拉致の意図
4月某日。本日も快晴なり。
廊下の窓から差し込む陽の光が、春から初夏に変わりゆく季節を伝えているかの様だ。
さて、そろそろ現実逃避はやめて現実を見ようか…
4限目終了直後に教室に現れた金髪美少女によって拉致された俺は、今も廊下を引きずられる様に歩いていた。
「小山さーん?おーい?俺の声届いてる…?」
「…」
「くっ…俺の声を世界が否定しているとでも言うのか…」
「…」
うーん…厨二病キャラでもダメかー
先程から小山さんに呼びかけているのだが、一切反応を示さない。
最初は普通に声かけてたんだけど、あまりに反応なさすぎて、途中から色んなキャラになり切って見たが効果なし。
いや、正確には名前を呼ぶあたりで引っ張る力が強くなってるから反応あるっちゃあるんだが、全く意図が読めん。
少し面白いのがキャラによって腕を引く力が変わるところだ。
ちなみにさっきの厨二キャラが1番強く引っ張られた気がする。
「……んで」
「ん?」
「なんで《《小山さん》》なの?」
相変わらず俺の腕を引っ張り、かつ前を向いたままだが、ようやく返事してくれたか。
…ちょっと待て、これってもしかして卯月ちゃん(楢畑さん)と同じパターン?
でも月見山の時も小山さんって呼んでたよな…?
「あれ?月見山の時からそう呼んでなかったっけ?」
「…しおりは聞いてない」
…もしかして小山さんが起きてる時には呼んでなかった…のか?
正直ちょっと自信ないかも…
「…図書室では紫織って呼んでくれた…同士なら続けるべき」
「おっ…おう……それならそうするけど…」
「……」
「……」
「……」
改めて呼べと!そう言うことですかね⁉︎
「あー…紫織?」
「!!…なに?」
少し、いやかなり恥ずかしかったが話が進まないので意を決して名前呼びすると、凄い勢いで振り向いて来た。
ブンブン振られてる尻尾が幻視出来たんだが…
「これはどこに向かってるんだ?
と言うか急に来て拉致られたから驚いたんだが」
「食堂」
「昼飯食うってことだよな?
天野さんは声かけないで良かったの?」
「…?なんでちょこ?」
「幼馴染なんでしょ?誘うならそっちじゃないのかなって」
「…幼馴染だけどいつも一緒じゃない…いつもお昼、別々」
なるほど、なるほど…そこは理解できる。
俺も良く奏太とセット扱いされるが四六時中一緒にいるわけじゃないしな。
けど、急に俺が誘われた意味がわからん…
「…とにかく行く」
「へいへい…もう逃げないから捕まえてなくて大丈夫よ?」
と言うわけでようやく解放された俺は紫織と共に学食へ向かった。
一瞬このまま逃げたらどうなるんだろう、なんて考えが浮かんだが、万が一泣かれでもしたら俺の高校生活が終わるのですぐに振り払った。
++++++++++++++++++++++++++++++
そんなこんなでやって来ました食堂。
いつもの癖で券売機の列に並ぼうとしたところ、またも右腕が捕獲された。
…お嬢さん、その引き留め方ハマってるんですか?
そろそろ柔らかい感覚から意識を逸らすのも限界ですよ?
理性と本能の狭間で激闘を繰り広げている内に、受付の列に引っ張られていた。
「紫織さん?ここの食堂、受付前に券買わないといけないんですが…?」
「…知ってる」
「いや、それならあっちの列並ばないといけないのでは…?」
「…持ってる」
「俺は持ってないんだわ…ちょっと行ってくるから後で合流にしようか」
「晴人の分もある」
そう言って、気持ちドヤ顔に見えなくもない顔で懐から何やら豪華なカードを取り出す紫織。
よく見るとそこには"特上券"の文字が。
そういえばあなた学年主席でしたね…
俺がローストビーフ苦手だったらどうするつもりだったんだろう…なんて考えながら財布を開く。
「おいくら程お支払いすれば…?」
「お金、いらない。月見山のラーメンのお礼」
「…まじ?」
「まじ」
「いやでも流石に申し訳ないだろ…」
「…じゃあ今度出かける、ついて来て」
「わたくしめで良ければ幾らでもお供致しましょう」
「…うむ、くるしゅうない」
ということで、チャットアプリの連絡先を交換。
…なんか意図せずラーメンがローストビーフ丼に化けた。
持つべきものは天才の同士だね!
後で奏太に自慢してやろ!
すっきり天然水割りです。
次回更新は明日になります。
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