45話 お使いも大変だよね?
クラーボン伯爵とのいざこざは駆けつけた騎士団も介入し、騒動を起こした者たちは、騎士団第三部隊に王都へと連れて行かれた。
担当した騎士団第三部隊が数人残り、共に中心地へと、転移門を作るために移動する。
この第三部隊は王都近郊の調査や盗賊、魔物の討伐などをする部隊で、部隊を率いるヘインディッヒ・デン・エルディン部隊長はエルディン子爵で、まだ33歳と若く焦げ茶色の髪を短髪に刈り上げていて、瞳は碧眼で体格は細マッチョと言った所でかなり強いと思う。
流石は、騎士団の部隊を任されるだけはあると思うのだった。
話してみるとかなり気さくで、人柄も良い。
残った第三部隊の面々は馬から降り僕たちに歩調を合わせ歩き、暫く移動していると中心地にたどり着いたので、早速ママが魔法で石を作り大きな門を作り上げていく。
その様を観ながら僕たちは談笑していて、リチャードのおっさんは何処かに行ってしまった。
「凄いですね、これが大賢者殿の力ですか〜。この調子だと、あっという間に出来上がりそうですね」
「ヘインディッヒ部隊長には面白い光景ではなかでしょうけどね」
「ヘンディーと呼んで下さい。それにそうでもないんですよ。自分これでも魔法剣士なんで!勉強になります」
ニカッと人が好きそうな笑顔で言うヘンディーさん。
こりゃ部下に慕われやすい訳だ。
さぞモテるんだろうね。
これがイケメンの力か!
チクショウがーー。
閑話休題。
門を作っていていると見物人たちが集まってきて、中には屋台をしだす商人まで現れる。
「ユタカ、建物とか作ってみるのはどうだろうか?」
「まぁ暇やし休憩所を作るのもありやね」
と言うことでエルの提案で、僕とフォビアナちゃんで魔法を使い建物を作り始め30分でに階建ての家が完成する。
作りは王都を見習って洋風の建物で結構デカイ物が出来上がり、さながら貴族が住みそうな家となる。
エルがいる訳だし、手は抜けない。
建物が作り終わり、一息ついているとママが、門を完成させ僕達のもとにやって来た。
門に転移先のアルカディアへの魔法を施した魔石を設置し、真凛さんの方も設置は完了したということで、第三部隊が管理のもと、出入りが開始されている。
僕達は、ママを含めて休憩するため早速建物の中でお茶を飲むことに、テーブルや椅子は用意しているのでそこで、菓子をつまみながら一休みをする。
ヘンディーさんも一緒に。
「自分もご一緒させてもらってすいません」
「良かですばい。ヘンディーさんとはもっと仲良く成りたかったとこですけん」
「それは良かったです。自分は大賢者であるセンダ・フウ殿の魔法が見れて感激していますし、そのご子息であるユタカ殿やご友人の魔法も凄かったですね。こんな短時間でこんな立派な建物も作り上げてしまうなんて驚きですよ」
「豊は魔法だけじゃなくて〜剣の腕も良いんだよね〜」
「そうですか。それは是非とも手合わせをしていただきたいものです」
ヘンディーさんと仲良くなりたいのは嘘じゃない。
この人とは仲良くなれそうやし、人柄も良いけん、つい心を許してしまう。
ママがヘンディーさんに僕が魔法だけでなく、剣の腕も良いと言い、ヘンディーさんも今度手合わせをしようと約束される。
部隊長を任されるほどの人物やけんかなりの腕前やろね。
僕も楽しくなってきた。
僕らが寛いでいる居間に真琴さんが真凛さんとベスター爺を連れて来た。
それを見たヘンディーさんが席を立ち跪こうとするのをベスター爺が止め、楽にするように促す。
「先生〜戻ったわよ!」
「流石は先生!立派な門だけでなく家まで建ててしまうとは」
「家は私じゃないよ〜家は豊とフォビアナちゃんだからね〜」
「なんと!そうでしたか。短時間でこんな建物を作り上げるのなら、一人前の魔法使いですな」
「この子たちは私達が手塩に掛けて育て上げたからね〜でもこれだけで慢心しちゃいけないよ〜これからも高みを目指さないと〜良いね皆〜?」
「「「「「「「「はい!」」」」」」」」
ベスター爺が家まで作ったのかとママに聞くと作ったのは僕とフォビアナちゃんと分かり褒めてくれるが、ママが僕とフォビアナちゃんだけでなくエル、ルイ、レオ、セレナちゃん、ディラン、シノ、エルリックにも視線を向けながら注意をする。
僕らの目標はまだまだ上で、建物を早く建てたくらいで慢心しては居られない。
敵に余裕で勝てるぐらい強くならなくては、神殺しなど以ての外やろうけんね。
真凛さんとベスター爺も含めてお茶をしていると、ヘンディーさんがベスター爺が居るもんだからか肩身が狭くなったように過ごしていた。
すると今度は何処かに行っていたリチャードのおっさんが男性を二人連れてやって来る。
一人はレリック・デン・ネインヘル侯爵で30代半ばでナーレーリッタ嬢と同じく、ピンク髪を後ろで結んでいるほど伸びていて、瞳も茶色で同じで左目にはモノクルを付けていて優しい表情をしている。
服装も豪華ではなく、質素だが質が良く高貴な貴族にふさわしい装束をしている。
ネインヘル侯爵には二回ほど会ったことがあるので良いのだが、もう一人の人物は初めてだ。
僕は鑑定眼を使う。
結果、アンドレー・デン・レダー伯爵で、歳は35歳でネインヘル侯爵と同い年、迷宮都市ウィンベルを治める領主、ネインヘル侯爵と同じで王族派である事が分かった。
見た目は茶髪を刈り上げるほど短くしており、瞳は青色で顎髭だけ生やし強面だ。
身長も180cmあり体格も良くステータスを見るからに戦闘が得意なんやろうね。
リチャードのおっさんとネインヘル侯爵、レダー伯爵はベスター爺を見ると跪こうするが公の場ではないからと止められる。
で、その二人がここに来ると言うことは、どう言うことなんやろうと疑問に思っていると、リチャードのおっさんが口を開く。
「フウ殿、すみませぬ。儂に愚痴を言ってきたのはこの二人でしてな。どうしてもフウ殿にお願いがあると言ってですな…」
「ふ〜ん。そうなんだ〜で、なんの用かな〜?」
「お久しぶりですフウ殿、こちらはアンドレー・デン・レダー伯爵です」
「お初にお目にかかる。俺はアンドレー・デン・レダーだ。迷宮都市ウィンベルの領主をしている。以後よろしく頼む」
そう言うと、頭を軽く下げるレダー伯爵。
レダー伯爵の後ネインヘル侯爵も礼をして続きを話しだす。
「先ず、娘とシン殿との婚約ありがとうございます」
「その件は私じゃなくて母親である遥花ちゃんに言ってくれる〜?私は同席しただけだしね〜」
「分かりました。そうします。で本題なのですが…」
ネインヘル侯爵とレダー伯爵が真剣な表情になり、改まってママに向かってネインヘル侯爵が言い出す。
「アルカディアの跡地に街を作って貰いたい――」
「却下だ!」
ベスター爺が威厳のある表情をしながら重みのある言葉放つ。
それに対してネインヘル侯爵とレダー伯爵は汗をかきながら受け、ネインヘル侯爵がベスター爺に質問する。
「どうしてですか、先代公?」
「先生に頼りすぎだ。そもそもアルカディアは元々シュナイゼルの物ではない。先生の物だからな、貸してもらったに過ぎない。なのに街を作れと言うお前たちは、先生にどれだけの対価をやるつもりだ?」
「資材や報酬など十分な金額をお出しします。報酬に関してはドジャマンダル大公様も援助してくれますのでそれで良いかと…」
「そういう事では――」
「良いんじゃないかな〜その代わりアルカディアの政務の人達を新しくできる街に移すこと〜報酬とかいらないからアルカディアの主導権は私達がもらうよ〜それで良いね〜?」
「それは…」
言い淀むネインヘル侯爵。
そりゃそうだろう、街だけ作って報酬だけ払って終わりでは、こっちにメリットがあまりない。
ただ利用されているだけに過ぎない。
そんなのあんまりだ。
今のアルカディアはあまりにも、シュナイゼルが主力で統治をして、甘い汁を吸っているものもいる。
それを排除するにはちょうどいい機会なのかもね。
「その代わり〜立派な街を作るから〜安心しなよ〜貴族が住まう豪邸はそっちで建ててね〜?要望とかいちいち聞いてられないし〜転移門と街の管理はそっちでお願いね〜」
暫く考え込んだネインヘル侯爵とレダー伯爵は、了承してママは翌日から街づくりをすることを約束すると二人に一言付け加える。
「あっ!街を作るわけだから〜レリック君とアンドレー君、そして、ドジャマンダル大公爵に貸し一つね〜ドジャマンダル大公爵にも伝えておいて〜何かあった時は、真っ先に頼るから〜」
「はい。ワガママを聞いてもらうのですから、何かあった際は是非頼って下さい」
「俺もだ。何かあったら言ってくれ!まぁ、その前に俺の息子達が世話になるかもしれんがな!」
ママの言葉に爽やかな笑顔で応えるネインヘル侯爵とは違って、レダー伯爵はニヤッと笑い意味深な言葉を残す。
息子達が世話になるってなんのことやろ?
疑問に思うが、深くは聞かんほうがよさそうやね、素直に応えてくれるとは思えんし。
話が終わると、黙って聞いていたヘンディーさんが口を開く。
「何やってるんですか、レリック先輩、アンドレー先輩!いきなりフウ殿に願いを言うなんて、正直、驚愕を通り越して呆然となりましたし、先代公様がいらっしゃるのに無茶言わないでくださいよ!自分の心臓が持ちませんて!」
「悪かったですね、ヘンディー。私の無理を言っているのは承知の上です。ですが生きた心地はしませんでしたね…」
「居たのかヘンディー!仕方ないんだ、ドジャマンダル大公に頼まれたんだからな!本当無茶を押し付けてくれるから、対応するこっちが大変なんだ!」
ヘンディーさんは、焦りからか早口で二人にまくしたてるが、ネインヘル侯爵は眉を下げ、申し訳ないような顔をし、レダー伯爵は苦笑いを浮かべつつ本音を語る。
「ヘンディーさん。ネインヘル侯爵とレダー伯爵の御二人と知り合いなん?」
僕の言葉に、ヘンディーさんは僕に向き、苦笑いを浮かべつつ語る。
「そうなんです。先輩たちとはアカデミーの頃からの知り合いで良くしてくれました。先輩達の奥方は、先代王であるエネル様の側妃とのお子様で当時剣と魔法の秀才の姉妹として有名で、求婚が後を絶たなかったんですけど、その姉妹の心を射抜いたのがこの二人でして、姉妹の腹違いの兄にあたるドジャマンダル大公様には頭が上がらないから、この様な事を押し付けられたんだと思います!ですよね、先輩達?」
「ヘンディーの言う通りです…今ではドジャマンダル大公の小間使として貴族達には言われていますが、惚れたシュネーの為ですからね。何と言われようが構いませんよ」
「ドジャマンダル大公はシュネリーゼ殿とシンシアを溺愛していたからな…婚約なんてエネル様は許してくれたが、ドジャマンダル大公は中々許してくれなくて、骨が折れたもんだ。だがこれもシンシアの為だからな、死ぬ気で試練を乗り越えたんだぞ!」
ネインヘル侯爵とレダー伯爵は現状に不満が無いと言わんばかりに自信満々と応える。
シュネリーゼ様とシンシア様は、先代王のエネル様とメイドだった男爵家の令嬢との子供で、他の姫達と違い母親の家の地位が低いため、かなり努力して秀才と呼ばれるぐらいまで、上り詰めたんだって。
凄かよね。
努力で成り上がるなんて、よっぽどの胆力が無いとやっていきけないと思うんよね。
それな姉妹を娶った二人なのだから、愛する妻のためならば何でもするんやろうね。




