あさみと史人
あさみは1ヶ月振りに史人と会っていた。
「ごめんな~、なかなか時間がとれなくて」
「うううん。史人くんはお仕事忙しいんだもの。仕方無いよ。ちゃんとメールのお返事くれるし、凄く嬉しいよ。遠距離恋愛してると思えば平気だよ」
「平気……なのか? それはそれでちょっと寂しいな」と笑う。
「俺はあさみちゃんと会う時は、長い時間会っていたいんだ。空いた時間に会うんじゃなくて、ゆっくり過ごしたいっていうか……。変なのかな? 俺」
「ん~。どうなんだろうね~。恋人同士なら毎日でも会いたいって思うらしいし。でも、私は毎日会えなくても、全然平気。私も変なのかな?」と笑いながら「でも〜、私達って、まだ恋人同士って感じでもないよね?」
「えっ! じゃあ俺達の関係は何?」
「何かな? ……変人同志? 同志は志すの方ね」
「変人同志……。なるほど……」
「納得しないでよ!」あさみが無邪気に笑う。
「じゃあさ、今日を記念日にしない? 変人が恋人に変わる日にさ。いいかな?」
「ん? どういう事?」
「どういうって……。実は部屋を取ってるんだ」と言って、上を指さす。
「えっ? あ…………そ、そうなんだ……」
「まだダメかな?」
「史人くんがそうしたいなら……」
「俺はあさみちゃんの気持ちを聞いたんだよ? イヤなら無理強いはしないから」
「ごめん。私……よくわかんないの。でもイヤじゃない事は確かだよ」
「イヤじゃ……ない…か……。じゃあ、いい?」
「う、うん……」
ふたりは部屋へと向かう。エレベーターに乗ると、史人が手を握ってきた。
ドキッ! 史人の手は温かい。
部屋に入ると、あさみがぐるっと見回す。
ここが、よくテレビで見る部屋の感じなんだ~。意外に広いんだな~
などと思っていると、史人が後ろから抱きしめてきた。
「あ……、ふ、史人くん……。待って。私……史人くんに話さなきゃいけない事が……あ……あるの……」
「何? 今じゃなきゃダメな話?」
「い、今だからこそ言わなきゃいけない事…だと思うんだ…」
史人は、一息おいて椅子に座りあさみに顔を向けた。
「あ……あのね、私、男性経験ゼロなんだ。始めてなの。だから、その…すごく恥ずかしいし、どうしていいのかわからないし、期待に応えられなかったらどうしようって思ったり、ちょっと怖いっていうか…」
史人は再びあさみを抱き寄せて、あさみの頭をそっと撫でながら言った。
「大丈夫。俺を信じて任せて欲しい」
あさみの鼓動が段々早くなる。史人はあさみの身体の震えを感じながら、ゆっくりと唇を重ねた。
ふたりはこの日から恋人となった。
史人はあさみと呼び、あさみは恥ずかしいからと言って、今までどうり史人くんと呼んでいい?
とはにかんだ。
しかし、あさみは身体の痛みだけが残り、快感というものとは程遠いと感じていたのだった。




