第116話 拒否された選択
「投票を拒否した」
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その一言が、
場の空気を変えた。
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「どこの都市だ」
レオンが即座に聞く。
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使者は一瞬だけ迷い、
それでも答える。
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「……ガルン」
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知らない名ではない。
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連合の外縁。
規模は小さい。
だが、
防衛線に近い。
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「理由は」
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その問いに、
使者は首を振る。
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「不明」
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一拍。
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「ただし」
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「書簡はある」
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紙が渡される。
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私は受け取る。
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短い文だ。
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『我々は選ばない』
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それだけ。
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沈黙。
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「ふざけてるのか」
マルタが言う。
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「選ばないってどういうことだ」
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レオンも眉をひそめる。
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「制度は決まる」
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「拒否できるものじゃない」
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その通りだ。
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だが、
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私はもう一度読む。
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『我々は選ばない』
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そこに、
違和感がある。
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「選ばないんじゃない」
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一拍。
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「選べないんだ」
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全員の視線が集まる。
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「どういう意味だ」
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「三つの制度」
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「どれにも乗れない」
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つまり、
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「連合の外にいる」
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沈黙。
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それは、
単なる拒否ではない。
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離脱だ。
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その時、
別の使者が駆け込んでくる。
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「報告!」
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息が荒い。
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「ガルンが」
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一拍。
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「補給線を切りました」
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空気が凍る。
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「何?」
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「連合の輸送路」
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「封鎖されています」
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レオンが立ち上がる。
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「正気か」
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それは、
宣戦に近い。
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クラウスが低く言う。
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「理由は」
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「不明」
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一拍。
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「ただし」
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使者が続ける。
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「独自統治を宣言」
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沈黙。
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連合でもない。
中央でもない。
分散でもない。
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別の何か。
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イェルクが言う。
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「無秩序です」
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短く。
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「放置できない」
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リアも頷く。
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「危険です」
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当然だ。
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だが、
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私は言う。
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「違う」
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全員がこちらを見る。
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「無秩序じゃない」
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一拍。
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「別の秩序です」
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沈黙。
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まだ形は見えない。
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だが、
確実にある。
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制度の外に、
別の構造が。
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レオンが言う。
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「どうする」
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問いは重い。
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連合は今、
三つに割れている。
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そこに、
四つ目が現れた。
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そしてそれは、
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従わない。
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私は静かに言う。
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「見に行く」
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マルタが驚く。
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「正気か」
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「中に入るのか」
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私は頷く。
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「選ばない理由を」
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「聞く」
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沈黙。
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イェルクが言う。
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「不要です」
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「排除すべきです」
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その言葉は冷たい。
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だが、
合理的だ。
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リアも言う。
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「不安定要素です」
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「早期に制御すべき」
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私は首を振る。
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「それが」
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一拍。
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「次の問題です」
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空気が変わる。
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制度の選択。
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それは、
前提だった。
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だが、
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その前提が、
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今、
崩れ始めている。
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三か月の期限。
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残りわずか。
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だが、
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その中で、
新しい問題が生まれた。
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制度を選ぶ前に、
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制度の外が現れた。
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風が強く吹く。
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連合は揺れている。
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そして、
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その外側で、
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何かが
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動いている。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
ついに「選ばない」という第四の存在が現れ、物語は一段階スケールが上がりました。
制度を選ぶはずの物語が、制度そのものを揺さぶられています。
もしここまで面白いと感じていただけたら、ぜひブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。
次話では、この“選ばない都市”の正体に踏み込みます。




