それぞれの愛しさ 2
大打撃だ。胸にど~~~~んと来た。
ハルちゃんが言ってくれた事にもドキンと胸が揺れたが、その後の泉田先生の、マキちゃん宛ての告白の方が揺れが大きい。私に言われたわけでもないのに。
だって、泉田先生がそんな事言うとは思わなかったから。
…打撃とは思ったけれど、ショック、というわけじゃなくて、嬉しさとかせつなさとか寂しさが一緒になった衝撃だ。
泉田先生はマキちゃんの事が大好きで、マキちゃんを愛しいと思っている。その気持ちをはっきり感じた。だから寂しいけど、泉田先生を好きになって良かった。私間違ってなかったな。カッコいいわ、マジかっこいい泉田先生、私の選んだ人に間違いはなかっ…
「信じらんねぇ!」ハルちゃんが呆れたという声を出す。「今まずオレが言いましたよね?」
ハルちゃんはマキちゃんと泉田先生に確認を取る。
「リツの事どんな感じで好きかって。オレがまず言って、それパクる感じで泉田先生が言ってんのに…なのになんでリツ、泉田先生のセリフの方でぽぉっとなってんの?意味わかんねぇ。泉田先生はリツの事を言ってんじゃないんだよ?リツ、わかってる?リツの事じゃなくて、牧先生の事言ってんだからね?」
「わかってるよ!」酷いな、そんなに念押ししなくていいのに。
「ごめん、ありがとう。ちゃんとハルちゃんにもありがとうって思ってるよ、私の事そんな風に言ってくれて」
「付け足すように言うからな~~」
「…牧」と泉田先生が静かに言う。「メグ」
メグ!?
今、泉田先生がマキちゃんの事、メグって呼んだ!
「メグ、わしと付き合おう。せぇで結婚しよう」
ぎゃ~~~!!
ここでか。ここでプロポーズするか泉田先生!
私の目の前で私の友達に。
マキちゃん、何て答えるんだろう。何でこんな事になってるんだろう。私は丼を前になんでこんなところにいるんだろう。マキちゃんをじっと見つめてしまう。
「見つめないでよリッチィ」マキちゃんは私を見ずに言う。
それから泉田先生に言った。「イズミィ、…もう何回目?」
へ?何回目?
もう何回かプロポーズしてるって事?
ど~~~ん!!
もっと衝撃来た。
私は私の友達にポロポーズしてた人に告って泣いたって事?
「リツ?」ハルちゃんが優しく私を呼ぶ。「大丈夫?」
心配そうには言ってはくれたが、でもその顔は思い切り笑っていて、さっきのハルちゃんの、私を想って言ってくれた言葉にありがとうを言った私はいったい何だったんだろう。本当の本当に、この人は私の事が好きなんだろうかと、また振り出しに戻る感じだ。
「牧先生は?」ハルちゃんが聞いた。「泉田先生の事を本当のところはどう思ってるんですか?」
「ハルちゃん!」なんでそんな深追いをする。「そんな…もう…」
もういいんじゃないかな、私の前でもうこれ以上…
「私?」マキちゃんが聞き返す。「ハルカ先生は私よりリッチィに聞いたら?『本当はオレの事どう思ってんの?』って」
マキちゃんいじわるだな…
「聞くのは怖いですねぇ」とハルちゃんが言う。「聞きたいけど。聞きたくないっていうか…」
帰れば良かったんだよね私。でも帰らなかった。それで私は今ここにいるのだ。
結局ハルちゃんは笑いながらこう言った。「でもリツがどう思おうが関係ないなと思います」
へ?
「何それ?」と言ったのはマキちゃんだ。「リッチィが嫌がっても無理矢理ヤっちゃおうみたいな…」
「…何言ってんのマキちゃん」怖いわ。
「そうじゃメグ」と泉田先生も言う。
もうずっと、マキちゃんを『メグ』って呼んでいくつもりなんだな?
「いくらなんでも言い過ぎじゃ。楠木はそんな事は思わんし絶対にせん」
「いや、全く思わないわけじゃないんですけど…いやずっと、どう思われてんかなって思ってたんです。さっきも言ったんですけど、オレの事忘れてたり、忘れてないとは思ったけど、たいした思い出としては残ってなかったり、そんなの嫌だなって、リツと離れてからリツの事はっきり意識しはじめてからずっとそう思ってたんです。どれくらいリツはオレの事思い出してくれてるんだろう、とか、どんな感じで思い出してるんだろう、とか。女の子同士の友達じゃないし、オレは1コ下だし。オレの事そうは思い出してもないだろうって、そう思ったら手紙出すとか電話するのも出来なかったから。急に会いに行く前もリツの中のオレの記憶が本当にたいしたもんじゃなくて、アレ?みたいに思われたら怖いって。でも会って、『あ、やっぱリツだ』って思った瞬間に、そんなのどうでもいいんだって思いました。実際リツは前の彼氏の事も引きずってたし、突然訪ねてアピったオレの事、超気持ち悪がるし、泉田先生の事が好きだったけど、またこうやって今一緒にいて、だから、それがもうすでにオレには良い事なんだなって思います。オレが嬉しいからそれでもういいやみたいな気になって。自分本位ですけど、でもリツもオレといるのがいいと思うんですけどね…言っててすごく恥ずかしいですけど」
「すごいねぇ。それ聞いてどうなの?リッチィ」
そんな事をこの私が言ってもらえるなんて嬉しいと思う。恥ずかしいし。けど…
「マキちゃん私の話にすり替えて、自分は答えてない」
「私の事はどうでもいいような気がするけど」とマキちゃん。
「どうでも良くないよ」食い下がる私だ。
どうでも良くない。だって腹立つ。私が告ったばっかりの人が目の前でプロポーズしてんだから。
「どうでもいいとか酷過ぎる」と私は怒る。「泉田先生が!…好きって言ってくれてんのに」
本当にものすごく腹が立って来た。
「ちょっ…リツ。聞いてた?今のオレのすげぇ、泉田先生のプロポーズにも負けない感じの…」
「マキちゃん、私が泉田先生を好きだったのずっと知ってたじゃん!」
普通の私ならとうていこんな事は言わない。マキちゃんだけでなく、ハルちゃんも、当の泉田先生もいる前でも言ってしまったのは、マキちゃんの放漫さに我慢が出来なかったからだ。
「知ってて普通に応援してくれたくせに!」
『結婚しよう』まで言われてやがった。信じられん裏切り行為だ。




