第108話 選ばせるという責任
三日後、と言われた。
だが、
準備はその日のうちに始まった。
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ラーデン外縁。
焼け跡の残る土地。
崩れた壁。
黒く焦げた梁。
そして、
まだ生活している人間たち。
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「ここでやるのか」
レオンが低く言う。
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私は頷く。
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風が強い。
灰が舞う。
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人の気配はある。
だが、
どこか遠い。
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中央側の準備は速かった。
リアの指示で、
拠点が作られていく。
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「資材を集中」
「補給線を固定」
「防衛線を一本化」
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無駄がない。
迷いもない。
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一方で、
こちらは止まっていた。
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「どう分ける」
マルタが言う。
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「人を」
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レオンが答えない。
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倉庫番も黙る。
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ここが違う。
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中央は配置する。
こちらは、
選ばせる。
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「説明する」
私は言う。
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広場の代わりに、
崩れた建物の前に人を集める。
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顔は疲れている。
警戒もしている。
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「連合の試験です」
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簡潔に言う。
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「統治を選んでもらいます」
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ざわめき。
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「選ぶ?」
誰かが言う。
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「どちらかです」
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私は指を二つ立てる。
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「中央で決める統治」
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一拍。
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「役割ごとに分ける統治」
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静寂。
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「違いは?」
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当然の問い。
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「速さ」
私は言う。
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「中央は速い」
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「こちらは少し遅い」
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正直に言う。
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「安全は?」
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「どちらも保証はない」
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沈黙。
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空気が冷える。
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「ふざけるな」
男が言う。
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「実験か」
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「そうです」
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否定しない。
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「なら」
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男は吐き捨てる。
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「どっちが生き残るかの実験だ」
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誰も否定しない。
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それが真実だからだ。
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ルーカが前に出る。
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「俺は見た」
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声が通る。
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「中央は速い」
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「でも」
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「切るのも速い」
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空気が止まる。
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「都市が一つ消えた」
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誰かが息を呑む。
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「でも守られた場所もある」
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リアの側から声が上がる。
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「全体は生き残った」
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対立がその場に現れる。
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私は言う。
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「選んでください」
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「どちらが正しいかではなく」
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一拍。
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「どちらで生きるか」
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沈黙。
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長い。
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やがて、
一人の女が手を挙げる。
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「中央で」
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理由は言わない。
だが、
子どもを抱いている。
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次に、
別の男が言う。
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「分ける方で」
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「自分で決めたい」
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声が少し震えている。
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分かれていく。
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ゆっくり。
確実に。
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家族が分かれる。
隣人が分かれる。
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それでも、
選ばれる。
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レオンが小さく言う。
「これが分散か」
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私は答える。
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「責任を渡す」
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一拍。
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「その重さごと」
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夕方。
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区域は二つに分かれた。
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中央区域。
分散区域。
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境界線は、
ただの線だ。
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だが、
その意味は重い。
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マルタが言う。
「戻れないな」
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私は頷く。
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「ええ」
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三か月の期限は、
まだ終わっていない。
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だが、
この実験は
それより先に
何かを壊すかもしれない。
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夜。
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境界線の両側で、
火が灯る。
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同じ土地。
同じ人間。
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だが、
違う構造。
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そして、
違う未来。
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風が吹く。
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明日から、
試される。
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