取引
無事に図書委員の座を射止めた日の放課後、俺は奏太と自席付近で先の委員会決めについて話していた。
「にしてもあの奏太が3枚しかない当たりを引くとはなぁ」
「本当に勘弁してもらいたいよ…けどまぁ保健委員だったことが不幸中の幸いかな。他の当たりって風紀委員と放送委員でしょ?それと比べたらまだマシだよ」
「あー…それは確かに。それにしても、笑いを堪えるの大変だったぜ。こういう運が関わる系のやつってお前ほとんど当たんないから意外だったわ」
「今回は当たりたくなかったよ…」
他人の不幸は蜜の味とは言うが、その他人が親友だとより一層面白いものがあるな。
「僕のことは置いておくとして、意外といえば静流くんが学級委員に立候補したことじゃない?流石の僕でも予想できなかったよ」
「いや流石の僕ってなんだよ…まだ静流と知り合って3日目だろ。確かに俺も驚いたけどな」
「なになに?僕の話?」
噂をすれば影、2人で話していると、話に挙がっていた静流も合流してきた。
「そうそう。学級委員なんてよくあんな面倒臭そうな役目引き受けたなって話してたんだよ」
「いや、僕そんな言い方してないでしょ…」
「あはは…確かに面倒臭そうだけど、ちょっと自信を付けたくてね」
「ほう、自信とな?」
「うん。僕の姉さんは生徒会長をやっててね、すごい人なんだよ。そんな人と比べられて育ったからかな、あんまり自分に自信を持てなくてさ…
別に姉さんのことが嫌いとかじゃないんだよ?けどそんな自分を変えたくて、思い切って立候補しちゃった」
え、予想以上にちゃんとした理由で驚きなんですけど…てかこれって、会って3日程度の俺らが聞いていい内容じゃない気がするんだが。
邪な理由で委員会に立候補した俺が、いかに穢れているかをまざまざと見せつけられた気がする。
なんて、罪悪感に押し潰されそうになっていると、奏太によって爆弾が投下された。
「大変だろうけど頑張ってね。フォローできる時はするからさ。主に晴人が」
「いやなんで俺なんだよ。お前が手伝ってやればいいだろ」
「だって晴人部活入らないんでしょ?僕も勿論部活がない日は手伝うけどさ、静流くんが頼りやすいのは晴人の方になるんじゃない?」
「いや確かにそうだが…」
「ほう、新島は部活やらないのか」
「ゔぇっ⁈」
いきなり廊下側の窓から声を掛けられ、思わず変な声が出てしまった。
振り向くとそこには、先程教室を出ていったはずの大ちゃん先生が。
俺の席は教室の廊下側に面しているため、席で会話していると廊下に会話が漏れてしまうのだ。
ちょっと待て、すごく嫌な予感がするんだが…
「ちょうど森田の補助をしてくれそうな奴を探してたんだ。ほら、学級委員ってクラスに一人だろ?色々と大変だろうからさ、頼むよ」
「いや、俺部活は入らないけど、バイトやるつもりなんで、放課後は忙しいって言うかなんていうか…」
「…バイト…ねぇ?うちの高校バイト禁止のはずなんだがなぁ…?」
うげっ、これは墓穴掘ったかな…
「…はぁ…特別に聞かなかったことにしといてやる…その代わり、学級委員補佐よろしくな」
「…うっす」
「なに、中学時代に生徒会長を務めていたお前ならそんなに難しいことじゃないだろう。任せたぞ」
そう言い残し、大ちゃん先生は職員室へと帰っていった。
「大ちゃんなんで晴人が生徒会長やってたこと知ってるんだろうね?」
「入試の時、俺の面接担当だったんだよ…そん時に話した内容覚えてたんじゃねぇの」
「あー、そういうことね」
それにしても凄い記憶力だな。何十人、いや下手したら何百人も面接したはずなのに。よく個人のことなんて覚えてたな…
大ちゃん先生の記憶力に驚嘆していると、静流が申し訳なさそうに話しかけてくる。
「あの、晴人くん…もし嫌なら僕一人で頑張るから大丈夫だよ?」
「あーいや、あの人の手前ああは言ったが、元々手伝うつもりだったから気にすんな。むしろじゃんじゃん頼ってくれ。大ちゃん先生も言ってたが、こんなんでも一応、中学時代は生徒会長やってたからな」
「本当⁉︎ありがとう!すごく頼もしいよ!これからよろしくね!」
はい、ということで図書委員に加えて新たに学級委員補佐の称号も手に入れました。…ちくしょうめ!
すっきり天然水割りです。
次回更新は明後日になります。
明後日、ふと思い出してふらっと見に来てくれると嬉しいです。
気が向いたらフォローしてくれると喜びます。まかり間違って⭐︎なんか押してもらった日には泣いて喜びます。
最後まで読んでくれてありがとうございました!




