第102話 三つの判断
三つの責任は、思ったより静かに動き始めた。
朝。
広場に伝令が来る。
連合からの書簡だ。
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「交易路の変更要請」
倉庫番が読み上げる。
外縁での衝突の影響で、
物資の流れを変える必要があるという。
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「防衛は?」
マルタが聞く。
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「問題なし」
レオンが答える。
「むしろ安全な経路だ」
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「なら、交易は変更」
倉庫番が言う。
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以前なら、
代表が決めていた。
今は違う。
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「内政の影響は?」
マルタが紙を覗く。
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「小麦の到着が一日遅れる」
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「許容範囲」
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三人の会話は短い。
だが止まらない。
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倉庫番が印を押す。
次にレオン。
最後にマルタ。
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三つの印。
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伝令がそれを持って走る。
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広場の端で、誰かが言う。
「速いな」
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確かに速かった。
代表が一人で決める速さと
ほとんど変わらない。
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違うのは、
決断の重さだ。
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昼。
別の知らせが届く。
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「防衛線からの要請」
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人員の追加派遣。
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レオンが顔をしかめる。
「若者が足りない」
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マルタが言う。
「畑も足りない」
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倉庫番が言う。
「備蓄は持つ」
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三人が少し黙る。
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ここが、
代表制度と違うところだった。
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一人なら、
すぐに決められる。
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だが三人なら、
考える。
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「二人」
レオンが言う。
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「一人」
マルタが言う。
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倉庫番が言う。
「一人」
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沈黙。
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レオンが息を吐く。
「一人」
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決まる。
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速さは落ちる。
だが、
納得は残る。
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夜。
焚き火のそばで、
倉庫番が笑う。
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「悪くない」
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マルタも頷く。
「思ったより回る」
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レオンは火を見つめる。
「まだ一日だ」
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それも事実だ。
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構造は、
長く続いて初めて分かる。
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成功か。
失敗か。
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だが、
この町はもう
代表のいない決断を
動かし始めていた。
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