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プロローグ

 夢から覚めてもまだ全身が強張こわばっている。

 ヘッドフォンを外してベッドから体をゆっくりと起こす。体中がじっとりと汗ばんでいるのが分かった。

 チサキはそのまま頭を振り、目頭をぎゅっと摘む。

 恐怖がまだ体の中から抜けていない。手が小刻みに震えている。

 いくら潜入してもアレに対抗する術すら見つからない。

「ん……んん」

 隣のベッドで眠っていた少女の指がピクリと動く。目が覚めたようだ。

 彼女も同じくヘッドフォンをしたまま眠っていた。

 すぐにヘッドフォンを外すと、くりっとした大きな瞳がすぐにチサキの姿を探す。

「どうだった?」

 少女の問いかけに、チサキは苦笑いを浮かべた。

「今回も進展なしだった」

 ごめんと続けたチサキの言葉に少女は黙ったまま首を振って否定した。

 お兄ちゃんのせいじゃない。

「第五層から急激にガーディアンたちの抵抗が激しくなるな」

 白衣姿の父が、二台あるパソコンのモニターを見ながら言った。

「ごめんなさい。私のせいで」

 少女は申し訳なさそうに呟いた。

 唇を噛む。自分じゃどうする事もできないのがこんなにも悔しい事だなんて。

「杏のせいじゃないよ。それに、もう少しで攻略できそうな感じはあるんだ。まああせらずやるよ」

 チサキはポンと杏里の頭の上に手を置き、髪の毛を優しく撫でた。

 髪を撫でられながら、杏里は小さく頷く。

「しかし、さすがにチサキ一人じゃ荷が重くなってきたな。早いところバディを見つけないと」

 父親の言葉に杏里は強い嫌悪感を抱いた。

 お兄ちゃん以外に自分の頭の中をかき回されるのは、まっぴらごめんだ。

 でも、このままでは、その兄が危険な事も分かる。

 その危険なときに自分は何もできない。

 ジレンマで無性にイラつく。

 杏里はすぐにベッドから起き上がると、すばやく衣類を整えて、

「明日の準備をしなくちゃ。お父さん、今日のデータ、早めに分析しておいてね」

 足早に部屋を出て行った。

 思わずきつい言い方になっちゃった。むきになったってしょうがないのに。

 すぐにシャワーを浴びに行った。

 泣き顔は誰にも見せたくなかった。


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