第113話 崩れた実験の答え
「実験は終わった」
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その言葉は、誰が言ったのか分からなかった。
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だが、
誰も否定しなかった。
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煙の残るラーデン外縁。
焼け跡の前に、
連合の人間が集まっている。
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中央側も、
分散側も、
同じ場所に立っている。
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境界はまだある。
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だが、
意味はもうない。
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クラウスが言う。
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「報告をまとめます」
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紙を広げる。
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「中央区域」
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一拍。
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「初動は速い」
「対応は迅速」
「被害は限定的」
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リアが静かに頷く。
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「ただし」
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クラウスが続ける。
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「多点対応に弱さあり」
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沈黙。
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事実だ。
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「分散区域」
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一拍。
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「初動は遅い」
「だが停止なし」
「複数地点で安定維持」
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レオンが小さく息を吐く。
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「ただし」
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「即応性に欠ける」
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誰も否定しない。
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そして、
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「境界越えにより」
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クラウスの声が少しだけ低くなる。
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「実験条件は崩壊」
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沈黙。
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それが結論だった。
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イェルクが言う。
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「つまり」
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「比較不能」
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短い。
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だが、
それだけでは終わらない。
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私は言う。
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「違います」
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視線が集まる。
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「比較はできました」
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一拍。
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「構造の癖が」
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沈黙。
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誰も否定しない。
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「中央は速い」
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「だが、分岐に弱い」
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「分散は遅い」
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「だが、止まらない」
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言葉にする。
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初めて、
はっきりと。
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「そして」
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一拍。
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「どちらも」
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「人を守れない場合がある」
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静寂。
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リアが言う。
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「だから中央が必要です」
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「最終判断を一つにする」
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イェルクも頷く。
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「責任を明確にする」
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私は首を振る。
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「違う」
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初めて、
強く言う。
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「責任を一つにすると」
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「切る判断が生まれる」
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沈黙。
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ラーデンの焼け跡。
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それが、
証明だ。
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マルタが言う。
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「分散も万能じゃない」
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「遅れる」
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「間に合わないこともある」
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私は頷く。
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「だから」
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一拍。
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「第三の構造が必要です」
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イェルクが目を細める。
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「証明されていません」
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「ええ」
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私は認める。
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「ですが」
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一拍。
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「否定もされていない」
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沈黙。
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レオンが言う。
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「少なくとも」
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「どちらか一つじゃ足りない」
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空気が変わる。
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白か黒かではない。
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足りない。
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それが、
結論だった。
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クラウスが言う。
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「評議会は判断を下します」
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一拍。
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「期限内に」
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その言葉で、
全員が思い出す。
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三か月。
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まだ終わっていない。
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だが、
残りは少ない。
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私は火の跡を見る。
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助かった。
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だが、
何かが壊れた。
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そして、
何かが見えた。
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イェルクが言う。
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「次は実験ではありません」
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一拍。
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「制度です」
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リアが静かに頷く。
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レオンが拳を握る。
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マルタが息を吐く。
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私は前を見る。
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ここからは、
もう
逃げられない。
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制度を選ぶ。
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それは、
世界を選ぶことだ。
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風が吹く。
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縄が揺れる。
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それはまだある。
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だが、
もう
ただの線ではなかった。
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それは、
選択の境界だった。
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