17話 復讐って仕方によるよね?
「何が憎いん?」
そう言いながら僕は前に出る。
歩みを止めず、僕はリッチの場所まで、歩き続ける。それをママたちが止めようとしたが、トワが影から出てきてママたちを止める。
「どういう事かな〜トワ?返答次第では許さないよ〜」
「ここは主の専売特許や!こんなやつは主一人で十分や、黙って見とき」
僕が歩み続けるとスケルトンナイトやスケルトンウィッチが攻撃を仕掛けてくるがそれを平八郎や半蔵が食い止める。
「豊殿の邪魔はさせぬ」
「お館様の邪魔でござる、拙者が相手をするでござるよ」
平八郎がスケルトンナイトを、半蔵がスケルトンウィッチを相手にする。僕はリッチのそばまで行き歩みを止める。
「何をそんなに憎んどうと?」
「ヨハ…ニクイ…」
「何に?」
「ヨニダ…ナニモデキナイ、ヨガニクイ!」
魔力が膨れ上がりその圧で、僕も後ずさるが堪える。
こんなに自我がはっきり残っている怨霊はそういるわけじゃない。
大半はその怨念に押しつぶされて暴走するがこのリッチはそうじゃない。
僕には分かる。
この手の怨霊は何か未練があるはずだ。やり残した何かが。
「何がしたかと?復讐?」
「ヨハ…クニヲ…ヨクシタカッタ…」
「そう」
僕はさらに近づき、小さい体で僕より大きなリッチを抱きしめる。
魔力の圧が暴力となり僕を襲う。
それでも僕は止めない。
どれだけ傷つこうが止めない。
「豊止めなさい!こんな禍々しい魔力を受けるなんて無理よ!」
「そうよ!先生の言う通りだから離れなさい!」
「豊死ぬ気か!おい、主を見殺しにする気か?それでも使い魔か!」
「落ち着きいや、主なら大丈夫や。こんなんで死なんわ」
いつもの間延びした言葉でなく少し焦っているママと必死に止めようとする真凛さんと総司さん。
それをトワは気にもしない。
僕が治めると信じているから。
「ナゼ、ヨニダキツク…シニタイノカ?」
「死ぬ気はないね。そもそも殺そうとしとらんやろ?大丈夫。僕は味方だから。この世にやり残したことがあるんやろ?やり直さない?僕と一緒に」
「ヤリナオス?ヨガ?」
「そうだよ。やり残したことがあるんやろ?ならやり直そうよ、一からさ。今度は悔いが残らないように僕も手伝うから。勿論君の仲間もね」
「…」
暫くすると魔力の圧が止み、リッチが観念したかのように僕の頭を撫でる。
それと同時にスケルトンナイトやスケルトンウィッチも攻撃をやめる。
「ヨハ、ヘイワナ、ヨノナカヲツクッテミタイ」
「そっか、なら僕と妖魔契約を結ぼう。どれだけ貢献できるか分からんばってん、やれるだけやってみるばい!」
「ワカッタ」
僕は、リッチに対して、魔法陣を生み出す。
それから、妖魔契約を結ぶため、魔力をリッチに繋げて、準備をする。
妖魔契約をする際、リッチから過去の記憶が流れ込んでくる。
彼の本名や、素性なんかも分かった。
トワが意味深な笑みを浮かべていたのは、こういう事だったのかと改めて気づいた。
僕は彼に、魔力を注ぎながら平和の象徴である、麒麟を想像しながら魔力を注いだ。
すると彼は見る見る姿を変え、骨だった姿が肉がつき服装も変わりだし、額には角が生え髪の色は薄緑のロングへと伸び、瞳は翡翠で身体は鱗ができている。
服装は、左肩が甲冑を来ており着物を着崩した服装となっている。
彼の姿があらわになり、僕は魔力を使い切りその場で倒れ、ママが駆け寄り抱きかかえる。
彼は自分の力姿をまじまじ見つめ確認していた。
「豊!無理しちゃ駄目でしょ〜!」
「それにしても凄いわね。あのリッチをこんなに変えるなんて!」
「凄いね!進化してるよ。こんな事が出来てしまうなんて…薄々気付いていたけど豊は転生者なんだね」
僕は、総司さんの言葉にビクッと肩を潜める。
バレた!嫌われる!
と思った時真凛さんは眉を落とし苦笑いになり、総司さんは笑顔で、二人が僕の頭を撫でる。
「そう身構えないの。私達も薄々そうなんじゃないかなって思ってたけど、先生達が必死に隠そうとしてたし、何か理由があるんだろうと思っていたのよ」
「でも昨日フォビアナちゃんに日本語で語りかけてたからね。それで転生者って思ったのさ!」
「気持ち悪かよね…」
「そんな訳無いでしょ!豊は豊なんだから転生者だろうが関係ないわよ」
「そうだよ。転生者だろうが関係ない。それぐらいで嫌われると思ってもらっちゃあ困るよ!俺は今の豊が好きなんだから」
「真凛さん、総司さん…」
「さぁ~そんなことよりリッチだよ〜」
二人の気持ちを知り、感慨にふけっているとママが笑顔で、リッチである彼の今後について話をし始める。
「リッチ何だけど〜私の鑑定眼でリッチから疑似麒麟と進化してる、でもネクロマンサーの称号があるから姿は麒麟でも能力的にリッチに近いかな〜それに豊〜とんでもない人を妖魔にしちゃったね〜」
ママは僕と意思疎通の魔法で繋がっているから、さっきの記憶も共有されたんやろうね。意味ありげな笑みで彼を見て言葉を放つ。
「まさかゾルタニアの第二王子である――」
「その名は死んだ名だ。母君」
彼は僕やママの前で跪く。
それに続くようにスケルトンナイトやスケルトンウィッチも同じ様に跪いている。
この二体は妖魔契約していないんだけどな。
何でやろ?
「主君よ、余に新たな名を与えてくれ」
「分かった。なら君の名はジットだよ!これから宜しくジット」
「ジットか…なるほどな。了解した。そこでだ主君よこの二人とも契約をしてくれないか?」
「この二体はジットが使役してるんやけんそのままで良いやん」
「それでもこのスケルトンナイトは余の腹心だったのだ。死して尚余についてきてくれた。そのスケルトンウィッチはある冒険者に殺されてこの世に未練を残して死んだ令嬢でな、その冒険者に復讐したく余と契約したのだ。だから形は違えど同じ主君に仕えたいと思念が伝わってくるのだ」
う〜ん。どうしたものかと思考していると、ママがマジックポーチから魔結晶を取り出し、魔力を回復するように促してきた。
それでも僕はこの二体にはジットについていてほしいんよね。
ジットの力があれば何とかなるか!
そう思いジットに二体に魔力を注いでジットが想像する姿を浮かべながらしてもらい、僕はそれを補助するように回復した魔力で補う。
すると二体が姿を変える。
スケルトンナイトは西洋の鎧を身にまとい頭には牛のような角を生やし茶髪で短髪、瞳は緋色、口髭や顎髭を生やした四十代の筋骨隆々で高身長の男性へとなる。
いかにも武人って感じ。
スケルトンウィッチは白髪ロングで服も白のドレスを来ているが、ジットのイメージが雪女の様なイメージだったけんね。
因みに瞳は緋色で年齢的に10代後半の女性しては高い身長をしている。
物凄く美人だ。
僕を見つめるとにっこり微笑んだ、笑顔がすごいんだが!
二人も生前の名前を捨て新たな名を欲し男性にはゼム、女性にはゾシアと名付けた。
「ジット様、新たな肉体を与えてくださり光栄でございます。このゼム、ジット様に変わらぬ忠誠を誓います。そしてお館様、このゼム、貴方様に永劫の忠誠を誓います!」
「私もです。ジット様、あの憎きドルグを斃した後もアナタについていきます。無論お館様にもです!」
「それって二人に忠義を誓うことでしょ?大丈夫なん?板挟みにならん?」
「大丈夫だ、主君。二人の主である余が主君に忠誠をしているのだ、変わらんよ。二人を使ってやってくれ」
「そっか。なら、今後僕は、村を開拓しないといけん。そこの住人はほとんどゾルタニアの難民なんよ。そこの代官に僕になるから、ジットは僕のサポートをして、二人はジットをサポートして!それとジットの生前の知恵袋と懐刀?その二人も何とかこっちの陣営に招くこと出来んかな?」
「エキドナとスミスか…了解した。二人は余が説得しよう」
良かった。これで村のサポートが確保できた。
国を良くしようとしたジットがいれば心強いしね。武力に関してはゼムがいるし何とかなるでしょ。はぁ〜、一次はどうなるかと思ったけど上手いこと事が運んで良かったよ。
これで人員はなんとかなるかな。
「これで人員は当面育てなくて済むけど〜沢山いたほうが良いから長い目で育てなきゃね〜さぁ~戻ろうか?」
三人を連れて家に戻り、事の顛末を話すと皆驚いていた。
特にドクトリウム辺境伯はジットの正体が十年前に死んだ第二王子と知り、顎に手を当て顎髭を撫でながら思考し重い口を開く。
「成る程、これは油断なりませんな。そこにエキドナ殿達が加わると我が領は繁栄するでしょうな。益々ユタカ殿を手放せなくなるでしょう。これはルイとの婚約も早めにしてもらわねば!…それよりジット殿はゾルタニアに復讐は考えておらぬのか?」
「復讐か…余は死んだ身今更ゾルタニアに反旗をするほど考えていないが…ゾルタニアが腐敗をしているのであれば、主君次第では立ち上がるかもしれぬ。まぁ主君次第だ!」
「そうか…ゾシア殿、ドルグ殿は今ではSランクの冒険者で力も影響力もでかい!それでも?」
「えぇ、ドルグは囚われていた私を、遠慮なく殺し堂々としているのです。それに私だけではありません。ドルグは己の正義のためならば無実の民を殺しました。私はそれが許せない!」
ゾシアさんの緋い瞳には、深い復讐の念が宿っている。止めれるわけがないとよ。
こういう人は事をなすまで納得がいかんったい。
でも復讐は、虚しさを生むだけやけん、ゾシアさんには復讐だけやなく、他にもやる気が出るようなことが見つかると良かっちゃけどね。
こればかりは難しか。
「そうか…ドルグ殿は今ゾルタニア王国のあのSSランクのドミニク殿が率いるクラン、龍王に所属している。今直ぐは難しいだろうな」
「えぇ存じています。ですがいずれドミニクはお館様に牙を向けるでしょう。その時まで己の力を高めます!」
「うん?ドミニクが豊に牙を向ける〜?どうしてそうなるの〜?」
「母君様、お館様は今後ハルハンドと敵対するのでしょう?」
「そうだけど〜よく知ってるね?」
「ジット様の記憶がお館様に流れたように、お館様の記憶もジット様に流れました。私の身体を形成する時その記憶が流れ込んできたので知ったのです。そしてドミニクはハルハンドとつながっています!必ずお館様の命を狙ってくるでしょう」
「余が知る限りではゾルタニアの国王はドミニクと裏でつながっている。ゾルタニアの今の状況もハルハンドが関与しているかもしれない。余が知っている情報ではドミニクは裏でハルハンドの剣王と会っていることは掴んでいる」
ゾシアさんやジットの話を聞きママは顎に手を当て眉間にシワを寄せ考え込んでいる。ハルハンドだけじゃなくゾルタニアも相手にしないといけないかもしれない。少なくとも冒険者の最高峰SSランクのドミニクを相手にするのだ。並大抵のことではない。
これは僕の修行もかなり厳しくなるかもしれんな。
こうして僕は新たな妖魔を手にして、新たな課題が出来上がるのだった。
僕はのんびりしたいのに。




