16話 魂を吸い寄せる者、怨念?
男の子の悲痛な叫びに、ママや悠木さんが男の子に近づき話しを聞く姿勢をとる。
男の子も話しを聞いてもらえると思ったのか、目に涙をためて言葉を続ける。
「医者にみせても、母ちゃんの病気がなおんねえんだ!だいけんじゃならなおせるんじゃねのか?」
「どんな病気かも分からないのに〜、治せるとは言えないね〜」
「先ずは容体を診てみないと分からないからお母さんがいるところまで案内してくれるかな?」
「わかった!」
「私と悠木で行ってくるから〜皆は先に屋敷に戻ってて〜」
ママの言葉に絵梨花お姉ちゃんが僕の手を握り、ママ達を残して屋敷に帰ることに。
屋敷に戻るとエルネシア殿下のメイドやリサーナさんが駆け寄り、エルネシア殿下やフォビアナちゃんに抱きつき無事を確認する。
暫く談笑し、エルネシア殿下とメイドは王城へと戻り、ドクトリウム辺境伯とルイ嬢も今後の事は後ほど話すことになり、自分の屋敷へと戻っていった。
そうして日暮れになり、夕食は王都の屋敷でとることになり、魔獄からクロエさんとイザベラさんがやって来て、僕と一緒に夕飯を作り始める。
夕飯を作り終え、食堂に料理を運んでいると、ママと女の人を抱えた悠木さん、男の子が一緒に戻ってきた。
女の人はジル・ペルティーナさんと言い、男の子はディラン・ペルティーナくんと言って8歳だった。
ジルさんは人間で、ディランくんは父親が竜とのことでドラゴニュートらしい。
ママと悠木さんの診断ではジルさんは、肺死病と言って地球で言うところの結核とのことで、ママの神聖魔法、オールクリアで治せたけど経過を観るため連れてきたそうだ。
ジルさんは今は眠っており屋敷のベッドで休んでいる。
ディラン君はジルさんに付き添っている。
その部屋に夕飯を運んで、食堂で皆と食事をとる。
食事をし終え、今日は王都の屋敷に泊まることになり大人達は酒を飲んで、進は疲れが来たのか眠っている。
僕もキッド兄ちゃんとネェネと共にお風呂に入りイザベラさんの案内で部屋に行き眠る。
翌朝、日が昇る前に起きて、庭で素振りをしていると日が昇り、亮平お兄ちゃんが起きてきて指導をしてくれる。
時間はあっという間に過ぎ、訓練を終え朝食を作り皆で食事をとる。
ジルさんは起きたが、念の為安静にしてもらうため、部屋でディラン君と食事をとっている。
ディラン君はママと悠木さんに恩義を感じ、ママのもとで働かせてほしいと懇願し、ママがそれを承諾してジルさんも魔獄に行くことに。
朝食を終え、お茶を飲んでいると、屋敷にエルネシア殿下とメイドさん、ドクトリウム辺境伯とルイ嬢がやって来て、メイドさんが事の顛末を話してくれた。
ハルハンドの兵は中々口を割らずハルハンドの狙いを聞くため拷問に掛けるとのこと。
ゲーブ支配人に関しては不可抗力とは言えエルネシア殿下達を攫った片棒を担いでいたので、犯罪奴隷に落とされ強制労働をさせられるとのこと。
歌唱団についてはレリー歌唱団となりレリーさんが支配人となって、今まではレリーさんの代わりに別の人が歌っていた事を公表し、今後は自分の力でやっていくとのこと。
最初は苦難があるやろうけど、王家がバックアップしてくれるとのことだ。
頑張ってほしかね。
ドクトリウム辺境伯は、ルイ嬢が訓練するための話で、城塞都市ベインと魔獄を繋ぐ転移ドアを作るため、真凛さんが転移して設置してくれる事になった。
「今回は礼を言いますぞ」
「いや〜今回の件はどちらかと言うと〜こちらが巻き込んだ感じだから〜礼はいらないよ〜」
「それでも、です。ルイを救っていただきありがとう御座います」
「良いのに〜、まぁ豊が村を作る時はよろしくね〜」
「それはそれ、その件は話が変わりますぞ」
村の話になるとドクトリウム辺境伯は急に目の色を変え鋭くなる。
それに対してママは悪い顔をして饒舌になる。
「まぁリチャード卿には手を借りるつもりはないしね〜豊なら村を発展させることは簡単だよ〜私達も手を貸すしね〜」
「そうですか。それは楽しみですな」
「うん。楽しみにしてて〜」
二人とも悪い笑みを浮かべている。
ママに一歩も引くこともなく口角を上げて相手をするとはドクトリウム辺境伯もかなりのやり手だ。
流石は歴戦の貴族だ。
「それよりも儂は、ユタカ殿に婚約者を作るべきだと思いますがルイはいかがですかな?」
ドクトリウム辺境伯が爆弾を投下する。
ルイ嬢も顔を赤らめ、目を僕からそらすのだが、絵梨花お姉ちゃんやシノさん、フォビアナちゃんにエルネシア殿下まで気迫が強まる。
「何を言ってるのかな〜豊は平民だよ〜貴族である君の孫娘なんて無理に決まっているじゃないか〜」
「何を申されますか。ユタカ殿は世界の英傑の一人である大賢者センダ・フウ様と伝説の剣聖であるカキョウイン・ジン・ミチチカ殿のご子息。ただの平民ではありません。このシュナイゼル王国内でも影響力は計り知れませんぞ。それはご自身でもご理解できてるでしょ?それにご子息の為に表舞台に出るおつもりなのでしょう?」
ドクトリウム辺境伯の言葉に顎に手を当て、思考するママ。
暫く思考した後、纏まったのか口を開き始める。
「そうだね~私の影響力を考えると豊に婚約者をと、考えた事はあるよ〜現に各国の王族はもう釣書を私の所に出してるしね〜無論エルネシアちゃんを婚約者にって話も出てる。でも…」
言葉を区切るママ。
エルネシア殿下は婚約の話が出ていることに嬉しいのかご機嫌になっている。
それに反して絵梨花お姉ちゃんやシノさん、フォビアナちゃんはご機嫌斜めだ。
「これは豊自身のことだから私がとやかく言うことじゃないよ〜。まぁ〜エルネシアちゃんやルイちゃん次第かな〜あっ!シノちゃんとフォビアナちゃんもね〜!頑張って豊かに振り向いて貰えるようになるんだね〜」
その言葉に絵梨花お姉ちゃん以外は、納得して俄然やる気を出しているのやけど、絵梨花お姉ちゃんだけは腑に落ちず、ママに抗議をする。
「納得いかないわ!何でこんな小娘達に私の可愛い豊をあげなきゃいけないのよ!私は認めないわ!」
「まぁまぁ〜落ち着いて〜長い目で見てあげてよ〜絵梨花ちゃんが納得できるまでさ〜」
「それだけではないですよ。霞さんが養子をとり、その娘を豊ちゃんの婚約者にしようと企んでいますからね」
「なっ!?」
それでも納得いかない絵梨花お姉ちゃんだが更に涼子様が爆弾を落とし、僕はこの先どうしたら良いのか分からなくなってきたばい。
ママはそれを知っていたのか満面の笑顔で聞いていた。
僕の知らない所で婚約者ができているような気がするばい。
でも僕が納得しなければいい話なんよね。
5歳で婚約者とか勘弁ばい。
「ボクも婚約者候補の一人だからよろしく」
「「「えっ!?」」」
悠木さんの爆弾発言にその場の皆が驚愕する。
これにはママも涼子様も知らなかったのか、皆と同じく驚愕していて、それを見た悠木さんがイタズラが成功したような笑顔になる。
「ちょっと待って聞いてないよ〜悠木?」
「言ってなかったからね。こんな可愛いモル…男の子を見逃すわけ無いじゃないか」
「今モルモットと言おうとしたよね〜いくら悠木でも可愛い豊を渡すわけには行かないよ〜何をされるか分かったもんじゃないよ〜!」
「そうです豊ちゃんを玩具にするおつもりですか?」
「許さないからモルモットだなんて!」
ママや涼子様、絵梨花お姉ちゃんが猛抗議をする中僕は、明後日の方向を見て途方に暮れため息を付く。
それを見た遥花お姉ちゃんと彩也姉がそばに寄り頭を撫でる。
「豊ちゃんも大変ね」
「モテモテだね〜まぁこれからもっと増えるかもしれないけどね!頑張れー」
「他人事やと思って!いやばい5歳で婚約者とか…」
「私達の世界でもこの世界でも幼い頃に婚約者が出来るのは当たり前よ。それに豊は父上の息子。霞様が婚約者を立てるくらい当たり前よ」
「そうそう。それくらい豊の事はかなり重要なのさ。諦めな!」
「はぁタバコ吸いたい」
本当にタバコが恋しいよ。
まだ言い争いをしていたママ達だがドクトリウム辺境伯やエルネシア殿下達がいたので話を切り上げ皆で魔獄に行くことに。
ジルさんは魔獄の家の空いてる部屋で休んでいる。
僕達は魔獄の森で実際に魔物を狩るため大人数でやって来た。
丁度ホーン・デビルラビットに出くわして、僕が相手をすることになる。
相手のホーン・デビルラビットはBランクでAランクの冒険者でも初見で心臓を角で殺されてしまうような油断できない相手だ。
僕は脇差の華月を召喚して、闘気を纏う。
いきなり鋭い角で僕を殺そうと突進してきたんやけどそれを避け抜刀して首をはねる。
初めて魔物を斃した。
ドクトリウム辺境伯は感心したようにしていたが、問題が出てくる。
それは斃したホーン・デビルラビットの魂が、魔獄の森のある場所に向かっていったからだ。
普通なら魂は天に向かうはずだ、それが違う方に向かって行った。
何かに吸い寄せられるかのように。
「ママおかしかばい、魂があっちにいっとうばい」
僕は魂が向かった方向に指をさす。
それに向かってママが視線を向け魔力感知をした所ママの眉間にシワが寄る。
これはただ事じゃない。
直ぐにママが指示を出す。
「かなりの魔力を持った魔物が居るから皆は戻ってて〜」
「ママ、僕も行くばい!」
「危険だよ〜?それでも行くの〜?」
「うん、何か知らんばってん僕が行かなイカン気がする」
「分かった。捕まって〜」
ママに捕まりその場所へと、向かおうとしていたら、真凛さんと総司さんが名乗りを上げついていくことになり、ママと真凛さんは飛行魔法で、総司さんは木々を飛び跳ねながら目的地に移動する。
目的地につくとかなりの怨念を振りまいていて、普通の人なら吐き気が来る瘴気だろうが、あいにく僕は慣れっこだ。
それらは骸骨だった。
3体いて剣を持った骸骨にローブを着た小柄の骸骨、中央にそれらの親玉らしき服を着た骸骨が立っていた。
「リッチだね〜」
「それもかなりの魔力を持っているわ」
「その他はスケルトンナイトとスケルトンウィッチだね」
三人は身構えるとスケルトンナイトやスケルトンウィッチは身構えていたがリッチは動こうとしない。
「ニクイ…ニクイ…」
その言葉は僕にとって悲しく聞こえるんよね。




