♢♢♢詩集♢♢♢ お土産 作者: 犀月靖緒 掲載日:2026/02/02 「私はうちで待ってるわ。膝が痛むから」 笑顔で言った君へのお土産を手にした帰り道 人で溢れる駅の改札口を出て 僕は足を止めた 雨上がりの草木の匂いのなか 傘を手にした君と 僕らの二人の子ども達が 虫を探してしゃがんでいる 僕の声に振り返った君は 白いワンピースがよく似合っていて 僕の記憶の中で いちばん美しい君だった でもそれは 少しだけ 胸を刺す痛み 今もこの目を刺す 白い光 「あなた」 雑踏のなか 五十年前の 君の声が聞こえた気がした