階段
月見山最後の難関である超長距離の階段。
その階段にいざ挑もうと意気込む俺らを引き留める(物理)してきたのは、眠り姫こと小山 紫織嬢であった。
「であった。じゃねぇんだわ…頼むから離してくれ…」
「…嫌……絶対に」
倒置法使う程嫌っすか…
確かに小山さんは見るからに体力無さそうだし、この階段は厳しいだろうとは思うけど…
と、ここまで無言で見守っていた(驚いて固まっていたとも言う)奏太からの援護射撃が入った。
「まぁ毎朝走ってるんだし、1人くらい背負えるんじゃない?小山さん軽そうだし」
「…うん…かなり軽い……文庫本350冊より軽い…」
「…だって晴人!」
こっちじゃなくてそっちの援護射撃かよ。
えっと…文庫本1冊150gとすると…って痛ぇ!
「…晴人のえっち」
「…すんません」
耳たぶを引っ張られた。
あれ?後ろから抱きつかれてるこの状況ってかなり不利では?
というか君、抱きつくのはセーフなの?基準が分からん!
「…罰としてこのまま山頂までよろしく」
「へいへい」
「…ん。頑張って」
と言うことで、1人背負って階段を登ることになりました。
天野さんも一緒に登ったんだけど、若葉と奏太というコミュ力お化け共がいたお陰で終始会話は弾んでいた。
…天野さんってかなりの人見知りだからちょっと心配してたんだけど、馴染んでくれて良かったよ。
ちなみに俺の背中からは階段を登り始めて僅か10段ほどで心地良さそうな寝息が聞こえていた…こいつ投げ捨てたろうか…?
なんて考えていると、少し前を歩いていた天野さんが速度を落として並んできた。
「……新島くん…本当にごめんね。紫織ちゃん普段は全然運動しないから疲れちゃったみたいで…」
「いや実際そんなにしんどく無いから大丈夫だよ。奏太もさっき言ってたけど、こう見えて一応鍛えてるからね」
「…うん。ありがとう」
「と言うか小山さんよくここまで登ってこれたね。舗装されてるとはいえ、普段運動してないと結構きついでしょ」
そう。いくら舗装されているコンクリートの道とはいえ、山を2時間ほど登らなければあの茶屋には辿り着けないはずなのだ。
「あはは…紫織ちゃん、最初はそもそも今日休むつもりだったみたいなんだけど…試しに新島くんに会えるかもよって言ってみたら、急に行く気になってね…」
「なぜそんなに懐かれてるんだ…」
この前初めて会ったばっかりだぞ…?
いや確かに本の話で盛り上がったし、同志だとは思ってるけども。
「紫織ちゃんと話が噛み合ってる時点で凄いことなんだよ…?ほら、紫織ちゃんってかなり話が飛ぶというか…言葉足らずというか…何よりもすんごいマイペースだし」
「すんごいのか…」
「うん。すんごいの」
天野さんの言葉には物凄い実感がこもっていた。幼馴染だから色々と経験してきたんだろう。
「だけど根は優しい娘だから…これからも紫織ちゃんと仲良くしてあげてね…?たまにイラっとさせちゃうかもだけど…」
「まぁ、それも個性よな。俺はそんな所も嫌いじゃないし、仲良くさせて貰えたらって思ってるよ」
「……ありがとう」
なんて話してるうちに山頂が見えてきた。ようやく到着か。天野さんと色々話せたのは良かったかな。
寝ているはずの小山さんの抱きつく力が少し強くなった気がした。
すっきり天然水割りです。
次回更新は明後日になります。
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