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選律の星環譜  作者: 刹那
11/67

条件演習

午後。教室。輪っかライトは中。眠気は小。いける。——と、自分に言い聞かせながら席に着く。

前方、ミレイユ教官が白板の前に立つ。紺の上着、声は落ち着きめ。今日の板書はこうだ。


【本日のミッション】条件文を四つ問う。→ 対象/場所/主体/時間。


「四つ、忘れないで」

「忘れたら?」


楓が前のめり。


「思い出す手順を先に決めて。名付けは強い。『四問』でも『四則』でも」

「四問、採用」


後方でルナが端末を構える。


「今日は演習。選ぶ→理由→呼吸。無茶は、しない」



◆演習1:『ここから出たら負け』強化版



白板に一文と、小さな注意書き。


ここから出たら負け(※ただし監督者の許可があれば例外)


ミレイユが手短に促す。


「まず対象は?」

「自分」

「チーム全員では?」


楓が疑問を重ねる。


「どちらでも読める。だから——胸に来た二択を見て、選んで、言う」


胸の中にポコン……。


A:自分だけに有効 / B:全員に有効


「A。自分だけ」

「理由は?」

「監督者の許可が個別に働く前提。だから“自分”に結びつけやすい」

「OK」


ミレイユがマーカーを走らせる。


「では主体は?」

「判定者が別にいる」

「誰?」

「監督者。許可を出せる=ルールを動かせる人」

「良い」

「場所は?」

「円の外」

「時間は?」

「今から常時」


ミレイユが指を四本たてて、順に折る。


「対象、場所、主体、時間——四つ、通過」


ルナが補足。


「“例外”が付いたら、主体が増えること、忘れないで」



◆演習2:『AかBか、いやC?』



白板に矢印と箱の図。注釈に**→結論**とある。


ルール:出口Aは安全。出口Bは混雑。出口Cは監督者同伴ならOK。


「どれ? どれ行く?」


楓が半笑い。


「静かに。目的と条件を言って」


ルナが一本指。


胸の中にポコン……。


A:Aへ(安全優先) / B:Bへ(時間短縮) / C:Cへ(同伴)


「Cに行きたい。けど——」

「A」

「理由は?」

「今は基準値づくり。リスクを足さない。安全→安定→速度の順」

「OK」


楓が手を挙げる。


「ぼくはB。混雑でも範囲が狭いなら、読み取りの練習になる」

「それもOK。目的を言えたら、選びは複数OK」


(“目的を言う”って、こんなに強いの?)



◆演習3:『条件の穴』



白板に新しい一文。


走ったら失格


「主体は誰?」

「監督者」

「場所は?」

「廊下? 体育館? 外?」

「時間は?」

「授業中? 今日は? いつまで?」


ミレイユが肩をすくめる。


「穴だらけ。だから——」


胸の中にポコン……。


A:質問して定義をもらう / B:最も厳しい解釈で動く


「A。先に質問」

「何を?」

「対象/場所/主体/時間。それと“歩幅は? 早歩きは?”」

「良い質問だ。歩幅は自分基準か、計測か。ね、聞きたくなるでしょ」


楓がうなずく。


「なる」



◆ペア早口:反復→転調



二人組で短文ラリー。楓と組む。


「対象は?」「自分」「場所は?」「この部屋」「主体は?」「監督者」「時間は?」「今から」

「目的は?」「安全」「例外は?」「許可」

「速い」「でも言えた」


ルナが軽く拍手。


「言えた。重要。口で回ると、行動も回る」



◆小演示:『時間ずらし』



志水が透明箱と玉を置く。黒線、また登場。


「仮定。この線を越えたら玉は右へ転がる」ミレイユ。


志水が箱を一拍待ってから傾ける。玉は遅れて転がる。


「はい、質問。何が変わった?」

「時間」

「主体は?」

「傾けたのが志水。判定はミレイユ」

「場所は?」

「箱の中」

「対象は?」

「玉」

「四問、通過」


ルナが端末に打つ。


「時間の穴に注意」


(遅らせるだけで、結論が揺れるのは少し怖い。でも面白い)



◆休憩:Q&Aタイム



ミレイユ:「質問ある?」


楓:「例外が三個あったら、四問は十二個になる?」


ミレイユ:「増える。けどまとめ言いできる」


俺:「まとめ言い?」


ミレイユ:「『例外群は主体=監督者に依存。時間は当日のみ』みたいに」


ルナ:「名付け→圧縮」


俺:「圧縮、好きだ」



◆まとめ&自己評価



配られたカードに一行ずつ。


『例外が出たら、主体が増える。』

『目的を言ってから選ぶ。』

『穴は質問で埋める。』


書いていると、胸の中にポコン……。


A:拍手 / B:深呼吸 / C:質問もう一個


「B。深呼吸」


——吸って、止めて、吐く。肩が下がる。視界が広がる。

ミレイユが柔らかく言う。


「今日の四問、よく回った」

「回りました」


俺と楓がハモる。

ルナが締める。


「続ける。それだけ」


—廊下に出ると、黒鐘イツキが遠くを横切った。視線はやっぱり合わない。

けど、足取りは少しだけゆっくりに見えた……気のせい? どうなの?


胸の中にポコン……。


A:この学園で静かに暮らす / B:全力で勝ちにいく


「保留」


——今日もそれで、いい。


(四問、呼吸、例外——忘れない。)

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