第107話 試される都市
「試験都市の選定」
その言葉が落ちた瞬間、
空気の質が変わった。
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議論ではない。
選ぶ話でもない。
決める話だ。
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「条件は三つ」
クラウスが言う。
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「外縁に近いこと」
「補給線を持つこと」
「連合に属していること」
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短い。
だが、十分だった。
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いくつかの都市名が頭に浮かぶ。
同時に、
消える可能性も。
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リアが静かに言う。
「中央集権型で試すべきです」
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当然の主張だ。
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「防衛は一体であるべきです」
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数人が頷く。
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イェルクは何も言わない。
ただ、視線を巡らせる。
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「分散型も必要です」
別の代表が言う。
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「比較ができない」
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理屈は正しい。
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私は黙って聞いている。
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試す。
それはつまり、
どちらかが失敗するということだ。
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「機能分散型」
クラウスが私を見る。
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「あなたの構造も対象です」
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予想はしていた。
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だが、
現実になると重い。
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「どの都市で試す」
レオンが言う。
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沈黙。
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誰もすぐには名前を出さない。
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その時だった。
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「ラーデン市の外縁区域」
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誰かが言った。
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空気が凍る。
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崩壊した都市の残骸。
まだ人が残っている場所。
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「再建中だ」
その代表が続ける。
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「中央集権で失敗した」
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一拍。
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「なら、別の構造で試すべきだ」
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論理は通っている。
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だが、
そこに住む人間にとっては
実験ではない。
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マルタが低く言う。
「人がいる」
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「知っている」
代表は答える。
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「だからこそだ」
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沈黙。
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ルーカが小さく呟く。
「また、切るのか」
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誰も返さない。
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リアが言う。
「中央で再建すべきです」
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「分散では間に合わない」
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私は言う。
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「間に合わなかったのは中央です」
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空気が張る。
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イェルクが初めて口を開く。
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「決めましょう」
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静かな声。
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「比較可能な形で」
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一拍。
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「同一条件で試す」
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視線が集まる。
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「ラーデン外縁を二分する」
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ざわめき。
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「片方は中央集権」
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「片方は機能分散」
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空気が凍る。
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「人は?」
マルタが問う。
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「選ばせる」
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イェルクの答えは即座だった。
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「どちらの統治を選ぶか」
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静寂。
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選択。
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だが、
それはほぼ運命だ。
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「危険すぎる」
誰かが言う。
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「現実はもっと危険です」
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イェルクの言葉は揺れない。
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「理論では守れない」
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一拍。
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「結果で決める」
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誰も否定できない。
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レオンが低く言う。
「やるのか」
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私は答えない。
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代わりに、
ラーデンの地図を見る。
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焼けた区域。
残った家。
細い補給線。
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ここで、
構造が試される。
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そして、
人が試される。
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クラウスが言う。
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「決定を」
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沈黙が長く続く。
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リアが手を挙げる。
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「中央集権側を引き受けます」
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迷いはない。
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次に、
視線がこちらに向く。
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逃げ場はない。
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私は静かに言う。
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「受けます」
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その瞬間、
何かが決まった。
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議論は終わった。
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実験が始まる。
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そして、
その結果は
連合の未来を決める。
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クラウスが告げる。
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「準備は三日」
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一拍。
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「その後、開始」
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短い。
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短すぎる。
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会議が終わる。
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外に出ると、
空気が重い。
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レオンが言う。
「本当にやるのか」
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私は答える。
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「もう決まった」
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ラーデンの外縁。
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そこに、
二つの統治が並ぶ。
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そして、
どちらかが
生き残る。
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風が強く吹く。
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三か月の期限は、
まだ残っている。
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だが、
この実験は
それよりも早く
答えを出すかもしれなかった。
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