過去
表面は軽く焦げ目が入り、中心に行くにつれて肉本来の綺麗なピンク色になっている。
ソースは醤油ベースにガーリックで香ばしい香りがついており、白飯との親和性は抜群だ。
薬味に刻み葱の緑色、そして肉達の中心にはとろとろの温泉卵。
そう、これが我が月高が誇る限定30食のローストビーフ丼の全貌である。
「やばい…めっちゃ美味そう…これ本当に食べていいんだよな?
もう返せって言われても返さないからな?」
「…そんなこと言わない…どうぞ?」
紫織と共に受付を待つこと数分。
俺の目の前にはローストビーフ丼があった。
「では…いただきます」
「…いただきます」
二人揃って一口。
肉ってこんなに甘いもんだったんだな…
俺が今まで食べて来た肉とは一体…?
「…ふふっ……幸せそう…」
「あぁ…美味しいもの食べてる時が1番幸せだ…」
「…よかった」
ふと視線を向けるとうっすら微笑んだ紫織。
それを見た周りが少しざわついている様だが、今はそれどころでは無い。(断言)
丼に向き合わなければ…!
しばらく無言で食べ続け、気付いたら食べ切ってしまっていた。
「本当に美味しかった…ご馳走様でした!」
「…早いね」
「いやぁ…思わずがっついちまった…本当にありがとう」
「喜んでもらえて良かった…約束、守ってね」
「おう、荷物持ちでもボディーガードでも任せとけ」
特上券と引き換えにした、出かける時について行く約束の事だろう。
…正直この約束、俺が気を遣って受け取らない事を見越して提案してくれた奴なんだろうな…本当に呼ばれるかどうかも分からんぞ?
勿論呼ばれれば付き合わせていただくが、天野さん曰く相当のお金持ちらしいから、荷物持ちもボディーガードも家に居そうなんだよなぁ…
++++++++++++++++++++++++++++++
月高の昼休みは60分ある。
そのため、食事が終わってからも時間が余ることが多い。
寝不足の奴は昼寝してもよし、身体動かしたい奴は校庭で遊んでもよし、各自思い思いに過ごしている。
かく言う俺も、普段は奏太達と話して過ごすことが多い。
今日に関しては食堂で紫織と楽しくお喋り中であった。
ちなみに俺に今日声かけて来たのは、休み明けの初登校日だったからだそう。
……?今日木曜だよな…?
そう思い、より詳しく聞いたところ、登山に向かった金曜日の夜から昨日の朝まで全身筋肉痛で動けなかったそうだ。
もうちょい日頃から運動しようぜ…
本人もそう思っていた様で、今日から散歩を始めることにしたらしい。
閑話休題。
折角の機会だし、最近ちょっと気になっている事を聞いてみた。
「天野さんって中学の時どんな子だったの?」
「……晴人のえっち」
「…いやなんで⁉︎」
「…ちょこ、気が弱い…狙ってる…男みんな狼…」
「警戒心が強いのは結構だが、小説の読み過ぎだ…あと恋愛的な意味じゃ無い。ちょっとクラスで気になってな」
「…ふーん…晴人がそう言うなら…」
そう言って話し始めた紫織の話を要約すると、やはり中学時代も一人で小説を読んでいる事が多かった様だ。
紫織が同じクラスの時は散々振り回していた様だが…
「……どうして?」
「いや、ちょっとクラスで浮き気味な気がしてな…ちょい寂しそうに見えたから」
「…なるほど」
「けど今の話聞いて、割と望んでそうしてるのかもって気もして来たな…
ちょっと様子見かな…っておい!」
少し考えている俺を置き、ふらっと立ち去る紫織。
…なんか怒らせる様な事言ってしまったんだろうか?
考えてみたが全く分からん…可能性があるとしたら天野さんの話をした事…?
けど何故…?
やはり女心は秋の空だな、なんて考えつつ、そのまま食堂でスマホを弄って過ごすことにした。
すっきり天然水割りです。
次回更新は明後日になります。
よろしくお願いします。
気が向いたらフォローしてくれると喜びます。まかり間違って⭐︎なんか押してもらった日には泣いて喜びます。
最後まで読んでくれてありがとうございました!




