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断罪された公爵令嬢は、完璧であることをやめました  作者: 月影 すずり


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112/114

第112話 崩れた前提

 火は、消えた。


---


 煙だけが残る。


---


 焦げた匂い。


 焼けた木の軋み。


---


 中央区域は、まだ動いている。


 指示は続き、

 人は走り、

 後処理が始まっている。


---


 助かった。


---


 それは事実だ。


---


 だが、


---


 静かすぎた。


---


 誰も声を上げない。


---


 縄の前。


---


 越えた男が戻ってくる。


---


 顔は煤で黒い。


 息は荒い。


---


 だが、


 生きている。


---


「……助かった」


---


 その一言で、


 何人かが息を吐く。


---


 マルタが言う。


「よかったな」


---


 それ以上は言わない。


---


 責めない。


---


 だが、


 認めてもいない。


---


 レオンが低く言う。


---


「これで」


---


 一拍。


---


「実験は終わりだ」


---


 誰も反論しない。


---


 ルールは破られた。


---


 比較はできない。


---


 意味が変わった。


---


 倉庫番が言う。


---


「連合が来る」


---


 当然だ。


---


 これは、


 ただの現場の問題ではない。


---


 制度の問題だ。


---


 その時だった。


---


 馬の音。


---


 速い。


---


 数が多い。


---


 全員が振り返る。


---


 連合の旗。


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 クラウスと、


 その後ろにイェルク。


---


 来るのが早すぎる。


---


 状況はすでに伝わっている。


---


「報告は受けています」


 クラウスが言う。


---


 声は硬い。


---


「境界越えが発生した」


---


 沈黙。


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 否定はない。


---


 イェルクが一歩前に出る。


---


「確認します」


---


 一拍。


---


「この実験は」


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「干渉しないことを前提としていた」


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 静かな声。


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 だが、


 逃げ場はない。


---


「破られました」


---


 短い言葉。


---


 それだけで、


 すべてが確定する。


---


 レオンが言う。


---


「人が死にかけた」


---


「助けた」


---


 イェルクは頷く。


---


「理解しています」


---


 一拍。


---


「ですが」


---


 視線がこちらに向く。


---


「それは制度の外です」


---


 空気が冷える。


---


「制度の外?」


 マルタが言う。


---


「人を助けるのが外か?」


---


 イェルクは迷わない。


---


「はい」


---


 その言葉が、


 場を切り裂く。


---


「制度は」


 一拍。


---


「個人の判断を排除するためにあります」


---


 沈黙。


---


 誰もすぐには言葉を出せない。


---


 私は言う。


---


「では」


---


 一拍。


---


「人が死ぬ場合でも」


---


 イェルクは答える。


---


「制度に従う」


---


 迷いがない。


---


 リアが静かに言う。


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「それが統治です」


---


 レオンが拳を握る。


---


 私は火の跡を見る。


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 助かった。


---


 だが、


---


 それを否定する構造がある。


---


 私はゆっくり言う。


---


「なら」


---


 一拍。


---


「この実験は意味がありません」


---


 全員の視線が集まる。


---


「人を助けない構造を」


---


「比較する意味はない」


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 イェルクが言う。


---


「感情です」


---


「違います」


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 私は首を振る。


---


「前提です」


---


 一拍。


---


「構造は」


---


「人を守るためにある」


---


 沈黙。


---


 空気が張り詰める。


---


 クラウスが言う。


---


「では」


---


「どうする」


---


 問い。


---


 選択。


---


 三か月の期限。


---


 まだ終わっていない。


---


 だが、


 この実験は


 もう元には戻らない。


---


 私は答える。


---


「やり直します」


---


 ざわめき。


---


「前提を変える」


---


 一拍。


---


「助けることを前提にする」


---


 イェルクの目が細くなる。


---


「それは比較にならない」


---


「それでいい」


---


 初めて、


 はっきり言い切る。


---


「比較ではなく」


---


「選択です」


---


 沈黙。


---


 構造か。


 人か。


---


 その問いが、


 初めて


 正面から置かれた。


---


 風が吹く。


---


 縄が揺れる。


---


 それはまだある。


---


 だが、


 もう


 同じ意味ではなかった。


---


 実験は終わった。


---


 そして、


 次の段階が始まる。


---


 制度の戦いが、


 本当の形で動き出す。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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