表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/16

高まる想い

 あれ以来、博章からの連絡がなかなか来ない。


 やっぱりほんの気紛れってやつ? 期待したあたしがアホだったか――。


 と思っていた夜、メールが来た。


『連絡が遅くなってすまない。明日の8時頃、コアタイムビルまで来られるかな? 大丈夫そうなら連絡くれると嬉しいんだけど』


 明日……。

 千暎は直ぐに了解メールを返信した。


 翌日の夜、千暎がビルに着き、博章にメールを入れる。


『そのビルの脇の細い道沿いを通り抜けると、3階建てのマンションがあるから、3階の一番奥の部屋に来て』


 千暎が指示通りにたどり着く。


 なに? ここ? でかい! まさか博章さん家? でも表札もなければマンションネームらしきものも掲げられてない。不思議な建物だ。


 インターホンを押す。


 ――カチャッ。


「迷わなかったかい?」博章が迎え出る。


「ええ……。でも、ここって一体なに?」


「まあ入りなさい。靴のままでいいから」


 千暎が部屋へ入ると、博章は自分のバックを持ち、千暎の手を取ると「黙って僕について来て」と奥のドアを開け、廊下に出た。



 どうなってるの? あたしはどこ行くの? 千暎は不安になりながらも、博章に従った。

 すると、そこはコアタイムビルに繋がっていて、通常の客室は6階までなのだが、博章が向かったのは8階だった。そこはフロントからではエレベーターが行かないフロアだった。


 博章さんって何者? 千暎はなんだか恐怖さえ感じるほどだった。


【808】のプレートが貼られた部屋に入る。正面が大きなガラス窓。左側にテーブルとソファ。奥のドアの先には大きなベッドが置かれ、手前がバスルーム。広々としている一室だった。


「歩かせて悪かったね。ここは僕が契約している部屋だから、いつでも空いてるんだよ」 


「契約? 博章さんって、副業でもしてるの?」


「してるわけないよ。そんな時間ないし」


「でも……。秘密の場所が凄すぎない?」


「僕はちょっとお金を持ってるだけだよ。でも、信用してる()にしか教えない。口外されたら、欲深い連中が群がるからね」


「あたしを信用していいの? スパイだったらどうする?」


「スパイ? 誰の? 君が他言したら、僕の恐さを知ることになるよ?」


「ひ、博章さん? あなたは悪い人なの?」


「秘密を守らなければの話だよ。僕は千暎が好きだから、君との関係を誰にも知られたくないんだよ。わかるだろう?」


 博章は千暎の唇をうばいながら、優しく抱きしめた。


 重なる2つの身体は、何度もかたちを変化させて行く。熱い時間が流れた。


「博章さんの胸も腕も腹筋も、ほんと素敵……。マッチョじゃない逞しさが好き。ずっと抱かれていたい……」


「僕は学生の頃ボクシングをやってたんだ。だから身体にはちょっと自信があるんだけど、さすがに加齢と共に、体力は落ちたね」と言って笑った。


「そう? 体力落ちてる感じなんて全くしないよ? どこが落ちてるのよ」


「千暎を見てると元気になるみたいだ」と笑った。


千暎はその笑顔にますます惹かれていく。

「博章さんの子供が欲しいな…」独り言のようにつぶやいた言葉に、博章が反応する。


「千暎……。君は何を言ってるのかわかってるのか? 冗談は止めてくれ! そんな大事な事、簡単に口にするもんじゃない!」


 博章は本気で怒っていた。


「あたしは本気だよ。博章さんには子供いないでしょ? 欲しくないの?」


「僕達はもう諦めてるんだ。だから軽々しく子供を産みたいとか言わないでくれ……」


 いつも堂堂としている博章が、悲しそうな顔を見せた。


「……ごめんなさい」千暎は博章の広い背中に抱きついた。


「もう……言わない。でも……、それだけ博章さんを好きでいるって気持ちだけは、わかって欲しい……」


「わかってるよ。千暎が嘘つく悪い()だなんて思ってないから……。だけど、好きな気持ちだけじゃ、どうにもならない事だってあるんだ!」


「う、ん……。ごめんなさい」


 博章は千暎の頭を撫でると、ギュッと抱きしめた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ