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断罪された公爵令嬢は、完璧であることをやめました  作者: 月影 すずり


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106/112

第106話 思想の場

 石造りの会議室は、静かだった。


 広場とは違う。


 声が吸われるような空間。


 中央に円形の机。

 その周囲に、都市の代表たちが座っている。


---


 私は席につく。


 視線が集まる。


 模範都市。


 その言葉が、この場では重い。


---


「議題を確認します」


 クラウスが言う。


---


「連合統治構造の再定義」


---


 短い。


 だが、意味は重い。


---


「案は二つ」


---


「中央集権型統治」


---


 一拍。


---


「機能分散型統治」


---


 静寂。


---


 リアがゆっくり立ち上がる。


---


「発言を」


---


 誰も止めない。


---


 彼女は円の中央を見る。


 誰にもではなく、

 全体に向けて話す。


---


「都市は、判断を必要とします」


---


 声は静かだ。


 だが、通る。


---


「危機は、待ちません」


---


 一拍。


---


「迷っている間に、崩れます」


---


 ラーデン市の名は出さない。


 だが、全員が思い浮かべる。


---


「だから」


---


「責任は一つであるべきです」


---


 明確な言葉。


---


「決断は速く」


「責任は明確に」


---


「それが、都市を守る」


---


 沈黙。


---


 何人かが頷く。


---


 リアは続ける。


---


「分散は美しい」


---


 一拍。


---


「ですが」


---


「美しさでは守れません」


---


 言い切る。


---


 空気が張る。


---


 私は立ち上がる。


---


「発言を」


---


 許可は必要ない。


 もう、対等だ。


---


「集中は強い」


---


 まず、認める。


---


「速い」


「合理的」


---


「守れる」


---


 リアがこちらを見る。


---


「ですが」


---


 一拍。


---


「切る判断も速い」


---


 空気が変わる。


---


「ラーデン市は」


---


 初めて名を出す。


---


「守られませんでした」


---


 沈黙。


---


 誰も否定しない。


---


「中央は正しい判断をした」


---


「戦線を守るために」


---


 一拍。


---


「都市を切った」


---


 言葉が落ちる。


---


 リアは動じない。


---


「それが合理です」


---


 即答。


---


「一つを切り、全体を守る」


---


 迷いがない。


---


 私は言う。


---


「では」


---


 一拍。


---


「その都市にとっての正しさは?」


---


 初めて、

 リアの目が少しだけ揺れる。


---


「都市は単位です」


 彼女は言う。


---


「全体の一部」


---


「なら」


---


 私は続ける。


---


「この連合は」


---


「都市を守るのか」


---


 一拍。


---


「構造を守るのか」


---


 静寂。


---


 誰もすぐには答えない。


---


 レオンが小さく呟く。


「いい問いだ」


---


 リアは一瞬だけ目を閉じる。


---


 そして開く。


---


「両方です」


---


 だが、その声はわずかに低い。


---


「その両立が」


---


「中央集権です」


---


 私は首を振る。


---


「両立していない」


---


 空気が張り詰める。


---


「ラーデン市は切られた」


---


「それが答えです」


---


 リアが一歩踏み出す。


---


「あなたの構造なら」


---


「守れたのですか」


---


 初めての反撃。


---


 沈黙。


---


 私は少しだけ考える。


---


 そして言う。


---


「分かりません」


---


 ざわめき。


---


 リアの眉がわずかに動く。


---


「ですが」


---


 一拍。


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「決める場所が違います」


---


「中央ではなく」


---


「現場で決める」


---


 指で机を軽く叩く。


---


「切るかどうかを」


---


「その都市自身が決める」


---


 空気が凍る。


---


「責任を押し付けない」


---


「責任を持たせる」


---


 リアが静かに言う。


---


「それは」


---


「遅い」


---


「遅いです」


---


 私は頷く。


---


「遅い」


---


 一拍。


---


「だから」


---


「完全な分散は捨てた」


---


 ここで初めて、


 第三の構造を提示する。


---


「機能分散」


---


「即断は残す」


---


「だが、分散させる」


---


 視線が集まる。


---


「責任は一つではなく」


---


「機能ごとに持つ」


---


 リアは黙る。


---


 初めて、


 即答しない。


---


 イェルクが静かに口を開く。


---


「興味深い」


---


 一拍。


---


「だが、不完全だ」


---


 全員の視線が彼に集まる。


---


「責任が分かれれば」


---


「最終責任が曖昧になる」


---


 核心だ。


---


 私は答える。


---


「曖昧にしない」


---


「分ける」


---


 沈黙。


---


 イェルクが少し笑う。


---


「では」


---


 一拍。


---


「その構造が」


---


「ラーデン市を救えたか」


---


 再び、その問い。


---


 私は答えない。


---


 答えられない。


---


 だから言う。


---


「それを」


---


「今から試す」


---


 空気が変わる。


---


 議論ではない。


 実験になる。


---


 クラウスが言う。


---


「評議会は」


---


「次の議題に進みます」


---


 一拍。


---


「試験都市の選定」


---


 ざわめき。


---


 誰が試されるのか。


---


 そして、


 誰が切られるのか。


---


 議論は、


 もう戻れない場所まで来ていた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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