたいな」

 本当は今すぐ一人になって今日のことをゆっくりとぐるぐるぐるぐる思う存分考えたい。

 私…と言いかけると「もういいんじゃなかな」とハルちゃんが言う。

「オレとこれからずっと普通に話したり、ご飯食べたり、遊びに行ったり、そうしようよ」

「…それは…その…付き合うって事?」

「ずっと仲良くしてさ、それでいいじゃん。オレたちつき合ってますってわざわざ言わなくても周りには付き合ってるって思われたら」

「でも塾の先生たちに自分で言ってたじゃん勝手に。私と付き合ってるみたいな事」

「あれはしょうがなかった。続けざまに4人、オレに付き合ってほしいって言ってきたし、その時はまだチュウしてなかったから」

「4人!」声を張り上げてしまった。

 私は高山先生一人しか知らない。

「すごいね!」普通に驚嘆してしまう。「モテモテじゃん」

「みんなさ、ほんの1週間くらいしかオレと過ごしてないのに、しかも接点なんてほとんどなかったのに、オレの何を見て好きって言ってんだろうって思うよね?」

 顔だよ顔!見た目でみんな好きになってんの!

「オレ、結構変な性格してんのに」ハルちゃんが自嘲気味に笑う。

知ってる知ってる。



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