pre-蓮華の花はお好きですか?
『思い込みは当たる場合もあれば、外れる場合もある。その思いが肯定であれ否定であれ』
「なぁ……」
大学内のカフェコーナー。白と黒を基調としたシックな雰囲気だが、メインキャンパスから駅と逆方向にあるため使用人数は決して多くはない。
そんなどこか活気に欠けた店内で、二人の男が顔を向き合わせて話している。円い机には等間隔で椅子が四つ設置されており、彼らはそれぞれが自分用と荷物用で埋めていた。
「今日が何の日だかわかるか?」
村野洋平は普段よりも真剣な顔をして正面の相手に話しかけた。標準よりも心なしか背が低く、少年のような顔をしているが、彼は正面の青年と同様に大学二年生だ。茶髪で前髪をガッと挙げているのが印象的な大学二年生。
彼は机にひじを乗せて、前のめりになって尋ねている。質問のための問いかけというよりは、話の前置きのような印象があった。事実、何も返事をよこさない植田晴を待つことなく、彼は厳かに口を開いた。
「最重要行事といってもいい。今日はそれくらい特別な日だということは、わかっているな?」
これから死の危険を伴った大仕事に出向くかのような、熱く冷たい感情が伝わる語り口。それを聞かされている晴のほうは一向に口を開かない。口だけならまだしも、晴はそもそも目すら開いていなかった。
周囲から見ればこの温度差は奇妙であったろうが、村野洋平はそれを気にすることなく、これから語ることの重大性を示唆するような表情をしていた。
「俺の予測によると、俺は七つ。お前は……一つか、悪ければ零だな」
何を根拠に語っているのか、いやそもそも何を語っているのか。植田晴はその話題が何なのかわかっていたが、だからこそなおさら返事をする気になれなかった。椅子の背もたれに寄りかかったまま、ゆっくり目を開けて天井を見ていた。
その表情を、なぜか洋平は落胆ととったらしく、慰めるような、やさしい微笑を相手に向けた。状況によっては絵になる笑顔だったかもしれない。
「この予測はなにも予知じゃないんだから、もしかしたら想定外の追加がお前にもあるかもしれないけどな」
今日一日、洋平はずっとこんな様子だ。学部学科、選択科目まで一致している晴はかれこれ四時間近くこんな洋平につき合わされていた。晴はそれに怒りを感じるというよりは、無関心無干渉を決め込んでいるようだった。
「俺のシュミレートではすでに三つ受け取っているはずだったんだけどな。まぁ、現実は思考道理にはいかないってことか」
たとえば、授業が終わってもしばらく教室内に待機すること。たとえば、集団から少し外れて、相手が話しかけて来やすいように位置取ること。こんな数々の努力を洋平は行っていた。そしてその結果は、いまだ収穫零という現実。
だが彼は、村野洋平はそんなことでへこたれる青年ではなかった。今年こそは、という思いが彼に諦めを許さないのかもしれない。
「なぁ…… お前はどう思う。俺、何個かな?」
晴はいい加減無視し続けるのにも限界だった。こんな夢見がちな友人にそろそろ現実を教えたほうが良いとも思っていた。組んでいた腕をほどいて、両手を上に挙げて背伸びをした。それから背もたれを利用してコキコキと背骨を鳴らす。
「言っていいのか?」
洋平とは対照的に昨日の夕飯のメニューでも語るような口ぶり。洋平は神妙な面持ちでうなずいた。晴は目にかかっていた前髪を横にかいた。全体的に長髪で、クルクルとした天然パーマの青年はこれから起こすであろう友人のリアクションに先にため息を吐いておいた。
「俺もお前もゼロ、だ」
当たり前のことを当たり前のように告げる晴。洋平は彼の言葉が理解できなかったかのように固まっていた。「な、なんて?」と震える声で尋ねている。
ため息、晴はもう一度同じことを繰り返す前に一度コーヒーを飲んだ。ミルクが少し入ったコーヒーはまろやかに舌を流れていった。コツン、とカップを置いて正面の友人へ目を。相変わらずワナワナと震えていたが、そんな洋平に同情も共感もしなかった。あるのはただ、馬鹿らしい、という思いのみ。
「だからさぁ……」
いい加減この馬鹿な友人の相手をするのも疲れていた。晴はすうっと息を深く吸い込み、大声で現実を伝えることにした。
「俺らがバレンタインチョコなんてもらえるわけがねぇんだよ!」
「な…… なんだとぉ! お前はともかく、俺がぁ!?」
勢いよく態上がった洋平は驚愕の表情。それはまるでテストの成績がよかったにもかかわらず大学留年を告げられたような驚きだった。ありえないと、その顔に書いてあった。
「いや、ゼロは言い過ぎたかな。でもな、まずハッキリといえることは、本命ってやつはゼロだ」
「ノオォォ!!」
そんなことは聞きたくないとばかりに耳をふさいで顔を左右に振る洋平。晴からしてみれば、どうしてもらえると思っていたのかが不思議なのだが、正面の親友の根拠のない希望は何もコレがはじめてではなかったので、ただため息をするだけだった。
「それに確かな根拠はあるのか!?」
「ある」即答する晴。「いいか。バレンタインでチョコレートをくれる相手がいるとするならな、そいつは今日より前から頻繁にアプローチをかけてくるんだよ。よく知りもしない相手にチョコレートなんて渡すはずがないだろう。マンガの読みすぎだ」
正論を述べる晴。洋平は「違う違うそんな単純な判断じゃダメだ」と叫んでいるが、そちらのほうこそ根拠がない妄想だった。
「落ち着け。悪いお知らせはコレで終わりだ。ここからはハッピーニュースをお伝えするから」
利用人数が少ないとはいえ、さすがに彼ら二人のみではなかった。ほかにも幾人か、こちらに怪訝な視線を送っている客もいたので、晴はとりあえず友人を落ち着かせる。客の中の一人、小柄な少女──といっても一年生だろうが──が晴と目が合うとすぐにそらした。晴は迷惑をかけていることを少しだけ申し訳なく感じた。
「え? マジか! 聞く聞く」コロリと態度を変える洋平。それは、あの耳ふさぎが外音を防ぐ効果は皆無だったことの裏づけとなった。「いい話だろ? 希望あるストーリーだろ?」
「とりあえず落ち着け。いいか、今後少しでも余計な大声をだしたらこのハッピーニュースは終了だからな」そう念を押して晴は彼を椅子に座らせた。
「まずもらえる可能性のある女性を挙げていくことが順当だ。希望的観測はしないで、現実をしっかりと見据えて」
晴自身、洋平ほど浮かれているわけではなかったが、決してチョコレートがほしくなかったわけではない。あくまで現実を見据えて、そして本命のチョコレートあきらめていただけだった。
「そうかっ! 現実に目を向けて…… 候補は十三人だ!」
「違う、お前は…… 二つか、よくて四つだ」
寒い現実を告げる晴。洋平はガックリと肩を落としたが、その数字がゼロでないことにすぐに気づいた。
「だれだれ? だれがいるんだっ!?」
その音量は晴からすれば十分に余計な大声だったが、こんなところで話を切ればさらに騒ぎ出すのは目に見えていたので話を続ける。
「まずは部長」
「蕾さんか! まぁ、義理だろうがありえなくはないな」
「つぎに牡丹ちゃん」
「妹か! まぁ、義理だろうがありえなくはないな」
「そしてお隣さん」
「珊瑚さんか! まぁ、余りものだろうがありえなくはないな」
「最後は、何かこの前言ってたバイトの後輩」
「森下柊な! まぁ、付き合いだろうが可能性はゼロじゃないな」
「以上。ハッピーニュースでした」両手をパチンとたたいて話をしめた。前のめりな友人は「ふむふむ」とうなずいていた。満足してはいないようだが、不満でもない様子。
「で、お前は?」
「あ?」問いの意図がわからないらしく、怪訝な表情をする晴。
「お前自身のウレピーニュースは?」
「あぁそれか」少し上を向いて、そのまま首を固定して考える。「うーん、部長の一つか…… 牡丹ちゃんが優しかったら二つかな?」
「お前、意外と鈍いな……」
「何が?」
「いや…… ムカつくから教えてやらねー」舌を出す洋平。からかうような不思議がるような、感情を判別しにくい表情で晴を見る。
「お前って、自分のことには客観的にならないのな」鼻で息を吐く洋平。
「全部主観ってよりはましだろ」ニヤッと笑う晴。
「かもな」ニコッと微笑む洋平。
「あ、もうこんな時間か!」
勢いよく立ち上がってリュックを背負う洋平。赤生地に黒のカミナリラインが入ったそれはなかなか悪くないセンスだった。
「バイト?」自分の腕時計で現在時刻を確かめる晴三時三十五分。この店に三十分近くいたらしい。それだけの時間こんなしょうもないことを語り合っていた自分にため息。
「あぁ。その前にMOGで部長から第一のチョコをいただくけどな」
二人はMOGという名称のサークルに参加していた。その部長が義理チョコ候補の白石蕾。おそらく彼女は部員全員にお得意の手作りチョコレートを振舞うことだろう。
「じゃ、俺は急ぐから先に行くぜ。どうせ俺の家にいくんだったら、珊瑚さんに話しかけてみろよ」
首をコキコキとまわして準備体操を始める洋平。彼は大学から徒歩五分のアパートに下宿していた。家に帰るのも面倒なので晴は夕食を作ることを条件によく居候させてもらっている。
「? まぁいいけど」その理由もわからないまま、適当に相槌を打つ晴。
「じゃ、俺はダッシュで行くぜ」レジでコーヒー代を払って二人外に出る。今日はもう晴れそうになかった。
「あ、その前に…… お前にウレピーニュースだ」ジャンプして体を温める洋平。「お前な、たぶん三つはもらえるぜ」
晴の返事を待たずに洋平はトップスピードで走り出した。後ろから見ても無駄にきれいなフォームだった。
「はぁ…… そういうのを希望的観測って言うんだよ」
と、なんとなくつぶやいてから、『自分のことには客観的にならないのな』という友人の言葉を思い出して、一度あくびをした。
白石蕾はMOG部室でゲームをしていた。部室は二十人ほどならストレスなく過ごせる広さ。少し大きめの共同デスクが五つ等間隔で設置されていて、全体的に物が散らかっていない空間だ。パソコンが各テーブルに一つ備えられており、そのほかにも自主的にノートパソコンを持参するものもいるので、部員十名にとっては十分快適な環境だった。
物書き、お絵かき、ゲーム制作の頭文字をとったMOG。もちろんプレイゲームは彼女のサークルが制作したものだった。シナリオは植田晴、イラストは村野洋平、音楽が彼女蕾でその他プログラムは蕾の隣で画面を除いている山吹準だった。無人島に男女八人が流されて、彼らが協力や対立をして生き残っていくというストーリー。一ヶ月前に完成したばかりのこれは、蕾の一番のお気に入り作品だった。主に自分の音楽、そしてシナリオが気に入っていた。
「あいつら、おそいわねぇ」マウスをクリックしながらつぶやく蕾。頬杖をしている手に垂れるきれいな黒髪、そして手でつぶされている大人びた顔に準は一瞬見とれてから、あわてて返事をする。
「そ、そうですね。まったく、蕾さんの手作りチョコレートを差し置いて、いったいどこをほっつき歩いているんだか」
もしももう少しキリッとした表情が出来れば美男子と称されていたかもしれない青年、青年というより少年がふさわしい山吹準は「まったく」と無意味に繰り返した。
部室内には現在八名がいた。男子四名に女子四名、蕾と準以外は皆それぞれ何かしらの作業をしていた。正確に言えば、蕾もゲームをプレイしていたので、何もしていないのは準一人だったが。
集合時間は午後三時十五分。もう既に二十分ほど経過していた。いつもどおりの遅刻二人組み以外はもう全員待機していた。本日はバレンタインデー、部長の白石蕾は毎年サークルメンバーに手作りチョコレートを用意しいていたので、いまだに来ない二人を除いた男子生徒はいつもより三十分早く入室していた。
「チョコレートねぇ。もし、今年は一人にしか渡さないって言ったらどうする?」
いたずらな表情で一学年下の後輩に問いかける四年生。準は真っ赤になってあわあわしていた。
「その一人ってもしかして……」
「誰だと思う? いってみて?」かわいく微笑む蕾。準の鼓動は高まるばかりだ。
「ぼ、ぼく…… なわけないですよね?」恐る恐る尋ねる準。その表情にはかすかな期待も隠れていた。
蕾はにっこりと魅力的な笑み
「とーぜん。ち・が・う・わ・よ」その表情自体はとても魅力的だったが、返ってきたあまりうれしくない答えにガックリとうなだれる準。
「ま、まぁ…… そうですよね。じゃあ、その一人って誰なんですか?」一通りの落胆を終えてから、今度は確かめなければならない一大重要事項を問いただす準。室内の全メンバーが耳をそばだてていた。
「えっとねぇ……」わざとゆっくりとしゃべってじらす蕾。「な・い・しょ」
ガクッ。七人のMOGメンバーが同じリアクションを取った。
「それに、みんなの分もちゃんと作ってきたしね」
料理上手な蕾はニッコリとかわいらしく笑った。流れる滑らかな黒髪は、彼女の内面に劣らず魅力的だった。
「あ、あのっ!」
洋平と別れて三分。自分もそろそろMOGへ行こうかと思い、本日の集合時間を大幅に遅刻していることに気づいた晴は突然後ろから呼びかけられた。
「ん?」相手は見知らぬ少女だった。ボブカットの小柄な少女。そこまで見てから、彼女はさっきカフェ内で目が会った少女であることを思い出した。
何だろう、と少し考える晴。しかしいくら考えてもその意図は推測できなかった。解らないことは解らない。晴はあきらめて、少女の言葉を待つことにした。
「あ、と、突然声をかけてしまってすみません。私は、一年の五十嵐つつじと申しますが……」
名前を聞いても何も思い出さない。晴は一応、「こんにちは」といっておいた。
「こんにちは、です」ペコリと手を前にそろえてのお辞儀。「えと、えと……」
「干支?」頭を傾けて聞き返す。「干支ってねーうしとらうー、のやつ?」
「あわわっ! 違いますっ!!」あわてて強く否定するつつじ。小さな手を忙しく動かして何かを伝えようとしているが、晴にはただのちびっ子にしか見えなかった。
「えっとです。えっとですね…… わ、私は……」言葉を選びながらたどたどしい説明を始める。「私は、以前あなたにそのっ…… 駅からここへの道を教えていただいたものでして…… 今日はそのお礼を兼ねてちょっとした贈り物を受け取っていただきたく……」
「道? そんなことあったような、なかったような……」まったく記憶になかったが、目の前でそうと言っている少女がいる以上は事実なのかもしれない、とあいまいにぼかす晴。
「えと、三百日前の晴の日です……」
「三百? そりゃまただいぶ前のことだな。そのお礼?」
こくり、とうなずく少女。よく見ると、耳まで真っ赤に染まっており、今にも倒れてしまいそうだった。
「そうですっ! だから、これっ!」トスン、と晴の胸に小さな紙袋を押し付けるとそのまま走り去ってしまった。見かけによらず足は速かった。
「……一個目だ。……」
思いがけないこともあるものなんだなぁ、と少し驚く晴。とりあえず現状を整理しようと目をつむってみることにした。
だが、そんなときに限って予想外は続くものである。目をつむって突っ立っている晴の腰あたりに細い人差し指がぶつかった。
「え?」反射的に目を開いて振り向いた。
そこには…… 想定外も想定外、あの有名人が腕を組んで仁王立ちしていた。肩に届くほどのまぶしい金髪。化粧っ気がない美貌。黒と白を基調とした、だがあのシックなカフェよりもずっとずっと派手なコートにパンツ。晴の目に狂いがなければ、彼女はあのスターだった。
「アタシの自己紹介は必要かしら?」堂々とした姿勢を崩さず、にらむ人物はなんと、あの春風蓮華だった。
「え、えっと……」突如現れた時の人を指差して、「メロディガールの…… 春風、蓮華……」
と、何の前触れもなくボディに打撃を打ち込まれた。「うっ……」女の子の力とはいえ、準備していなかっただけになかなか効いた。
「呼び捨てとか、アタシのほうが年上なんだけど」ジロリとにらむメロディガールのボーカル。何度見ても彼女は今話題のバンドのボーカリストだった。
「まぁいいわ、アンタを殴るためにこんなところまできたわけじゃないから」突然左手を動かす蓮華。晴はその動作にとっさに身を構えたが第二撃は来なかった。それは晴の目の前で三の形を取って静止した。
「いまからアンタが疑問に思っていそうなこと三つに答えるわ。大丈夫、アタシ頭良いから、そんなに的外れなことはいわないわ」晴の反応を待つこともなく、左手を一度グーにしてから、ピッと一本指を立てた。
「一、アタシがどうしてこんなにかわいらしいのか。それは生まれつきね」どうどうと言ってのけるスター。
「二、アタシがどうしてここにいるのか。それは今日が二月十四日だからね」彼女の中では筋の通る説明らしい。
「三、アタシが何を望んでいるか。それは、その紙袋ね」ニコッと悪い笑顔で宣言する蓮華。
「その紙袋、いいえ、そのチョコレート。アタシによこしなさい」手を差し出す有名人。拒否というリアクションは想定していないらしい。
「コレあげるから」肩にかけていたピンクのバッグから高級そうな包み紙を取り出した。
「アンタの一生。いくらなら売る?」
何がどうなっているのか、晴はあの春風蓮華にわけのわからない質問を投げつけられていた。空は、もうすぐ雨が降りそうだった。晴はため息すら出来なかった。
「先輩」森下柊はバイトが終わり着替えに行こうとした村野洋平に話しかけた。「ちょっと時間ありますか?」
「え?」その珍しい現象事態に一度驚きの声を出してから「何で?」と彼女の問いに問いを返した。
小柄で生意気なバイトの後輩。ポニーテールが特徴の少女は表情を変えない。
「ちょっと、時間ありますか?」柊は同じことを繰り返した。
洋平は仕方なく時計を見て、現在が八時十三分であることを確認してから「まぁあるけど」と答えた。
「じゃあ、メロス前の公園で待っててください」後輩の高校二年生はそれだけ言うと先に女性用着替え室に入ってしまった。その表情からは何も読み取れなかった。いつものようなムカつく言葉がなかったのは、洋平にとって意外なことだった。
「なんなんだ?」ひとり声に出してから男子用着替え室に入った。
「これ、どうぞ」
彼らのバイト先のステーキ店メロス。その正面にある何の味気もない公園のブランコに座って待つこと十分。少女は「ブランコって、子供ですね」と余計なことを言ってから小さな包み紙を洋平によこした。
「これって、もしかして……」洋平はまさかと思っていた予想を口にする。「イタズラ?」
「はぁ……」あきれた風に息を吐いてから辛らつな一言。「先輩、本当に馬鹿だったんですね。そんなわけないでしょ。ホンモノですよ」
後輩の生意気な一言よりも、その一言の内容のほうに驚いた。「え、え、…… これって…… ギリ、だったり?」
「そんなこと、する人間に見えますか?」
生意気な笑みを浮かべ、「お返しは三十倍返しですからね」とだけ言って帰ってしまった。そしてちょうど空から雨が降ってきた。
「これは、…… まさかの二つ目だな」
可能性としては見ていたが、それをシュミレートしたからこそありえないと思っていたこと。生意気な後輩のチョコレートがどんなものなのか、少し気になる洋平だった。
『思い込みは当たる場合もあれば、外れる場合もある。その思いが肯定であれ否定であれ』
最後まで読んでいただきありがとうございます。今回は、今後連載小説のほうでかきたいと思っている「蓮華の花はお好きですか?」の第ゼロ話です。
感想などいただけると、参考になります。最後まで読んでいただきありがとうございました。




