金策
月見山登山の翌日、この日は高校入学後初めての休日であった。
登山とは思いのほか体力・筋力共に使うもので、想定外の筋肉痛に苦しんでいる生徒も少なくないだろう。
あのマイペース極まりないお嬢様なんか特に…
そんな文字通りの休日の早朝、俺と奏太はいつものコースを走っていた。
いや、何で俺は休みの日に身体を休めずに走ってるんだ…
「体調崩さない限り毎日走ってるんだ。ここまでくるとむしろ習性だよね」
「毎朝走らずにはいられないってか。いやだろそんな習性」
「健康には絶対良いでしょ。今じゃ走らないと気持ち悪くて仕方ないよ」
「まぁ気持ちは分からんでもない」
奏太の言うように、体調不良の日以外は雨だろうが雪だろうが毎朝走っているせいで、今朝もいつもの時間に目覚めてしまった。
二度寝も一瞬頭を過ったが、なんだか勿体無い気がして気づいたらスポーツウェアを身に纏ってたんだよなぁ…
「ところで晴人、この後暇ならどっか遊びにでも行く?」
「いや、今日は《《アレ》》作らないと。もう在庫無くなりそうだし」
「あー…《《アレ》》ね。それなら仕方ないか」
「すまんな。また誘ってくれ」
「おっけー、またね」
という訳でその場で解散となった。
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突然だが、みなさんは学生の懐事情をご存知だろうか。
アルバイトをしていれば別だが、基本的に主な収入源は親からのお小遣いになる。
逆に出費を考えてみよう。
学食とはいえ日々の昼食、飲み物、友達との食事代に…って我ながら食べ物ばっかだな。
他にも交通費や趣味のお金(俺の場合は本や漫画、アニメの円盤やグッズ等々)と、まぁ多い。
何が言いたいかというと、収入源がないと破産する。
特に趣味にお金がかけられなくなるのが痛い。
という訳で、中学時代の俺はそれはもう真剣に考えた。
ーーどうすれば、金を稼げる?
考えに考えた末、思いついたのだ。
趣味とお金どっちも取れる妙案を…
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奏太の誘いを断った俺はランニングから帰って汗を流した後、部屋に篭っていた。
机の上には平ペンチや丸ペンチ、ニッパーなどの工具やメタルルーペ等を並べ、手元用のライトを灯す。
引き出しから様々なパーツを取り出し、今回はどのタイプ、どんなデザインにするか考え…ふと入学式の時の桜を思い出す。
そうだ、今回は桜をイメージしたデザインでいこう。
そうと決まればあとは想いのままに目の前のパーツを組み合わせて行くだけだ。
綺麗なピンク色をしたローズクウォーツの欠片を席座でしっかりと固定、シンプルなチェーンに通して手首より少し長めになる様に調整。
最後にメタルルーペでバリや金具の弛みがないか確認したらブレスレットの完成だ。
そう、俺が考えた金策とは、自作のアクセサリーをフリマサイトで販売することであった。
元々手先が器用だったこともあり、ちょっとしたものづくりは昔から結構好きだった。
今風に表現するとDIYってやつなんだろうな。
俺が中学生の頃、晴華がアクセサリーを欲しがったことがあった。
しかし中学生にとって市販品は当然高い。
欲しい!じゃあ買っちゃおう!
とはならない訳で、俺に作ってくれと無茶振りして来た訳だ。
ネットで情報を漁り、少ない小遣いを握りしめ、100均や手芸屋で道具を揃えて作ったさ。
…誕生日プレゼントにくれって言われたら断れないだろ。
出来に満足できず何度も作り直したりして、2ヶ月ほど掛かったが、まぁそこそこの満足いくブレスレットが出来上がった訳だ。
これがアクセサリー作りのきっかけ。
それからは他のアクセサリーも作ってみたくなり、自主的に色々作っていった。
最初は晴華がすごく喜んだ。
が、次第に完成品が溜まって行ってしまった。
そりゃそうだ、使う人は1人なのにどんどん作っていればそうなる。
その頃にちょうど、某フリマサイトが流行り出し、テレビのCMでよく流れていた。
それを観た瞬間に、これだ!と閃き、それから今まで自作アクセサリーの販売を続けている。
最近ではパワーストーンの小さな破片をまとめて買って、ワンポイントとして組み込んだりもできる様になって来た。
ーーできることが増えるのって楽しいな。
なんて考えつつ、午前中は販売用のアクセサリーを作って過ごした。
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昼休憩を挟んだ俺は、午後も引き続きアクセサリー作りに取り組んでいた。
しかし午前と違い、ルーペで丁寧に確認しながらの作業だ。
というのも、午後はちょっとお高い部品を使ってアクセサリーを作っているのだ。
販売用ではなく、《《あいつ》》へのプレゼントだからな…
1ヶ月後に迫ったある日に向けて、コツコツと作って来たアクセサリーの最終仕上げを進めて行った。
すっきり天然水割りです。
次回更新は明日になります。
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