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それぞれの愛しさ 3


 憤慨する私にマキちゃんはため息をついた。

 泉田先生がどんな顔をしているか見たくないのでそっちは見ない。もう泉田先生は、私の事をすごく嫌だと思ってるかもしれない。

 「例えばよ?」マキちゃんは私を見つめて言った。「わかりやすく言うと~~イズミィとハルカ先生比べたらだんぜんイズミィが好き」

私の胸がドキンっ、とまた強く鳴る。

 そっかやっぱ泉田先生の事好きなのか。でもハルちゃんと比べたらって言い方、失礼じゃないのか?失礼だよね?泉田先生にもハルちゃんにも。

 「でもね」とマキちゃんが続けた。「リッチィと比べたら私はリッチィが好き」



 「「「へ?」」」

私たちマキちゃん以外の3人が声をそろえて間抜けに聞き返した。

「だからね、なんていうのかな…それは私が男よりも女の人を好きって事じゃなくてね、人間として好き嫌いを考えて、イズミィよりはリッチィが好きって事」

 ハルちゃんが聞いた。「それは何ですか?…その、泉田先生には申し訳ない言い方ですけど、泉田先生を恋愛対象としては見れてないって意味なんですか?」

「いや、そういうわけじゃないんだけど」

「じゃあリツの事を…そのちょっと恋愛感情を持って」

「いや、そうでもない。ここにいる3人で考えたらって事」

マキちゃんの答えはあやふやだ。

 プローポーズまでした泉田先生の前で、泉田先生より同性の私の事を好きだって言ってるし。しかもここにいる3人で考えたらって事だから、私よりも好きな人がいるんだろうし、泉田先生と私の間にも誰か好きな人がいるんだろう。

 「前な」と泉田先生が静かに言った。「高校の時にメグとまた会ってな、わし告ったら、その時一番仲良かったメグの友達の名前上げて、その子より好きだと思えたら付き合う、言うてな。結局わしら付き合わんかった」



 「だからトータルで人間として」マキちゃんが言う。「例えば今だとイズミィと二人でごはん食べるよりリッチィと寄り道して帰った方が楽しい。っていうそんな感じ」

「ん~~…」とハルちゃんが唸る。「オレ、リツと二人きりの時にさっきみたいな告白すれば良かったな…何か言い損、みたいな感じ。全部泉田先生ので消えてるし、牧先生のでオレの告白なんかもう何も残ってない」

「じゃあさ」聞かない方が良いような気はするが私は聞いてしまう。「マキちゃんがこの世で一番好きな人は誰?」

「りっちゃ~~ん」泉田先生が情けない声を出す。「わし結構今、心痛めとるけん、それはわしがおらんとこで聞いてくれんかの?」

「嫌です」私はきっぱりと拒否した。「私だって結構心痛めてます。絶対にここで聞きます」

ハハハ、とそんなところでハルちゃんが高笑いしたので私と泉田先生は同時にハルちゃんを睨みつけた。



「今んところリッチィ」マキちゃんがさらっと答えた。

 私!

 なんかもう自分の気持ちがよくわかんないけれど、今夜のこの過程を踏んでも、そのマキちゃんの言葉が嬉しい気持ちも十分にする。嬉しいがもちろん複雑だ。

 やっぱダメだよマキちゃん。せっかく泉田先生が、外野がいる前で軽くプロポーズまでしてんのに、私を一番に挙げるとか…だから私に泉田先生との事を応援してくれてたのかな。…でもハルちゃんの事もけしかけてた…

「…わし、何番目?」泉田先生が小さい声で聞く。

「イズミィはぎり3番目かな」

「2番は誰じゃ!」泉田先生が打って変わって声を張り強気に聞いた。

「2番は今んとこいない」

「いない!?」泉田先生の声が裏返っている。「じゃあわしが2番じゃろう?」

「それが違うんだよね~~」マキちゃんが言った。「なんか微妙なんだけど」

 どうでもいい~~~…どうでもいいし面倒くさいな結構マキちゃん。



「美味しかったよ、天津丼」そう言ったマキちゃんだけが先に食べ終えてしまっている。「リッチィも早く食べなよ。どうすんの?泊まっていくの?」

「泊まらないよ!…マキちゃんと…一緒に帰る」

言いながらマキちゃんと帰るのもどうかな、と思う。

「送っていきますよ」とハルちゃんが言う。「泉田先生は?」

「ダメじゃメグ」泉田先生が言う。「今夜はわしと帰るんじゃ」

打たれ強いな泉田先生。2番目に好きな人がいないけど3番目だって言われてんのに。

「いいよ」とやっぱり即答するマキちゃんだ。「弟呼ぶからいいよ」

「ダメじゃ」と泉田先生が言った。「黙ってわしに送られとけ」

 

 マキちゃん、腹立つなぁ。

 3番目だって言われてんのに懲りない泉田先生が『黙ってわしに送られとけ』、とか言われて私だって『今夜はわしと帰るんじゃ』って言われたいな。それで、「いいですよ、泉田先生…」って私が恥ずかしそうに断って、でもまた泉田先生が『黙ってわしに送られとけ』って、そんな感じに…いいなぁそんな言い方、いいなぁ私がされたい…



 羨ましがっている私に気付いたマキちゃんが言った。

「イズミィ、今日はリッチィ送ってあげたら?ねぇハルカ先生。今日くらいいいよね?」

「ダメですよ!!ダメに決まってます」とハルちゃんが強く言う。「今日が一番ダメですって。こういう展開の時によくそんな心無いこと言えますね?」

 …送られたいなぁ泉田先生に…でもそんなほどこしマキちゃんに受けたくない。

「そんなのマキちゃんが決める事じゃないから」私はマキちゃんに冷たく言った。



 全く、ちょっと泉田先生に好かれてると思ってムカつく。

「泉田先生はマキちゃんを送るって言ってるでしょ?マキちゃん余計な事言ってないで素直に送られとけばいいじゃん。何マキちゃんが指図してんの?泉田先生にも失礼だし、私にも失礼なの!」

「そうなの?でもそんなのどうだっていいじゃん」マキちゃんが私の顔を覗き込む。「リッチィ送られたがってるっぽいけど?」

そりゃ送られたいよ!

「うるさいマキちゃん」私はさらに冷たく言った。「マキちゃん嫌い」

マキちゃんは嬉しそうに笑った。

「ダメだからね」私はことさら厳しい顔をして見せる。「そんな風にいつもと変わんない感じで言っても、私今マキちゃんの事すごい嫌いだからね!」

「なかなかさ、」とマキちゃんはハルちゃんに言う。「こういう事言ってくれる女友達できないよね。だから私リッチィの事大好き」



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